第101話 サイクロンガーゴイル!
幅広い階段を駆け上がり、陸は最後の段を踏み越えた。
その先には、屋根のない広い石造りの広場が広がっていた。周囲に高い建物はほとんどなく、低い石壁の向こうには青空が大きく開けている。風もそのまま吹き抜けていた。
「うわ、広っ!」
エリナも少し先まで飛び、辺りを見回す。
「ひろい!」
陸もそのまま進もうとして、広場の奥で足を止めた。石壁の上部から外へ大きく張り出した台座のような場所に、一体のガーゴイルがいる。
翼を畳み、じっとこちらを見下ろしていた。
「……でかくない?」
これまで見たガーゴイルより明らかに大きい。厚い胴体に太い腕、折り畳まれた翼も大きく、立ち上がれば味方のガーゴイルより一回り以上ありそうだった。
「おっきい!」
「だよな。あいつ、なんだ?」
陸はすぐに鑑定した。
━━━━━━━━━━━━━━
サイクロンガーゴイル
ランク:C
Lv.35
HP 560
MP 195
筋力 205
耐久 235
敏捷 215
賢さ 175
【スキル】
レンドクロー
ウイングガード
サイクロン
━━━━━━━━━━━━━━
「レベル35!?」
陸の目が敏捷215で止まり、そのまま三つのスキルへ移る。ストックにも同じ進化種はいるが、目の前の個体は明らかに強い。
周囲を見てもほかに敵はいない。特別な表示も出てこなかった。
「頼むから、こいつがボスであってくれよ……!」
残り時間はもう一時間二十分しかない。
陸が前へ出ると、サイクロンガーゴイルがゆっくり立ち上がった。大きな翼が左右へ開く。
「来るぞ!」
次の瞬間、巨体が台座を蹴った。翼が一度大きく羽ばたき、その身体が一気に広場の上へ浮かび上がる。
「速っ!」
陸の前には、アイアンゴーレム戦で使った四体の精鋭スケルトンがいる。
「ウォーロード、前! デストロイヤーも行け!」
二体が広場へ走り出す。
サイクロンガーゴイルは上空で大きく旋回すると、突然翼を畳んで急降下した。
「ウォーロード!」
オークウォーロードが盾を構える。淡く光った爪が盾の表面を削り、レンドクローの勢いで巨体が横へ押し込まれた。
「デストロイヤー!」
すぐ横からオークデストロイヤーが大斧を振り上げる。だが、斧が振り下ろされるより先にガーゴイルは翼を広げ、ふわりと身体を浮かせた。
大斧が石床を叩いた時には、もう頭上へ抜けている。
「逃げるの早っ!」
ガーゴイルはそのまま高度を上げ、広場の上を大きく回った。
「アークメイジ!」
ゴブリンアークメイジが杖を向ける。白い冷気が集まり、巨大な氷槍が伸びていく。
「グレイシャルスピア!」
氷槍が上空へ撃ち出された。サイクロンガーゴイルは直前で翼を傾け、巨体を横へ滑らせる。氷槍は翼のすぐ横を通り抜け、そのまま青空へ消えていった。
「うそだろ!?」
今度はシャープシューターが弓を構え、まず一射する。
矢が上空へ飛ぶと、サイクロンガーゴイルは翼を身体の前へ畳んだ。
ウイングガード。
矢が翼に弾かれる。
「防ぐのかよ!」
シャープシューターはすぐに次の矢をつがえた。矢じりへ光が集まり始め、上空を回るガーゴイルを弓が追う。
だが、光が強くなる前にガーゴイルが急降下した。
「来た!」
シャープシューターが狙い直す横を巨体が一気に通り抜ける。爪の一撃を受けたアークメイジが石床を転がり、陸がそちらへ目を向けた時には、敵はもう上空へ戻っていた。
「くそ、当たんない!」
再びガーゴイルが高度を取り、大きく翼を振る。
ゴォッ!
翼の前で巻いた風が一気に太くなり、小さな竜巻のような形を作った。
「サイクロンか!」
次の羽ばたきと同時に、竜巻が前へ飛んでくる。
「避けろ!」
ウォーロードとデストロイヤーが左右へ動くが、広がった風が二体をまとめて巻き込み、その巨体を押し流した。骨と装備がガガガッと石床を擦る。
「うわっ、範囲広い!」
サイクロンガーゴイルはその隙に高度を落とし、今度はデストロイヤーへ向かう。
「デストロイクラッシュ!」
大斧が赤黒い光をまとい、デストロイヤーが真正面から振り抜く。
敵の翼が一度強く動いた。
身体が斧の軌道から外れ、デストロイクラッシュは空を切る。そのまま横を抜けたレンドクローが肩口を削り、骨の欠片が飛んだ。
「マジかよ!」
もう一度アークメイジが杖を上げ、シャープシューターも弓を構える。しかしサイクロンガーゴイルは二体の正面へ入らず、高く上がって大きく回り込んだ。
また狙いが外れる。
「……これ、編成悪いな」
エリナが隣で首を傾げる。
「へんせい?」
「うん。こいつらが弱いんじゃない。相手と合ってない!」
陸はすぐにスケルトンストックを開いた。
飛べるやつ。追いつけるやつ。動きを邪魔できるやつ。
「シャープシューターは残す」
当てるところまで持っていければ、フォーカスショットの威力は使える。
「ウォーロード、デストロイヤー、アークメイジ。戻れ!」
三体の精鋭スケルトンがその場から消え、ストックへ戻る。陸は空いた枠へ別の三体を選んだ。
「こいつらでいく!」
三体を順番に選び、精鋭化して召喚する。
淡い光の中から、大きな翼と角を持つサイクロンガーゴイルのスケルトンが現れる。その隣には幅広い翼を持つハウリングバット。少し後ろには弓を持ったゴブリンハイハンターが立った。
骨の輪郭には、精鋭化特有の淡い金色が浮かんでいる。
「よし!」
味方のサイクロンガーゴイルが翼を開き、ハウリングバットもすぐに浮かび上がる。ハイハンターは弓へ手を掛け、その奥ではシャープシューターがもう一度敵へ向き直っていた。
上空では、敵のサイクロンガーゴイルが大きく旋回している。
陸はそれを見上げた。
「今度は、追えるやつでいく!」
最後まで読んでいただきありがとうございます!
面白かった、続きが気になると思っていただけましたら、ブックマークや☆評価、感想で応援していただけると励みになります!




