第77話 地球1位!
第8階層へ入った陸の前に広がっていたのは、これまでと同じ自然洞窟だった。
ごつごつした岩場に、広く枝分かれした通路。岩壁には青白く光る鉱石が点々と混じっている。
「ここも同じ感じか」
第6階層から続いている洞窟の景色を見回してから、陸は一度家へ戻った。
これから使うのは誘魔の香炉だ。エリナを家に残し、陸だけでもう一度第8階層へ戻る。
「よし、先にこいつら育てるか!」
ボス戦で使った主力をストックへ戻し、高速探索部隊三十体を召喚する。それから誘魔の香炉を起動した。
淡い煙が洞窟へ広がっていくと、しばらくして通路の奥から魔物が現れ始めた。
最初に飛び込んできたケイブリザードへ、二体のスピードウルフスケルトンが左右から襲いかかる。続いて飛んできたジャイアントバットも、待ち構えていた別の部隊が地面へ叩き落とした。
今の高速探索部隊にとって、この辺りの通常モンスターはもう大きな相手ではない。陸は三十体に戦わせながら、倒した魔物が消える前に次々とスケルトン化していった。
「スケルトンラッシュ!」
青白い光の中から立ち上がったスケルトンを、そのままストックへ戻す。
それを何度も繰り返した。
ケイブリザード。ジャイアントバット。またケイブリザード。
途中から、陸は次に現れる魔物を少し気にするようになっていた。
「……あれ?」
また通路の奥から飛んできたのは、見慣れたジャイアントバットだった。
「今回、新しいやついないのか?」
第6階層ではケイブリザード、第7階層ではジャイアントバットが初めて出てきた。だから第8階層でも何かいると思っていたが、香炉を使ってこれだけ戦っても、見たことのない魔物は一体も現れない。
「階層変わったからって、毎回新しいやつがいるわけじゃないのか」
少し意外ではあったが、それならそれでいい。
「まあ、今はレベル上げが目的だし!」
陸はすぐに次の戦闘へ意識を戻した。
そこからも香炉狩りは続いた。
何度も魔物の群れを迎え撃ち、倒した魔物はスケルトン化してストックへ。途中で何度か管理画面を確認しながら続けているうちに、かなりの時間が経っていた。
「……結構やったな」
誘魔の香炉を止め、陸は高速探索部隊のレベルを確認していく。
低かった個体もLv.17まで上がり、高い個体はLv.19。三十体すべてが、第8階層へ送り出すには十分なところまで育っていた。
「よし、これならいける!」
スピードウルフスケルトン二体に、ジャイアントバットスケルトン一体。
三体一組を十組。
前と同じ高速探索部隊を組み直し、第8階層の入口付近へ並べる。
「今回もボス部屋探してきてくれ!」
十組が一斉に動き出した。
骨の狼たちが岩場を駆け、ジャイアントバットスケルトンがその上を飛んでいく。それぞれの組が別の通路へ分かれ、次々と洞窟の奥へ消えていった。
「頼んだぞー!」
陸は最後の一組が見えなくなるまで見送ってから、家へ戻った。
その日の夕方。
陸はエリナと一緒に夕飯を食べたあと、リビングでゲームをしていた。
「リク、そこ!」
「分かってるって!」
画面の中で車体が大きく曲がり、ぎりぎりで壁を避ける。
「よし!」
「ぶつからなかった!」
「ギリギリだったけど」
一戦終わると、エリナはすぐに次のレースを選び始めた。その横で、陸はふと文明攻略戦のことを思い出す。
「……そういや、ランキングどうなった?」
文明攻略戦のランキングを表示し、地球ランキングを開く。
表示された一番上を見たところで、陸の目が止まった。
━━━━━━━━━━━━━━
【地球ランキング】
1位 JOHN
2位 ALEX
3位 桐谷真帆
━━━━━━━━━━━━━━
「……あれ? 俺、地球一位じゃね?」
陸は思わず画面へ顔を寄せた。
「やっぱ一位だ!」
大きく拳を握る。
「リク、いちばん?」
ゲームのコントローラーを持ったまま、エリナが隣から画面を覗き込んできた。
「地球では一位! でもまだ上がいる」
陸はそのまま総合ランキングへ切り替えた。
そこには、まだ自分より上にいくつもの名前が並んでいる。
「次は総合一位! このまま全部抜く!」
「リク、がんばれー!」
「おう!」
しばらくランキングを眺めてからウィンドウを閉じ、陸はスマホを手に取った。SNSを開くと、文明攻略戦についての投稿が次々と流れてきた。
『JOHN地球1位になってる』
『マジじゃん』
『ALEX抜かれた!?』
『誰だよJOHN』
『ボスバトル1位のやつだろ』
『あのスケルトンの人か』
『また上がってきたのか』
『攻略速度おかしくない?』
『こいつ寝てる?』
「寝てるわ」
陸は思わずスマホへ突っ込んだ。
画面を送ると、今度はJOHNの正体について勝手な予想が始まっている。
『一人でこの速度は無理だろ』
『実は何十人かでJOHN使ってる説』
『国家プロジェクト説ある?』
『どこの国だよ』
『軍隊持ってるんじゃね?』
『攻略専門部隊が裏にいそう』
「スケルトンだけどな」
想像だけがどんどん大きくなっていくのを見て、陸は笑いながら次の投稿へ指を滑らせた。
『JOHN本人ここ見てたりして』
『見てたら第8階層も頑張ってくれ』
『外に出たいから頼む』
陸の指が止まる。
「……もう行かせてるけど」
「リク、つぎやろ!」
エリナがコントローラーを持ち上げる。
「お、やるか!」
陸はスマホを置き、次のレースを選んでいるエリナの横へ座り直した。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!




