第134話 Cランク四体!
「全部Cランクかよ!」
陸が声を上げた直後、四体が一斉に動いた。
真っ先に飛び出したダークウルフは正面のグランドナイトを避け、床すれすれを駆けながら後ろのゴブリンハイウィザードへ回り込もうとする。
「そっちは行かせない!」
陸が左手を向けると、進路上へ炎が生じた。ダークウルフはすぐ横へ跳んだが、その先では床から金属板が立ち上がる。
急停止した足元で影が大きく揺れ、そのまま地面から起き上がるように、もう一体のダークウルフへ変わった。
「シャドウクローンか!」
本体と分身が左右へ散る。
陸は本体を追わず、分身の身体へ炎を生じさせた。黒い毛並みが一気に炎へ包まれ、分身は床を転がるように暴れる。
「ギャッ!」
それでも炎は消えない。やがて輪郭が崩れ、黒い影へ戻るように薄れていった。
「それ消しとけば、入れ替われないだろ!」
以前、自分のダークウルフに使わせたシャドウスイッチは、本体と分身の位置を入れ替えるスキルだった。交換先が消えたのを見て、本体のダークウルフが低く唸る。
その横では、コボルトヴァンガードが盾を前へ出して突っ込んでいた。
「グランドナイト!」
重装のスケルトンが正面へ出る。振り下ろされた戦斧を長剣で受けると、金属同士がぶつかる音が石室へ響き、コボルトの腕ごと押し返した。
体勢を崩した相手が盾を構え直すより早く、グランドナイトがグランドアクセルで一気に間合いを詰める。長剣を横薙ぎに振り抜き、盾で受けたコボルトの身体を数メートルも横へ飛ばした。
「強っ!」
だが、後ろではゴブリンハイハンターがすでに弓を引いていた。
放たれた一本目の矢を、陸は目の前に作った薄い金属板で弾く。続けて二本、三本と飛んできた。
「何本もやるなら、こっち!」
今度はハイハンターの正面へ横から強い風をぶつける。矢はまとめて流され、石壁や床へ突き刺さった。
位置を変えようと走ったハイハンターの前には、さらに金属の壁を立ち上げて射線ごと切る。
「これなら撃てないだろ」
その間にも、グランドスライムが巨体を揺らしながら迫ってくる。
陸はゴブリンハイウィザードへ顔を向けた。
「フレイムストーム!」
杖の先に赤い光が集まり、グランドスライムの周囲へ小さな火がいくつも灯る。次の瞬間、それらが一斉に巻き上がり、青黒い巨体を包み込んだ。
表面が焼けて大きく崩れる。
それでも液体状の身体はすぐに盛り上がり、失った部分を埋めるように形を戻し始めた。
「やっぱ戻るか!」
スライムは炎の中で身体を広げ、そのままゴブリンハイウィザードへ覆いかぶさろうとする。
「グランドナイト!」
コボルトを弾き飛ばしていたグランドナイトが石床を蹴った。エアステップで何もない空中を蹴り、スライムの上へ回り込む。
「フォーススラッシュ!」
長剣から放たれた青白い斬撃が炎の中を走り、グランドスライムの身体を大きく裂いた。さらにグランドナイト自身も落下しながら長剣を叩き込み、巨体を床へ押し潰す。
裂けた身体はすぐに繋がろうとしたが、噴き上がる炎が再生途中の表面を焼き続けている。青黒い塊は何度も盛り上がりかけ、そのたびに形を崩し、とうとう巨体を起こせないまま床へ広がった。
まだ細かく蠢いている。
だが、すぐに戦線へ戻れる状態ではない。
その瞬間、背後から低い唸り声がした。
ダークウルフが炎を回り込み、陸へ飛び込んでくる。
「うおっ!」
陸はとっさに身体強化を使い、横へ踏み込んだ。牙が目の前を抜け、着地したダークウルフがすぐに振り向く。
その足元へ炎を生じさせると、黒い身体は反射的に横へ跳んだ。
だが、そちらにはグランドナイトがいる。
グランドアクセルで一気に間合いを詰め、振り抜いた長剣がダークウルフを床へ叩き転がした。立ち上がるより早く、もう一度炎がその身体を包む。
ダークウルフは数歩だけ進み、そのまま崩れ落ちた。
「次!」
金属壁の向こうからゴブリンハイハンターが飛び出す。弓にはすでに矢がつがえられていた。
陸が風をぶつけるのと、矢が放たれるのはほぼ同時だった。大きく軌道を逸らした矢が石床へ突き刺さる。
その直後にはグランドナイトが横から踏み込んだ。ハイハンターが弓を構え直す暇もなく、長剣の一撃で身体が吹き飛び、石壁へ叩きつけられた。
残ったコボルトヴァンガードが盾を構え、再びグランドナイトへ突っ込む。
「身体強化!」
陸がグランドナイトへ力を重ねる。踏み込みがさらに鋭くなり、コボルトの戦斧を長剣で弾いた。
そのまま返した一撃が盾へ叩き込まれ、腕ごと大きく跳ね上がる。
「今だ!」
グランドナイトの長剣に青白い光が走る。至近距離から放たれたフォーススラッシュがコボルトをまともに捉え、床を何度も転がしていく。
壁際で止まった身体は、それきり動かなかった。
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