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最強付与士の無自覚ハーレム冒険譚 ~仲間の顔も素性も知らないけどたぶん全員男だと思う~  作者: 徳川レモン
第二章

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78話 付与士は命がけで支援する

 

 グランノーツの一振りにより、炎が吹き飛ばされる。

 鎧の穴から蒸気が噴出し、熱せられた装甲からは白い煙が漂っていた。


「バフを貰って鬼パワーアップ!!」

「超位付与術の効果時間は刻印付与よりちょい長いくらいだ。短期決戦でいくぞ」

「おけおけ。行くよグラちゃん。あーしらのパワー見せてやろう」


 グランノーツが前に飛び出し斬りつける。

 ヘカトケイルは腕を交差させ防御姿勢を取った。打ち込みによって轟音が鳴り響き、斧刃はこれまでで最も深く肉を切っていた。守りを固めた状態で攻撃が通っている、逆に言えば、守りでなければより大きなダメージを与えられる可能性が高い。あるいは上回る攻撃をぶつけ続けられれば、勝てる。


「グォオオオオオオオオオオオッ!」

「あっつ! なんて熱量、このままだとグラちゃんが溶けちゃう!」


 全身から高温を放ち始めたヘカトケイルに、グランノーツは慌てて飛び下がる。

 だが、時間を作ってくれたおかげで、全員に攻撃と防御のバフを施すことができた。最後にフェリスに直書きを書き終えると、彼女は「ありがとうございます」と微笑み、敵に向かって飛び出した。


「あの方がたった一人で倒した相手。まだ私には届いていないと言うことでしょうか――火炎一閃!!」


 フェリスが横薙ぎに一閃する。

 刃が脇腹を斬り、血が飛び散る。だが浅い。


「が、ががが、合体、技ぁあああああ!!」

「あーしとザインっちのコンビネーションアタックを受けてみろ!」


 グランノーツが、腕の伸びたザインをぶんぶん振り回す。まるでスリングを撃つかのようにザインは投げられ、ヘカトケイルの腹部へと強烈な蹴りをめり込ませる。身体をくの字に曲げたヘカトケイルは壁面へ叩きつけられた。


 衝撃が洞窟内を激しく揺らす。


 くるんと宙で回転しながら、こちらへ戻ってきたザインは地面に着地した。

 起き上がったヘカトケイルの口の端からは血が滴っていた。さすがにダメージを殺せなかったとみる。


「い、以外とやるではないか。しかし、調子に乗るなよ。私のヘカトケイルはまだ本気ではないのだ。さぁ、お前の力を見せてやれ」


 大神官の命令により、奴は再び咆哮する。

 洞窟内の気温は急上昇し、俺達の滴り落ちる汗が床で蒸発する。さらに足下が揺れ始めた。揺れは次第に大きくなり山全体を激しく揺らしているようであった。

 俺は大神官をにらみつけた。


「この揺れは……? 魔王に何をさせた」

「無尽蔵とも言える魔力で地下深くにあるマグマを引き寄せさせたのだ。間もなくこの山は噴火する。そうなれば軍も貴様らも一網打尽だ。その前にこの揺れで崩落するかもしれんがな」


 な、んだと。噴火だって?

 揺れはますます大きくなり天井から石が落ち始めていた。


「もちろん巻き添えはごめんだ。こんなこともあろうかと逃げ道は用意してある。魔王とてこの程度で死ぬなどありえん。死ぬのはお前達だけだ。追い詰めたつもりだったのだろうが、逆だ。貴様達は罠にはまったのだ。その命を持って我が神の贄となるがよい」


 大神官は壁際をまさぐり抜け道を開いた。

 奴は「そいつらを足止めするだけでいい」などと命令を下し扉を閉めてしまった。


「噴火したらこの山はマグマに飲み込まれるぞ。その前に崩落に巻き込まれて死ぬかもな」

「非常に不味いですね。のんびり戦っていられなくなりましたよ」


 フェリスも焦りを抱いたようだ。


 恐るべきは魔王の魔力というべきか。地下奥深くにあるマグマに直接干渉するなんて距離的にもサイズ的に考えてもほぼ不可能だ。すでにある『ロウソクの火』や『瓶の水』に干渉するのとは訳が違う。無尽蔵とも言える魔力を保有する魔王だからこそできる荒技だ。


「ならば崩れる前に倒すまで――」


 俺の横を一つの影が駆け抜ける。将軍だ。彼は刹那に距離を詰め、ヘカトケイルの首めがけて一閃する。奴の取った行動は、防御でもなく回避でもなく、真下に拳を打ち込むことだった。生じた衝撃波は地面をえぐり将軍を吹き飛ばした。


