第71話 高速探索部隊!
総合ランキングを閉じたあとも、陸はじっとしていられなかった。
「第9階層かあ……」
すぐにサモンマップを開く。文明攻略戦が始まる前から、第7階層では三十体のスケルトンが三体ずつ十組に分かれて探索を続けている。地図に表示される道は数日かけてかなり増えていたが、肝心のボス部屋はまだ見つかっていない。
「戦う方は問題ないんだよな」
サモンマップ上の印は、途中で長く止まることもなく進み続けている。陸自身が第7階層を歩いた時も、魔物との戦闘で苦戦することはなかった。陸は十方向へ伸びた探索済みの道を眺める。
「結局、一番時間かかってんのって……ボス部屋探しじゃん」
「ぼす?」
「そう。そこ見つけないと次に行けないんだよ」
隣にいたエリナが、サモンマップを覗き込む。
第6階層でも、ボス戦そのものより、ボス部屋を見つけるまでの方がずっと時間がかかった。イベント期間は十四日間。すでに第9階層まで進んでいる連中へ追いつくなら、この部分をどうにかした方がいい。
「だったら……もっと速いやつだけで探したらいいんじゃないか?」
口にした瞬間、陸の目が大きくなる。
「それだ!」
「それ?」
「速いやつ集める!」
すぐに思い浮かんだのは、以前ウルフを進化させたスピードウルフだった。敏捷は五十八。しかもアクセルまで持っている。
「あと、ジャイアントバットも敏捷58だったよな」
第7階層で最初に見た時も、天井から一気に飛び込んでくる速さに驚いた。飛べる分、広い通路なら移動もしやすい。
「スピードウルフ二体と、ジャイアントバット一体……それを十組」
三体一組なら、今と同じ形で戦いながら探索できる。今の三十体の中には、スピードウルフもジャイアントバットスケルトンも一体ずついる。
「じゃあ、あとウルフ十九体と、ジャイアントバット九体か!」
一度作ってしまえば、第8階層へ進んだあともレベルを上げながら使っていける。香炉で集めて育てるのに半日ほど使ったとしても、その後の探索がずっと速くなるなら十分に取り返せるはずだ。
「二週間あるんだ。今ちょっと時間使ってでも、先に作った方が絶対いい!」
陸はソファから立ち上がった。まずは第7階層中に散らばっている三十体を戻さなければならない。
「ちょっと行ってくる」
「エリナも!」
「いや、命令だけだからすぐ戻る」
「そっか!」
玄関へ向かい、階層転移で第7階層へ移動する。青白い光が消えると、見慣れた岩肌と光る鉱石が広がり、陸は通路の奥へ意識を集中させた。
第7階層入口まで戻ってこい。
「これでよし」
家へ戻ってサモンマップを開くと、十組の印が少しずつ方向を変え始めていた。
「やっぱ戻ってくるのにも時間かかるな」
かなり奥まで進んでいる組もいる。一番遠い組まで戻るには、まだしばらくかかりそうだった。
「まあいいか。これも先行投資だな」
陸は時々サモンマップを確認しながら待つことにした。
数時間後、十組の印が第7階層入口付近にまとまったのを確認する。
「よし、揃った!」
ここから香炉を使って高速探索部隊を作る。その前に、陸は近くにいたエリナへ目を向けた。
「エリナ、今日ちょっと一人でダンジョン行ってくるから、家で待っててほしいんだけど」
「リクだけ?」
「うん。前に使った香炉、覚えてる?」
「こうろ……」
「エリナ、あれにすごい夢中になってたじゃん。今日はあれ使うから、一緒に連れてくのはやめといた方がいいと思うんだ」
エリナは少し考えてから、陸を見上げた。
「……おるすばん?」
「そう。ごめんな。半日くらいかかると思うけど、今日中にはちゃんと帰ってくるから」
「リク、かえる?」
「帰る帰る。終わったらすぐ戻ってくる」
「……わかった」
小さく答えたエリナの頭を、陸は何度か撫でる。
「帰ったら一緒に遊ぼう」
「うん!」
陸は第7階層へ移動し、入口付近へ戻ってきた三十体を一度ストックへ戻した。次は第5階層だ。階層転移で移動すると、以前何度も歩いた石造りの通路が広がる。ここにいる通常の魔物はウルフだ。
陸はストックから戦闘用のスケルトンを選んで召喚し、周囲へ配置していく。
「まずは十九体だな」
所持アイテムから誘魔の香炉を取り出し、通路の少し広くなった場所へ置く。
「ここから高速探索部隊、作るぞ!」
陸が誘魔の香炉を使用すると、香炉の中から淡い煙のようなものがゆっくり立ち上った。
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