106話 シスターの出張懺悔室・王都編Ⅲ
大地の女神の像へと、祈りを捧げるクラリッサ。眺める王都のシスター達は感嘆の声を漏らしていた。
一切の邪念なく清らかなその姿は、まさしく女神の信徒の鏡。今にも女神が舞い降りてきそうな雰囲気すらあった。
そんな中で、唯一本性を知る後輩シスターは、王都のシスター達を鼻で笑っていた。
クラリッサ先輩が清廉なシスター? 王都の皆は全く分かってないわ。
先輩は美少年の裸体でもイケオジの裸体でも、それどころか美少女の絡みですら、パンなら軽く三本イケる猛者よ。お花を愛でてるお綺麗なあんた達とは違うの。モノが違うのよ。などと後輩シスターは口角を鋭利に上げた。
きっとクラリッサ先輩は、祈りながらパドリックさんのことを考えているわ。だって私、知っているもの。先輩が夜な夜な自室でごそごそしているの。よく寝言で「いけませんパドリックさん」とか涎を垂らしながら寝息を荒くしているのを。
行き場のない熟れに熟れた身体を持て余しているのね。だからこそ私も興奮する。パドリックさんを想いながらドスケベなフェロモンを放つ先輩を観察するのが、私の最高の喜び。今日も素敵ですよクラリッサ先輩。と、後輩シスターはその目を情欲に歪ませながら礼拝堂のベンチを拭いていた。
「大司教様。遂にアレが届きました」
「しっ、誰が聞いているかわからん。ここでは内密に」
僅かに開いた教会出入り口のドア。
隙間から覗く外では、大司教とはげ上がった中年の商人がにやついていた。
ただならぬ空気を感じ取った後輩シスターは、足音を殺しドアの隙間に忍び寄る。
「早く嗅がせてください。手に入れるのに苦労したんですよ」
「承知している。おお、これが」
大司教は紙の包みからあるものを取り出した。
ふわふわの綿毛のような何か。それを大司教はくんかくんかと嗅ぐ。
「くはっぁあああああ! さすがメスのケットシーのケツ毛、股間に来る!」
「濃厚なメスの香り、たまりませんね! わざわざケットシーを飼育している人を探して交渉した甲斐がありましたよ!」
「大地の賜物だ! 女神に感謝を」
二人揃って天に向かって祈りを捧げる。
後輩シスターは絶句していた。世の中にはケモナーなる人種が存在すると聞くが、まさか信徒を導くべき大司教がその一人だったなんて。ただ、同時に彼女はこうも思う。ケットシーのケツ毛は大地とは関係はないのでは?、と。
後輩シスターは見なかったことにした。
誰かに言ったところで信じてもらえるとも思えなかったのだ。
「ケットシーの毛ですか」
「せ、先輩」
いつの間にか彼女の傍に、クラリッサがやってきていた。クラリッサはくすりと笑い、大司教のはしゃぎっぷりを眺めていた。
「大司教もお可愛いわね。私ならケットシーのお尻に直接イケますよ。さらにパンをバターなしで五本」
後輩シスターはぞっとした。底知れぬクラリッサの欲望に僅かばかり恐怖したのだ。
精神洗浄を受けるべきは神父ではなく先輩なのではなどと考えもよぎった。
「豊穣祭は終わったわ。貴女も戻る準備をしておきなさい」
「はい!」
後輩シスターは尊敬する先輩の背中を追った。
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