第53話 JOHN疑惑!
「ん……」
陸はゆっくり目を開けた。
いつの間にかソファで横になっていたらしい。身体を起こすと、胸の上に置かれていたスマホがそのまま腹の上へ滑り落ちた。
「……寝てたのか」
まだ少しぼんやりしたままスマホを見る。
「うわっ」
通知が大量に溜まっていた。
ほとんどが、海斗、蓮、虎太朗とのグループLINEだ。
陸は寝起きのままトーク画面を開いた。
『おいランキング見た?』
『JOHNやばすぎ』
『第五戦って何だよ』
『陸起きてる?』
『てか待って』
『JOHNってスケルトンラッシュじゃん』
『陸も同じじゃなかった?』
『お前JOHN?』
『既読つかねえ』
『寝てんのか?』
『起きろJOHN』
「なんで最後もう決めつけてんだよ」
思わず笑いながら画面を見ると、三人はすでにグループ通話をしていた。
「まだ喋ってんのかよ」
陸もそのまま参加する。
『お、きた!』
『JOHN起きたぞ!』
「誰がJOHNだよ!」
入った瞬間の海斗の声に、陸は笑いながら返した。
『いやだってお前、スケルトンラッシュだっただろ』
「俺Eだぞ」
『それなんだよな』
蓮の声が重なる。
『ランキングのJOHN、SSSだもんな』
『陸がSSSだったら、とっくに自慢してるだろ』
虎太朗の言葉に、陸は一瞬だけ黙った。
「……まあ、それはそう」
『否定できねえのかよ』
「SSSとか出たら普通に言いたくなるだろ!」
『じゃあ違うな』
「判断早っ」
三人の笑い声が重なった。
陸も笑いながらソファへ深く座り直す。
『でも同じスケルトンラッシュなんだよな』
海斗がまだ少し面白そうに言う。
『JOHNがSSSで、陸がE』
『完全に下位互換じゃん』
「やめろ。なんか有名人と同姓同名のやつみたいで嫌なんだけど」
『お前のやつも育てたらSSSになったりしないの?』
「何億光年先の話だよ」
『光年は距離な』
「じゃあ何億年先だよ」
『まあ、ランク逆だったらお前が世界一だったかもしれねえな』
「何の慰めにもなってねえよ」
また好き勝手に笑う三人へ、陸は呆れたように息を吐いた。
実際には下位互換どころか、そのSSS本人なのだが、口には出せない。
陸は笑いを堪えながらスマホを耳へ当て直した。
「てか、お前らボスバトルやったの?」
『やった』
すぐに海斗が答えた。
『俺、第一戦も勝てなかったんだけど』
「マジ?」
『マジ。普通に強えよ。ソードブースト使っても全然無理だった』
「ってか、剣買ったんだな」
『やっとな』
続いて蓮も口を挟む。
『俺もダメだった。思ったより全然きつい』
『俺も』
虎太朗まで続いて、陸は少しだけ目を丸くした。
「全員?」
『全員』
『第一戦で終わり』
『ランキング上のやつらおかしいだろ』
陸は思わずランキングのことを思い出す。
自分は第五戦まで進んだ。
けれど、三人にとっては第一戦を突破するだけでも難しい。
『陸は?』
海斗に聞かれて、陸はすぐに答えた。
「俺も全然ダメだったわ」
『だよな』
「スケルトン出しても普通にやられた」
『やっぱEじゃきついか』
「きついきつい」
言いながら、陸は少しだけ視線を逸らした。
実際には、そのスケルトンたちが第四戦のオークチャンピオンまで倒している。
『それ考えたらJOHNマジで何なんだよ』
『第五戦まで行ってんだろ?』
『しかもSSS』
「やばいよな」
陸も他人事みたいに答える。
『いいよなあ、SSS』
海斗の声が少しだけ遠くなる。
『俺もSSS欲しかった』
「ソードブーストEで頑張れよ」
『使って負けたって言ってんだろ!』
「ははっ」
思わず吹き出す。
そのまましばらく、三人がボスバトルでどう負けたか、どんな攻撃を食らったかという話が続いた。陸は適当に相槌を打ちながら、自分も似たような感じだったことにして話を合わせる。
そこからは大学やダンジョンのことに限らず、最近のことをあれこれ話しているうちに、気づけばかなりの時間が経っていた。
『じゃ、俺そろそろ飯食うわ』
「おう。またな」
『JOHN、ランキング頑張れよ』
「だから俺じゃねえ!」
『じゃあなJOHN』
「海斗!」
笑い声と一緒に通話が切れた。
静かになったリビングで、陸はしばらくスマホを眺めていたが、やがて腹を押さえた。
「……腹減ったな」
何か作ろうかとも思ったが、今日は一位になった祝いくらいしてもいい。そう思った瞬間、陸はショップを開いて食品カテゴリーへ入った。
「せっかくだし、なんか買うか!」
最初に目に入ったピザを購入し、そのままフライドチキンとポテトも買う。少し画面を送って寿司を見つけると、それにも手が伸びた。
「寿司も食いたいな……」
さらに唐揚げ、たこ焼き、炭酸飲料。最後にはケーキまで購入する。
買うたびにテーブルへ青白い光が集まり、料理が次々と現れていった。
「多くね?」
どう考えても一人分ではない。けれど、テーブルを見回した陸はそのまま笑った。
「まあパーティーだしな!」
一人しかいないが、気にしない。
ピザ。フライドチキン。ポテト。寿司。唐揚げ。たこ焼き。ケーキ。大きなボトルの炭酸。
全部並べ終えてから改めて見ると、さすがに量がおかしい。
「……買いすぎたな」
それでも、好きなものばかり並んだ光景を見ていると自然と笑みが浮かぶ。
「いただきます!」
まずピザへ手を伸ばし、熱いチーズを伸ばしながら一気に一切れ食べる。
「うまっ!」
次はチキン。そのままポテトをつまみ、炭酸を流し込む。
「最高だなこれ!」
寿司を食べ、唐揚げを食べ、またピザへ戻る。何の統一感もないが、今日はそれでよかった。
箱も皿もどんどん空いていき、途中からは自分でも何をどれだけ食べたのか分からなくなる。
「もう無理……」
最後にケーキまで押し込んだところで、陸はソファへ倒れ込んだ。腹が重く、テーブルには食べ切れなかったピザとポテトがまだ少し残っている。
「さすがに買いすぎた……」
そう言いながらも、陸の顔には満足そうな笑みが残っていた。
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