ルーンのねがい
やまいからくにをすくったことで、ティアによせられるきたいは、ますますおもく、くるしいものになっていました。
ましてきたいをふやしたこうせきは、ティアじしんのちからではなく、ルーンのちからをかりたもの。
ほんらいえられるはずのなかった、こうせきをほめそやされて、ずるをしたようなこころぐるしさに、いきをすることすらおもくかんじます。
ルーンにたのんだことの、おおきさをかんがえれば、もりへいくこともはばかられます。
だんだんえがおをなくしながらも、ティアはきたいにこたえつづけました。
ひとりぼっち。だれにもたすけてもらえないまま。
そんなティアのまえに、かれはすがたをみせました。
「ティツィ」
「ルーン」
ティアのへやにとつぜんあらわれたルーンに、ティアはおどろきます。
「どうしてここに」
「むかえにきたんだ」
ルーンはにこりと、ほほえみました。
「むかえに?」
「あなたをだいしょうに、ねがいをかなえてほしいと、たのまれた」
「だれに、どんなねがいを?」
じぶんひとりをだいしょうに、かなえられるていどのねがいとは、なんだろうか。
ルーンはほほえんだまま、こたえました。
「このくにのおうじひに、そくひティツィアーナを、けしてほしいと、たのまれた」
「おうじひさまに」
かのじょにとって、それほどじぶんは、じゃまだったのか。
おうじひさまのじゃまなんて、これっぽっちも、したおぼえはないのに。
「そくひティツィアーナのにんきが、うらやましいようだね。そんなにうらやましいというなら、ティツィアーナのこうせきをすべて、おうじひにすりかえてあげようとおもう」
「わたくしのこうせきを、おうじひさまに」
「そう。このくにのおうじのきさきは、ずっとひとりで、ぜんぶおうじひがやったことにするんだ」
めをほそめたルーンが、うつくしいてでティツィのかおをつつみます。
「そうすれば、あなたはじゆうだ」
ああ。
ルーンはティツィがそくひティツィアーナだなんて、とっくにしっていたのです。
「でも、わたくしがきえれば、このくには」
「それを、かれらは望んだんだよ」
あなたをころそうとさえ、かんがえていた。
ルーンのことばに、こんどはおどろきませんでした。
じぶんのしをのぞむものがいることは、おそわるまでもなく、しっていたからです。
「でも、かれらがこくみんのすべてではないわ」
ふいに、ルーンがいったことをりかいして、ティアはルーンをみかえします。
「ルーン、あのひとたちに、くにをまかせることは、わたくしにとって、ただしくないの」
きょをつかれたようにめをまるくしたあと、ルーンはかなしげにめをほそめました。
「わたしとともにいくのはいやかい、ティツィ」
「いやじゃないわ。でも、わたしはそくひだから」
「もうごりょうしんはいないのに?」
「りょうしんは、かんけいないわ。わたくしがなげだせないの」
「こくみんすべてに、わすれられても?」
「かんけいないわ」
ティアはむねにてをあて、くびをふります。
「だれがなんであろうと、わたくしにはわたくしの、ただしさがあるの。たとえみなにわすれられたとしても、ころされたとしても、わたくしはそくひとして、こくみんをまもる、ぎむがあるわ」
「それでどんなに、くるしんでも?」
ティアは、こくりとうなずきました。
ルーンがいちど、めをふせてから、き、とかおをあげます。
「それなら、たたかいだよ、ティツィ。いいえ。そくひティツィアーナ」
ティアからいっぽはなれたルーンが、ティアをみおろします。
「わたしはようせい。ようせいはいちどかわしたやくそくを、たがえない。あなたはわたしにさしだされた、だいしょうなんだ。そのうんめいをかえたいなら、みっかあげるから、わたしのなまえを、あててごらんなさい」
「にしのつき、しかづののルーン。それが、あなたのなまえではないの?」
「ティツィアーナ。ようせいのなまえは、ひとつではない。わたしがやくそくにつかったなまえを、さがしだしなさい」
いったルーンがまた、まぼろしのようにきえてしまうとおもい、ティアはそのうでをつかみました。
「まって、ルーン」
「なんだい」
ルーンはいつものように、かるくといかえしてくれました。
「ティツィアーナとして、あなたのてはとれない。けれど」
きんりょくのひとみをみつめ、ティアはしんしにつたえました。
「わたしがただのティツィであったなら、きっとあなたのてをとったわ」
「ありがとう、ティツィ。でもたとえ、てをとっては、もらえなかったとしても、それでも、わたしはいいんだよ」
ルーンのゆびが、えみをわすれたほほに、ふれます。
「わたしのかわいいおひめさまが、わらっていてくれること。わたしのねがいなんて、それだけなんだからね」
どうか、あなたがもういちど、わらってくれますように。
ちいさないのりを、くちにして、ルーンはこんどこそ、まぼろしのようにきえました。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
脳内プロットではここでティツィアーナさんが折れている予定でした……
名前当て展開は入れられないなと思っていたはずなのに……
続きも読んで頂けると嬉しいです




