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第22話 百万円の風呂!

 陸はベッドへ戻ると、そのままショップを開いた。


 家電を買ったばかりだが、今度は住宅のカテゴリーへ指を伸ばす。


━━━━━━━━━━━━━━

【住宅】


部屋拡張

収納追加

キッチン拡張

浴室アップグレード

ベランダ拡張

ゲームルーム追加

ホームシアター追加

━━━━━━━━━━━━━━


「こういうのも欲しいんだよなあ」


 上から順に眺めていく。


 部屋を広げるもの。収納を増やすもの。キッチンを丸ごと変えるもの。


 気になる商品をいくつか開いてみたが、表示される金額はどれも簡単には押せないものばかりだった。


「やっぱ家そのものいじると高いな……」


 ホームシアター追加は、前に見た通り5,000,000P。


「500万Pはまだ無理だわ」


 さすがに笑って閉じる。


 そのまま画面を送っていた陸の指が、ふと止まった。


「ん?」


━━━━━━━━━━━━━━

浴室アップグレード

1,000,000P


現在の浴室を

上位仕様へ変更します。


・大型浴槽

・洗い場拡張

・ジェットバス機能

━━━━━━━━━━━━━━


「お、これいいな!」


 陸はすぐ詳細を開いた。


 表示された画像には、今の風呂とは比べものにならないほど大きな浴槽が映っている。


「でっか! これなら足伸ばして入れるじゃん!」


 今の部屋の風呂は、一人暮らし用の普通の大きさだ。


 入れないわけではない。だが、膝を曲げずにゆっくり浸かれるほど広くもない。


 しかも、画像の横には小さく『ジェットバス機能付き』と表示されている。


「ジェットバスまであんの?」


 陸の口元が緩む。


「これ絶対気持ちいいやつだろ」


 そのまま購入ボタンへ指を寄せて――止まった。


━━━━━━━━━━━━━━

価格

1,000,000P

━━━━━━━━━━━━━━


「……100万Pか」


 さっきまでの勢いが少しだけ落ちる。


 ドラム式洗濯乾燥機を買ったあとの所持ポイントは1,640,500P。


 買えば、一気に60万P台まで減る。


「さすがにでかいな」


 陸は商品画像と値段を何度か見比べた。


 部屋を広げるものなら、もう少し貯めてからでもいい。


 だが風呂は毎日使う。


 しかも今、スケルトンたちは第2階層を探索しながらモンスターを倒している。


「……まあ、また稼げるしな」


 もう一度、大きな浴槽を見る。


「毎日これ入れるなら、ありだな」


 数秒迷って。


「よし、買おう!」


 購入を押した。


━━━━━━━━━━━━━━

浴室アップグレード

1,000,000P


購入しました。

━━━━━━━━━━━━━━


 直後、脱衣所の向こうから青白い光が漏れた。


「おっ!」


 陸はすぐに立ち上がる。


 さっき洗濯乾燥機が現れた時より、光が強い。


「これ、風呂ごと変わってんのか?」


 脱衣所へ駆け込み、浴室の扉へ手をかける。


 青白い光がゆっくり消えていく。


 陸はすぐに扉を開いた。


「うわ、すげえ!」


 思わず声が出た。


 まず、広い。


 今まで一人で入ればそれだけでいっぱいだった浴室が、明らかに奥へ広がっている。


 洗い場にも余裕があり、壁も床も新しいものへ変わっていた。


 そして何より目につくのは、壁際にある大きな浴槽だ。


「風呂でっか!」


 陸は靴下だけ脱いで浴室へ入り、浴槽の横まで近づく。


 今までのものより長く、横幅もある。


 縁に手をついて中を覗き込むと、側面にはいくつか丸い噴出口が並んでいた。


「これがジェットバスか!」


 すぐ横には見慣れない操作パネルまで付いている。


「いや、ホテルじゃん。これ」


 陸は一度浴室全体を見回してから、もう一度浴槽を見る。


「……入りたいな」


 数秒。


「いや、入るか!」


 買ったばかりなのだから、使わない理由がない。


 陸はすぐに湯張りを始めた。


 操作自体は難しくなかった。温度を選び、湯張りを押すと、浴槽の中へ勢いよくお湯が流れ始める。


「おお……こうやって見るとさらにでかいな」


 お湯が溜まっていく間に着替えを用意し、少し待つ。


 やがて電子音が鳴った。


「来た!」


 服を脱ぎ、身体を洗ってから浴槽へ入る。


 ざぶ、と湯が揺れた。


「はあああ……」


 肩まで浸かった瞬間、長く息が漏れた。


 そのまま脚を前へ伸ばす。


「おお!」


 膝が曲がらない。


 つま先までしっかり伸ばしても、まだ少し余裕がある。


「足伸ばせるの最高だな!」


 背中を浴槽へ預ける。


 ダンジョンを歩き回った疲れが、そのままお湯へ溶けていくようだった。


 しばらく何もせず浸かっていた陸の視線が、浴槽の横にあるボタンへ向く。


「……そうだ。これあったわ」


 ジェットバス。


「押してみよ」


 ボタンへ指を伸ばす。


 次の瞬間。


 ブクブクブクッ!


「うおっ!?」


 背中と脚の横から一気に泡と水流が噴き出した。


 陸の身体がわずかに揺れる。


「おおお……!」


 最初は驚いたが、すぐに顔が緩んだ。


「これ気持ちいいな!」


 背中へ当たる水流に合わせて少し位置をずらす。


「うわ、そこめっちゃいい」


 しばらく試してから、今度は脚を伸ばしたまま目を閉じた。


 広い浴槽。


 肩まで浸かれるお湯。


 背中へ当たるジェットバス。


「……100万P、全然ありだわ」


 買う前は一瞬迷った。


 だが、もうその気持ちはどこかへ消えていた。


「これ毎日入れんのか……」


 陸は浴槽の縁へ頭を預ける。


「最高すぎるだろ」


 そのまま目を閉じ、しばらく新しくなった風呂を満喫した。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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