第10話 次の段階
ルーフェンの手腕は、想像を超えていた。
なんと数週間かけて、家にある在庫はほとんど売れてしまった。
合計額は金貨25枚、銀貨506枚、銅貨1257枚。
俺の人生で見たことがない程の大金になった。
「これ、もう一生遊んでられるんじゃ……」
「何馬鹿なこと言ってんのよ。金貨1枚で、一般人の給料の半年分って言ったでしょ」
あ、そうか。これじゃあ遊ばなくても、15年しか無理か。
俺からしたら十分だけどなぁ。
帳簿を付けていたルーフェンが立ち上がり、金をそれぞれの袋に纏めた。
「さて、元手は十分ね。次の段階に進むわ」
「また安くていい商品を買うのか?」
「それじゃあ、古道具屋の商品も減って、いつか頭打ちになっちゃうでしょ?」
その通り過ぎた。
もうこの町の古道具屋は行き尽くした。
ぶっちゃけ、もう目ぼしい物がない。
「次って、どうするんだよ。少し高いものを、更に高額で売るとか?」
「それじゃあ、また頭打ちになるじゃない」
ルーフェンは帳簿とは別の、もう1冊の本を机に置いた。
文字は読めない。なんて書いてあるんだ?
「これはね、この町の職人の名前と、得意なことを纏めたリスト表よ。酒場のお客さんから聞いた情報から作ったの」
「そ、そんな事までしてくれたのか……!?」
「当然。金貨1枚分の働きはするわ♪」
俺が渡した金貨を大切に取っているのか、取り出してチュッと口付けした。
は、恥ずい。どういう反応すればいいの。
ルーフェンから顔を背けて、続きを話す。
「しょ、職人をリスト化したってことは、それが重要になる……って事だよな?」
「その通り! いい子ね、ディーレル!」
やめろ、撫でるな。
ルーフェンの手を払い、1歩離れる。
「じゃあ次の段階ってのは……」
「ええ、その通り」
「「物作り」」
◆◆◆
『その前に、まずは店舗の準備ね。そっちは私に任せて、アンタはいい素材を見繕ってきなさい』
と言われて、武具商環通りにやって来た。
俺、1人で交渉とか出来るかな……? めちゃめちゃ不安だけど。
取り敢えず、鉱石店にやって来た。
巨石をくり抜いて作られたような建物だ。
出入りする人も、職人っぽい人ばかり。
俺、圧倒的場違い。
引き返したい。今すぐ帰りたい。
けど……ここで引き返したら、またルーフェンに馬鹿にされる。
それだけは嫌だ。
俺だって、1人でやれるって所を見せてやる。
呼吸を整え、木の扉を開ける。
鉄臭さと土埃みたいな臭いが、鼻を掠める。
木箱には鉄鉱石、魔鉱石、魔石等々、ずらりと並んでいた。
買いに来た客が、店のスタッフと交渉している。
なるほど。ここは交渉して買う場所なのか。
さて。ルーフェンから指定されたのは、剣やナイフ用の鉄鉱石を大量に、だ。
どれどれ?
「なあ、君たち。作られるとしたら、どんな物になりたい?」
『あ〜……?』
『ぼくたち、つくられるです?』
『そーかもです?』
『そこはかとなく、まもりたいしょぞん』
『まもるの、しょーにあってますゆえ』
『ぼくはたべられたいかも?』
『おくちにいれられたら、しあわせなきもち』
この子たちは、鎧とかスプーンになりたいのか。
意外と、剣に向いた鉄って無いもんだな。
「この子も……駄目。こっちの子も……違う」
『そんな〜』
『あ〜れ〜』
『ごむたいな〜』
ぐっ、良心が抉られる……。
でもごめんよ。今必要なのは、刃物に最適な鉄なんだ。
木箱の中の鉄を選んでいると、急に周りが陰った。なんだ?
顔を上げると、強面のオッサンが腕を組んで立っていた。ヒェッ。
「な、なん、でしょう……?」
「……坊主、客か?」
よく見るとボロボロに汚れたエプロンを着け、頭にバンダナを巻いている。
この店の人……だろうな、多分。
「う、うす。刃物用の鉄を買おうかと思って」
俺の言葉に、オッサンはピクっと眉を動かした。
「刃物用……って言ったか? 鉄は全部一緒だろう。何を言ってやがる」
「ち、違うっすよ。こっちは鎧に適してて、こっちはスプーン、こっちは鉄骨、こっちは釘……全然違うっす」
けど……これだけあって剣に適したものが無いのも、おかしいな。
内心疑問に思っていると、黙っていたオッサンが急に鼻を鳴らし、隣のラインにあった鉄を投げ渡してきた。
「どーやら、見る目はあるらしい。これが剣に向いた鉄だ」
……本当に?
『うそぴょん。ぼく、おにくやきたいよっきゅー』
「鉄鍋用じゃねーか」
ぼそりと呟く。
それを聞いていたのか、オッサンが鋭い眼光で睨みつけてきた。
「あ、いやっ、その……」
「……ふっ、ふはははは! 悪い悪い! ちょっと試してみたくてな! こりゃーホンモンだ!」
……へ? な、何……?
豪快に笑ったオッサンが、「ついて来い」と店の奥に向かう。
言われたからには……ついて行くしか、ないよな。
内心ビクビクしながら、後に続いて奥へ進む。
扉を1つ隔てた先にも、ずらりと木箱が並んでいた。
こっちは関係者以外の立ち入りを禁止してるのか、人がほとんどいなかった。
「こっちが、刃物用の鉄だ。相当な目利き以外には売らねーようにしてんだよ。こいつで作られた刃物は、危ねーからな」
「なるほど……」
箱に近付き、鉄を1つ持つ。
明らかに触感が違う。それに、重さと密度も……。
『じぶん、きれますので〜』
『きりきざみたいおもいです』
『きもちてきには、きりたいですな』
おぉ……本当だ。全部刃物に適してる。
「あ、ありがとうございます。これ、一箱下さい」
「あいよ。……って言いたいところだが、その目利きを見込んで、ちょいと頼みたいことがあるんだが……いいか?」
げっ。うわぁ、やだなぁ……めんどくせぇなぁ……。
「受けてくれたら、半額にしてやる」
「やるっす!」
え? がめつい? 失礼な。
続きが気になる方、【評価】と【ブクマ】と【いいね】をどうかお願いします!
下部の星マークで評価出来ますので!
☆☆☆☆☆→★★★★★
こうして頂くと泣いて喜びます!




