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汝ウサギなれど鷹が如く  作者: ふーろう/風楼


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82/123

新聞


 遺跡から屋敷へと帰り、それから数日間はどうにかあの文字を解読してやろうとした俺だったが、何の手がかりもなく、進展もなく……暗号解読の本を読んでもどうにも出来なかった為、いつしかあの文字への興味を失い……机の中に押し込んだまま、外に出すことも無くなっていた。


 いずれ何か進展に役立ちそうな本を見つけた時は、引っ張り出すこともあるだろうが、その時まではしまっておこうと決めて……それから更に数日が経った。


 新しい屋敷での生活にもすっかりと慣れて、アリスとクレオとルチアと顔を会わせる生活が当たり前になったある日の朝のこと。


 屋敷で暮らすようになってから取り始めた新聞を、門の側まで行って拾い上げると、その一面にとんでもない……我が目を疑う一文が書かれている。


『国内随一の軍事企業が空中軍艦を建造へ』


 ……空中軍艦?


 それは一体全体どんなものなんだと新聞を広げてみるとそこには……最近になって開発されたあるエンジン技術の影響を受けて、企業間の飛行艇開発競争が激化する中……ある企業が飛行艇ではなく、複数のエンジンを搭載し、何門もの主砲を搭載した空飛ぶ軍艦と呼ぶに相応しい代物を作っている……と、そんなことが書かれている。


 更にはその空中軍艦とやらの想像図までが掲載されていて……エンジンは全部で18基、軍艦というか要塞に置くような巨大砲が2門、小型砲が4門、機関銃座が8門というとんでもない絵図になっている。


「……いや、エンジンが18基だろうが100基だろうが、飛ばないだろ、こんなもん……」


 その絵図を見た俺は思わずそんな独り言を呟く。


 軍艦の絵は、そこらで見かけるような船らしい姿となっていて、空を飛ぶ為に必要な揚力を受ける為の翼の姿は無く……揚力無しで一体全体どうやって空を飛ぶつもりなのか。

 

 仮に揚力を受ける翼があったとして、どう見ても大きすぎるし、重すぎるし、この形で空を飛べるとはとても思えなかった。


 仮にこれが本当に作られてしまったとしても、水上をエンジンの力によって無理矢理に走り進む鉄の塊が出来上がるだけに違いない。


「いやー、無理だろこれ、絶対に無理だろこれ……」


 そんなことを言いながら俺は新聞を読みふけり……読みふけったまま食堂へと向かう。


 そうしてだだっ広い食堂に置かれた、小さな丸テーブルの方へと足を進めて……自分の椅子へと腰掛けた俺は、読み終えた新聞をテーブルの上に投げ出し……、


「バカバカしい」


 と、そんな一言を呟く。


 するとキッチンで朝食の準備をしていたルチアが、淹れたての紅茶を持ってきてくれて、それを俺の前にそっと置きながら声をかけてくる。


「おはようございます。

 ……一体何がそんなに馬鹿馬鹿しいんですか?」


 その声に対して俺は……簡単に新聞に書かれていたことを説明し、空中軍艦が絶対に開発できないものであることを出来るだけ分かりやすく説明する。


「……本土の方で飛行船を見たことがありますけど、あれとはまた違うものなんですか?」


 とのルチアの問いかけに俺はこくりと頷いて、言葉を返す。


「飛行船は飛んでいるというよりも、ガスの力で浮いているだけだからなぁ。

 仮に飛行船に大砲なんて積もうもんなら、重さで飛べなくなるか、ガスに引火して大爆発するかのどちらかだろうな」


「……え。

 ひ、飛行船って爆発しちゃうんですか?」


「そりゃぁガスの塊みたいなもんだからな。火元があればあっさりとドカンさ」


「……じ、自分一度飛行船に乗ったことがありまして……そ、そこでタバコを吸っている方がいらっしゃったのですが……」


「あー……まぁ、客席……ゴンドラで吸う分には問題ない……はずだ。

 流石に対策くらいはしているだろうし……ただ、ガスが漏れてきたり、ゴンドラに燃え移って火事になったりしたら、やばかっただろうが……」


「なる……ほど。

 ……飛行船でそんなに危険なら、空中軍艦なんてもっと危険なことになりそうですね」


「まず飛べないだろうし、飛んだとしても軽快な動きなんてのは無理だろうし、とんでもない燃料がかかるだろうし、いざ着水したらとんでもない波が起きちまうだろうし……まぁ、ありえない話だろうな。

 ……空のことをよく知らない記者が、適当な記事を書いちまったんだろうさ」


 しかしそうだとしても、そんな内容の記事が載っている新聞がこっちにまで届くとは珍しいこともあるもんだ。


 今読んでいる新聞は全国新聞……この島の小さな新聞社が発行しているものではなく、本土の大きな新聞社が国中に向けて発行しているものだ。


 そうした新聞に何らかのミスがあったり、問題のある記事が掲載されたりした場合は、すぐに記事が差し替えられることになり……こっちの印刷所に記事の原盤が届く頃には既に修正が終わっているはず……なんだがなぁ。


 修正が間に合わなかったのか、そもそも修正する気がなかったのか……。


 こんなとんでもない記事を国中にばらまいてしまったら、かなりの信用問題になると思うんだがなぁ……。


 と、そんなことを考えていると、アリスとクレオや食堂にやってきて……会話を打ち切ったルチアが朝食の準備をし始めてくれる。


 そうして朝食の準備が整ったなら、ルチアも一緒に席についての朝食だ。


 今日はふかふかのパンとスクランブルエッグ、トマトと豆とキノコのスープに、どかんと大きなソーセージが一本。


「今日も美味そうだ」


 と、朝食を見るなり俺がそう言うと、アリスとクレオがそれに続いて……そうして朝食が開始となる。


 そうして俺達は朝食を楽しみながら、この馬鹿げた記事を話題の中心にしての雑談に興じるのだった。


お読み頂きありがとうございました。

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