Ch4- Crowamy./クロウ×エイミー(3)
アップのコマで、クロウの目がエイミーの隣に浮かぶ本へ向けられていた。その表情は、何かを見極めようとしているようだった。
『あれはただのアーティファクトじゃない。ブラッドエッジに似た意識の気配を放っている……』
次のページでは、意思を持つ本についてエイミーを問いただすべきかどうか、クロウが内心で迷っていた。彼の思考は、頭の周りを渦巻く影として描かれている。影の中には、小さなイメージがいくつも散っていた。自分のしゃべる剣の記憶、エイミーへ向ける疑わしげな視線、そして得体の知れない敵の注意を引くことへの懸念。
結局、彼は考えるのが面倒になったらしい。相手も自分に近づこうとしていることをたいして隠していない。なら、単刀直入に聞くのが一番早いと判断したのだ。
本についての会話は、鋭く緊迫したコマ割りで描かれていた。目を細めるクロウ、驚きを隠しきれていないエイミー、その間で不穏に浮かぶ本。吹き出しには二人のやり取りが収められている。
『鋭いですね』
クロウの目つきが険しくなった。『なら、その本は話すのか?』
エイミーは一瞬ためらってから、慎重に頷いた。
『……はい。多少』
その下のコマには、クロウの反応が書かれていた。
『あっさり認めた。何らかの理由で俺を信用しているのか、それとも俺に知ってほしいのか。けれど、なぜ?』
「へえ、私が言ったこと全部、あんなに深読みしてたんだ」エイミーは感心した。「いや、逆に笑うんだけど」
運命をめぐる会話は、やけに意味深な演出になっていた。やり取りの重さを強調するように、コマの端が少しずつ暗くなっていく。自分が彼に近づいたのかと問われ、エイミーが『そうでしたか?』と返した場面では、クロウの一瞬の困惑が、目を見開くアップの連続で表現されていた。
『彼女は……運命の話をしているのか?』
「やば、めちゃくちゃそれっぽく決まってる」
エイミーは得意げに笑った。「見て。私の出まかせ、完全に信じてる」
[認めましょう。あの場面は見事でした]
「どうも」
ページをめくると、アカデミーが視界に入ってくる美麗な見開きが現れた。空を背にそびえ立つ塔は輝き、敷地の周囲には魔力が目に見えるほど弾けている。巨大な建築物と比べると、クロウとエイミーは小さく描かれ、その壮大さが際立っていた。
続くページでは、歩きながらクロウが時折エイミーを横目で窺っていた。彼の内心には、好奇心と警戒が入り混じっている。
『謎かけめいたことばかり口にする相手には気をつけろと、母さんはいつも言っていた。けれど、彼女には何か……大きな意味があるように思える。まだ全体が見えない盤面で、駒が一つ、あるべき場所へ動いたような――』
「実物よりだいぶ重要キャラっぽくされてる」
エイミーは笑いながら言った。
[それが狙いでしょう? 謎めいていて、底知れない力を秘めたキャラクターとして印象づけるには十分です]
「まあ、そうなんだけど。クロウ視点で見ると変な感じ」
アカデミーの門へ近づくと、コマの中でクロウは一つの判断を下していた。
『彼女のことをヴァンハイム教授に伝えるべきか? オニキスの星がこの世界に最も近づく日に、意思ある古代アーティファクトを持った新入生がどこからともなく現れた。偶然にしては重なりすぎている』
「うわ、もう先生に報告する気満々じゃん」
エイミーは肩を落とした。「後で対処が面倒になるやつだ、これ」
[先ほどは冗談のつもりでしたが、このままでは本当に悪役になるかもしれませんね]
「やば、あんたの言うとおりかも……」
次の場面には、クロウが部族について警告するくだりと、エイミーが鍵について最後に口にした言葉が描かれていた。
黄金の鍵について、エイミーが謎めいた言及をしたときのクロウの反応は、かなり強烈だった。顔には濃い影が落ち、目は衝撃で見開かれたあと、危険な鋭さで細められる。頭の横のモノローグにはこうある。
『なぜ……? あれを知っているのは、アッシュとライラとレイン以外にいないはずだ』
「これは普通に怖いって」エイミーはそのコマを見ながら呟いた。「ちびるかと思った」
[当然でしょう。彼にとっては、それが行方不明の父親につながる手がかりかもしれないのですから]
次のページでは、エイミーが歩き去り、クロウだけがその場に凍りついたように残されていた。表情には疑念と興味が入り混じっている。そこから場面は切り替わり、クロウの友人たち――レイン、ライラ、アッシュが近づいてくる様子が描かれた。どうやら彼らは最初から遠くで見ていたらしい。
彼らが来るのを見ると、クロウはとっさに肩の力を抜き、いつもの無表情を取り繕った。けれどそれは、どう見ても悪手だった。そのせいで、あっという間に誤解が生まれたからだ。
三人の表情は完璧に描かれていた。レインのほんの少し見開かれた目、ライラのわかりやすく拗ねた顔、そしてアッシュの面白がるような笑み。
ライラはすぐさまクロウの腕をつかみ、『今の誰!?』と問い詰めた。その吹き出しは大きく太字で、嫉妬がはっきり強調されている。その隣では、レインが少し離れて立っていた。表情の大部分は変わらないままだが、目元だけがごくわずかに強張っている。そして静かに、『新入生?』と尋ねた。
『金髪で、しかも美人ときたら……』
アッシュがにやにやと笑い、意味ありげに眉を上げた。
『完全にお前の好みじゃん!』
『好みなんてない』
クロウは呆れたように目を上へやり、眉を寄せた。
『ただ迷子になっていただけの子だ』
最後のコマでは、友人たちにしつこく絡まれながらも、クロウが一人先へ歩いていく。その表情には、苛立ちと諦めが見事に入り混じっていた。下には小さな文字でこう記されている。
『そうして、2年目が始まった』
エイミーは最後のページを見つめ、しばらく無言で受け止めた。
「私、ハーレム展開ほんと嫌い……」
ようやく出てきた感想はそれだった。




