表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/10

ただしいこたえ

 

 

 

 おうじひさまのまえに、ようせいルンペルシュツルツキンがあらわれていいます。


 ねがいをかなえたければ、ぜったいにティツィアーナに、わたしのなまえを、しられてはいけない。さもなければ、おまえのねがいは、なかったことになってしまう。


 ねがいをかなえてくれるんじゃないの。


 おうじひさまはようせいをせめますが、ようせいはどこふくかぜです。


 かなえるさ。あなたがティツィアーナに、わたしのなまえをしられなければ。


 いうだけいって、ようせいはきえます。


 おうじひさまは、あわてておうじさまにそうだんしました。


 おうじょうぎわのわるいおんなだ。


 おうじさまは、はきすてたあとで、おうじひさまにようせいのなまえを、といました。


 なまえ?なまえね。ええと……ながくて、わけがわからないなまえで、おぼえていないわ。


 おうじひさまは、こまったかおで、こたえます。


 そんなわけのわからないなまえなら、わかるはずがないな。


 おうじさまは、そういって、わらいとばしました。




 ティアは、まよったあと、だいじんにそうだんすることにしました。


 ルーンが、てきであるいじょう、ティアがそうだんできるあいては、かれしかいなかったのです。


 ルーンのこと、くすりのこと、おうじひのねがいと、つれさられないための、じょうけんのこと。


 すべてせつめいして、なまえをさがす、てだすけをたのんだティアを、むつかしいかおでみたあと、だいじんはうなずきます。


 わたしもさがしておくから、あなたはあなたでさがしなさい。


 いわれてたちさったティアをみおくり、だいじんはつぶやきます。


「わたしは、まちがったのか」

「なにをかな」


 とつぜんあらわれた、うつくしいせいねんに、しかし、だいじんはおどろきませんでした。


 ただ、しせんをおとし、くいを、くちにします。


「ティツィアーナは、うつくしく、かしこく、やさしいむすめです。あのこはあまりに、やさしすぎる。おうひになんて、してはいけなかった」


 ちいさなころからみていたティアはもう、だいじんにとっても、むすめのようなそんざいでした。


「わたしがおうひになんて、したせいで、ティツィアーナはあんなにも、くるしんでいる。だが、わたしはこのくにのだいじんとして、ティツィアーナをうしなうことは、できません」


 やまいでやつれたてで、じぶんのかおをおおうすがたは、いっこくのだいじんとはおもえないほど、ちいさくみえました。


「けれどわたし、こじんとしては、もしだれか、ティツィアーナを、しあわせにしてくれるひとがいるのなら」


 いっそつれさってほしいと、おもうんです。


 ほとんどきこえないこえでおとされた、ことば。

 それはまちがいなく、だいじんの、ティツィアーナにたいする、あいでした。


 うつむかれたあたまをみつめ、せいねんはだいじんにいいます。


「わたしはルンペルシュツルツキン」

「それは、」

「わたしもまた、あのこが、いちばんしあわせになれるかたちを、さがしている」


 あたえた、なを、どうするかは、あなたにまかせよう。


 いいのこして、せいねんはきえました。




 なまえをさがしながら、ティアはかんがえます。


 そくひとしてかんがえるならば、ルーンのてをとるわけにはいかない。

 けれどそれは、ほんとうにただしいこたえなのだろうか。


 ティアがいないと、ほんとうに、くにはたちゆかないのか。

 たちゆかないとして、それでいいのか。


「いい、わけが、ないわ」


 はやりやまいがおきた、あのとき。

 おとうさまとおかあさまは、しごくあっさりと、しんでしまった。


 じぶんもおなじようにしなないと、どうしていえる?


 ひとひとりをたよりにたっているくには、あやうい。


 ならばじぶんなど、きえてしまうべきなのではないか。


「いいえ。でも」


 それこそが、にげたいじぶんのつくりあげた、いいわけかもしれない。


 にげたい。そうだ。わたくしは。


 にげだしたい。


 ほんとうは、もう、ずっと。


 にげだしたかった。ルーンのてを、とりたかった。


 なにもかもなげだして、ただのティツィとして、ルーンのとなりに。

 それができたなら、どんなにしあわせだったろう。


 ああ。


 じぶんのこころを、むししてうごくこと、それは、ただしいことなのだろうか。


 うつむいたティアの、ふくのすそを、ちいさなてが、つかみました。


 そくひさま。


 どこからはいってきたのでしょう。おしろにはにつかわしくない、すりきれ、うすよごれたふくをきた、ちいさなこどもが、ティアにすがりつきます。


 おかあさんが、しんでしまう。

 くすりをください。


 こどもはこんがんしますが、ティアはおいしゃさまでも、くすしでも、かみでもけんじゃでもありません。みてもいないびょうにんのくすりなど、よういできはしないのです。


 おいしゃさまを、てはいしましょう。

 いますぐたすけて。いますぐくすりを。

 いますぐは、できません。


 こたえたティアをみかえすひとみには、しつぼうがありありとうかんでいました。


 これが、ひとだ。


 ティアのなかでなにかが、ぷつりときれました。


 ひとはたにんに、さいげんなくもとめつづけ、かってにきたいし、かってにしつぼうする。

 かってなきたいにこたえつづけても、そこにおわりはない。


 ならば。


 ティアがひとつ、じぶんのわがままをとおすことの、なにがただしくないというのだろう。


 ティアは、ルーンは、もうじゅうぶん、このくにに、りえきをあたえた。ならば、もう、このくにに、せをむけても、いいのではないだろうか。


 だいしょうだ。


 ティアは、こどものまえに、ひざをつきました。


 くすりは、ばんのうではありません。まちがったくすりをあたえれば、しんでしまうことだって、ありえるのです。あなたはおかあさまを、ころしてしまいたいの?


 こどもは、ぶんぶんと、よこにくびをふりました。


 まちがったくすりを、あたえないためには、おいしゃさまにおかあさまを、みてもらはなくては、なりません。あなたはおかあさまのところまで、おいしゃさまを、あんないできますか?


 こくりとうなずいたこどもの、あたまをなで、ティアはたちあがります。


 おいしゃさまをよんできますから、ここですこし、まっていてください。


 ティアはいいおいて、そのばをたちさりました。


 ひとをよび、おいしゃさまをむかわせます。ひようは、じぶんがだすといって。


 まだ、ふつかある。


 ティアはなまえさがしのてをとめ、べつのことをしはじめました。

 

 

 

拙いお話をお読み頂きありがとうございます


続きも読んで頂けると嬉しいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