「くっ、なんて馬鹿げた攻撃を。まともに受けるべきではないな」


 獣のように四つん這いとなったヘカトケイルは、宙を舞う将軍に向かって砲弾のごとく跳躍する。


 将軍は空中を舞う”小石”を蹴りつけ回避。

 ()()()()したヘカトケイルは、身体をくの字に折り曲げ、下にいる俺めがけて再び砲弾のごとく飛び出す。


「こっちに来るなって、どわっ!?」


 躱したところに拳が打ち込まれ衝撃が床をめくる。

 俺を含めた全員が、岩と共に空中に舞い上げられた。


 めまぐるしく回転する光景の中で、足場になりそうな場所と、敵の位置を瞬時に把握。


 高い集中力は思考を加速させる。

 周囲の景色はゆっくりとなり、俺は舞い上がる岩に着地した。


「これならどうだ――停止」


 魔術文字を描く。超位状態のおかげもあって奴の肉体が静止した。

 最大の好機を逃さずフェリスとグランノーツが動く。

 グランノーツの胸部の装甲から飛び出したノノンは、斧を片手に、フェリスと共に刃を打ち込む。


「火炎一閃!」

「ストロングアックスっ!」


 十字を描く剣と斧の軌跡が、ヘカトケイルに直撃する。


 そのまま二人と一匹は高速落下、土煙が舞い上がり衝撃が駆け抜けた。

 舞い上げられていた岩も一斉に下へと落下。俺も着地した。

 

 漂う土煙よりフェリスが飛び出し壁へ叩きつけられる。遅れてノノンもはじき出され天井にぶつかって落下した。


「フェリス、ノノン!?」

「大丈夫です。ですが今のはかなり効きました」

「あーしも平気。あーあー、お気に入りの服なのにぼろぼろじゃん」


 ふらつく足で立ち上がったフェリスと違い、ノノンは生身で受けたにもかかわらずピンピンしていた。ザインはフェリスを優先して回復を施していた。


 砂煙を吹き飛ばしたヘカトケイルは吠える。

 その胸には十字の傷ができていた。


 やはり超位状態といえど魔王相手に通常のやり方は効果が薄いか。やるなら直書き。しかし、簡単には近づけさせてくれない。もう一度『停止』を付与して、その隙にデバフを。


 ――いや、それは難しそうだ。


 先ほどのデバフが警戒心を煽ってしまったのか、ヘカトケイルは真っ直ぐ俺を捉えていた。


「ガァアアアアアアアアッ!!」

「嘘だろ」


 真っ赤な熱線が吐かれる。これまでとは熱量が違う。

 俺は焼かれないよう真横に駆ける。上体を反らすことでなんとか当たる寸前で熱線を避けたものの、再び俺を狙って戻ってくるではないか。くそっ、軽く擦ったせいか、()()()が首の辺りから剥がれ始めている。


「そ、そそ、それ、やめろぉおおおお!」


 ザインが真下から顔を蹴り上げた。熱線が途切れる。

 だが、上げられた頭はすぐさま振り子のように戻され、ザインの頭に落とされた。正面から頭突きを受け止めたザインの足は、床を砕き亀裂を広げる。


 ザインとヘカトケイルは、至近距離で殴り合いを始めた。


 この状況を有利にできるのはバッファーである俺しかいない。

 最大の手持ちは超位状態における直書きだ。だが、その超位状態も間もなく終わろうとしている。仲間の体力だって限界は近い。危険を承知で賭けに出るときがきたのかもしれない。


 将軍が俺の隣にやってくる。


「その顔、何か手を思いついたようだな」

「苦肉の策だけどな。協力してくれるとありがたい」

「なにをすればいい。アレを倒せるならなんだってしよう」

「奴の注意を引きつけてもらいたい。俺は――」

「……分かった。引き受けよう」


 ザインが殴り飛ばされ壁へ激突する。ヘカトケイルが俺に眼を向ける前に、将軍が引きつけ役として再び前に出た。ヘカトケイルと将軍は激しく攻防を繰り返す。将軍がやや不利か。呼吸が荒くなる彼の身体には徐々にだが傷が増えていた。


「銀光剣!」


 将軍の渾身の一撃を前に、ヘカトケイルは両腕で防御を余儀なくされる。

 だが、ここまでは計算通りだ。


「助かったよ将軍様」


 将軍の背後から俺は現れる。将軍を壁にしつつ距離を詰めていたのである。

 すれ違いざまに防御で身体を固め動けなくなった奴の身体に『混乱』と『物理防御低下』の魔術文字を書き込む。直書きによる耐性の貫通だ。


「!?」


 ようやくこちらに警戒が向いたところでもう遅い。

 そこで超位状態は終了。だがしかし、すでに付与は完了している。


「グォオオオオオオオオオオオッ!?」


 頭を抱えたヘカトケイルが、悲鳴に似た鳴き声をあげた。

 距離を取るべく後方へと飛び退く。

 が、ヘカトケイルは真っ直ぐ俺へと飛んできていた。


 分厚く重い拳が、俺の顔面に衝突した。



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