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スキル『会話』で万物の声が聞けるようになったので、商人として成り上がります。 〜この鉄は剣にはなりたくないみたいです〜  作者: 赤金武蔵


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第11話 思い出は記憶の彼方

「はっはっは! 素直な奴は嫌いじゃねーぜ! んじゃ早速だが、ここに行ってほしいんだ」



 オッサンに渡されたのは、アナン(この)町の地図だ。


 ある箇所に、丸が付けられている。

 俺の住んでる住宅地とは、別区画の家だ。



「今は誰も住んでない古びた家なんだが、どうやらそこに、お宝級の何かがあるみたいなんだ」

「……何かって、なんすか?」

「知らん」



 えぇ~……。



「今までどんな目利きが行っても、誰も見つけられなかったらしい。そいつを見つけられたら、半額にしてやるよ」

「……まあ、行けるだけ行ってみるっす。けど、なんも見つからないかもしれないっすよ」

「そんときゃ、通常の額を払ってもらうだけだ。金貨16枚な」



 たっか……!? こりゃあ、死に物狂いで探すしかないな。



「う、うっす。行ってきます」

「おう! 頼んだぜ、坊主!」



 店を出て、地図を頼りに目的地まで向かう。


 賑わっている武具商環通りからいくつかの通りを抜ける。

 子供たちが走り回ったり、オバサンが井戸端会議をしているのを横目に、今まで来たことのなかった住宅地に着いた。


 俺の住んでいる区画より、豪邸が多く並んでる。

 通りを歩いてる奴らも、金持ちに見えた。



「えっと……こっちか?」



 ……暗い通りだな。なんか不気味だ。


 地図の指す家は、ここを抜けないといけないらしい。


 足が竦む。

 けど、この頼みを達成できれば、安く原材料を仕入れられるんだ。


 喉を鳴らし、試しに通りの壁に声を掛けてみた。



「な、なあ、この先って安全か? 誰かいたりする?」

『だ~れもいないきがするなぁ~』

『たぶん、おそらく、めいびー』

『いてもほしょーはできぬゆえ』



 どっちだよ。


 くっ……仕方ない。覚悟を決めるか。


 竦みそうになる脚に力を入れて、薄気味悪い通りを進む。


 若干カビ臭いな。でも、人の気配はなさそうだ。

 誰もいないなら、怖くない。……お願いだから、誰も出て来ませんように。


 地図と見比べながら、入り組んだ裏路地を進む。

 いくつかの角を曲がると、ようやく開けた場所が目に入った。


 あそこ……みたいだな。良かった、人に会わなくて。


 少し足早に裏路地を抜ける。

 あ……明るい。ここ、開けてるから日当たりが良いんだ。


 開けた土地の真ん中。そこに、地図に記された家があった。



「おぉ……? でっかいな」



 家というか、館みたいだ。

 外壁には蔦が這っていて、底の方は苔むしている。


 綺麗にすればまだ住めそうなのに、なんで誰も住んでないんだ……?


 何か無いか、家の周りをぐるりと歩く。

 ふむ……窓ガラスが割られていたり、正面の扉以外の出入口も無し、か。

 とりあえず、話してみよう。



「なあ、ちょっといいか?」

『――やぁ、おひさびさのおきゃくさま。いらっしゃいませます』



 おぉ。これだけデカくても、話してくれるもんだな。



「君が1人になってから、どれくらいになる?」

『あぁ~……? まんげつをたーーーーーーーくさんみたよーなぁ~……』



 てことは、少なくとも数年は経ってるってことか。

 いや、この古びた感じから、数十年は経ってるのかも。



「俺、中にあるお宝に用があるんだ。入っていいか?」

『やぬしおりませぬゆえ、おすきにどーぞです』

「ありがとう。お邪魔する」

『くさくともすみごこちのいいわがやですので、ごゆるりと~』



 臭いのはご勘弁。


 家の許可も下りたから、早速正面の扉を開ける。

 軋むような音が館中に響いた。不気味な叫び声みたいだ。


 うっ、埃臭い……それに、木が腐ってる臭いもする。



「お、お邪魔します……」



 まずは顔だけで覗き込む。


 広い玄関ホールの正面には、2階へ続く階段がある。

 1階には左右に続く廊下があり、扉もいくつかあった。


 きっと廊下の先にも、部屋があるんだろう。

 余りにも広すぎる。ここから、得体の知れないお宝を見つけ出すなんてできるのか?


 一先ず、聞くしかないか。何かヒントがあるかもしれないし。


 床に落ちている割れた壷の前にしゃがみ込んだ。



「ちょっといいか? 俺、ここにお宝を探しに来たんだけど、何か知ってるか?」

『おたからって、なんです?』

「わからないんだ。ここに、お宝級の何かがあるってことだけ聞いて来た」



 って、自分で聞いてて訳わからなくなってきた。

 余りにも情報が無さすぎるだろう。


 けど壷は、何かを思い出したみたいに一瞬無言になった。



『あぁ~……あったよーな、なかったよーな』

「え、本当か!?」

『なかったよーな、あったよーな』

「ほ、ほんの少しでいい。何かヒントを……!」

『ぼーきゃくきょくせん~』



 なんだそれ。


 はぁ……駄目っぽいな。

 けど、まだこれだけ残された物があるんだ。

 片っ端から聞いていけば、誰か何かしら覚えてるだろう。


 よっし……根気よく行くぞっ。

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