第32話 ベランダでバーベキュー!
リビングのソファへ座っていた陸は、何となく大きな窓の向こうへ目を向けた。
その先に見えるのは、広くなったベランダだ。リクライニングチェアも、そのまま端に置かれている。
「……せっかくあんな広くなったんだし、なんかしたいな」
陸はソファへ座ったまま、しばらくベランダを眺める。
「外で飯とか……あ、バーベキューできるじゃん!」
思いついた瞬間、陸はすぐにショップを開いた。
「肉焼いて、エビとかホタテも焼いて……絶対いいだろ!」
検索欄へ『バーベキュー』と入れる。
画面には小さな卓上グリルから、大人数でも使えそうな大きなものまでずらりと並んだ。
「こんなにあんのか!」
陸は一つ開いては戻り、また別のものを開く。
「これ小さすぎるな。こっちは……でかっ! 一人でこれはいらないだろ」
何度か見比べたあと、陸の指が一つの商品で止まった。
蓋付きのバーベキューグリル。焼き網も広く、肉や野菜をまとめて並べられるくらいの大きさがある。
「お、これいいじゃん!」
詳細を開くと、専用の燃料とトングも一緒に選べるようになっていた。
「じゃあこれ! トングもいるし……皿も外で使いやすいやつ買っとくか」
必要なものを次々とカートへ入れていく。
道具が揃ってくると、今度は食材が気になった。
「肉どうしよっかな」
食品の一覧を開く。
牛肉、豚肉、鶏肉。さらにソーセージや厚切りのベーコンまで並んでいる。
「牛は絶対いるだろ。豚も食いたいし……ソーセージも焼いたらうまそう!」
牛肉を何種類か見比べ、脂の入った厚めのものを選ぶ。豚肉とソーセージも追加したところで、陸はまだ画面を閉じなかった。
「魚介も欲しいな」
エビ。ホタテ。イカ。魚の切り身。
「うわ、殻付きのホタテあるじゃん! エビもでかいやつある!」
そのまま二つとも追加する。
次は野菜。
「とうもろこしは欲しい。玉ねぎも……あ、しいたけも焼こう」
ピーマンも加えると、買うものはかなり増えていた。
陸はカートを見て少し止まる。
「……米もいるな。肉食うなら絶対欲しいわ」
ご飯と飲み物、それに焼肉のタレや塩まで追加した。
並んだ品を上から見直す。
「よし! これだけあれば十分だろ!」
まとめて購入する。
青白い光とともに、買ったものがリビングの床へ次々と現れた。
「来た!」
陸はまずグリルの箱を開ける。
中から本体を取り出し、説明を見ながら脚を広げていく。思っていたより簡単に形になり、陸はそのままベランダへ運んだ。
窓を開けた瞬間、外の空気が入ってくる。
「おお……やっぱ気持ちいいな」
日差しは明るく、風が頬や腕へ直接当たる。陸はすぐには中へ戻らず、そのまま少しだけベランダに立っていた。
陸はグリルをテーブルから少し離れた場所へ置くと、いったんキッチンへ戻った。
「野菜も切っとくか!」
玉ねぎとピーマンを切り、しいたけを整える。とうもろこしも焼きやすい大きさにして、肉と魚介はそれぞれ皿へ分けた。タレや塩、ご飯、飲み物もまとめていく。
「こうやって並べると、めっちゃあるな!」
準備したものを持って、何度かリビングとベランダを往復する。
牛肉、豚肉、ソーセージ。エビとホタテ。野菜、ご飯、飲み物。小さなテーブルの上へ順番に並べていく。
「おお……めっちゃバーベキューっぽくなってきた!」
トングを置き、皿を出し、タレも用意する。
全部揃ったところで、陸はグリルへ火を入れた。
「よし、やるぞ!」
網が温まるのを待って、最初に牛肉を何枚か並べる。ジュウッ、と大きな音がして、すぐに肉の焼ける匂いが広がった。
「うわ、いい音!」
陸はトングを持ったまま、肉の表面が変わっていくのをじっと見る。少し焦げ目がついたところで裏返すと、また油が落ちて音を立てた。
「これ絶対うまいやつだろ!」
焼けた一枚を皿へ取り、タレにつけて、そのまま口へ入れた。
「うまっ!」
陸はすぐご飯を口へ運んだ。
「やっぱ肉と米だわ!」
もう一枚焼きながら、今度はソーセージと玉ねぎも網へ乗せる。空いているところにはエビとホタテを並べ、肉とは違う匂いが混ざり始める。
「ホタテもいいなあ!」
殻の上で汁がふつふつしてきたところへ、少しだけ醤油を垂らす。香ばしい匂いが一気に強くなった。
「うわ、これやばい!」
少し待ってから口へ運ぶ。
「熱っ……うま!」
エビも殻を外して口へ運び、焼けたとうもろこしにもかじりつく。最初は立ったまま次々と焼いていた陸も、しばらくすると椅子へ座った。
テーブルにはまだ肉も野菜も残っている。横ではグリルから小さな音が続いていて、陸は飲み物を一口飲んだ。
「……外で食うの、めっちゃいいな」
陸は飲み物をもう一口飲むと、椅子から立って次の肉を焼き始めた。
「まだ食えるな。次これ焼こ!」
今度は豚肉としいたけを並べる。焼けるまでの間、陸は網の上を眺めながら飲み物を飲んだ。
豚肉の端が少し色づいてくる。
「よし、そろそろ!」
ひっくり返して、またしばらく待つ。食べて、焼いて、飲んで。また食べるうちに、最初に山ほどあった食材もかなり減っていた。
「食ったなあ……」
陸は残っていた飲み物を持って、少し離れたリクライニングチェアへ移る。背もたれへ身体を預けると、ゆっくり後ろへ倒れていった。
「はあー……」
満腹のまま脚を伸ばす。顔に当たる風が気持ちいい。日差しの暖かさを感じながら、陸はしばらくそのまま動かなかった。
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