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【全話 完結】令和の人斬り 《天誅》 天に代わりて、悪を討つ  作者: 虫松
第三部 疑心

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第八話 剣道の決闘

高校へ走って向かうのは刑事の土方敏夫だった。彼は校門の前に並ぶ黒スーツの男たちに気づき、目を細める。


「……指定暴力団 坂本組のやつらじゃないか。四国のヤクザがなぜここにいる?」


その中心にいる男に目を向けた瞬間、土方は息を呑んだ。


(まさか……あの男は坂本龍太郎! 坂本組の若頭で、いずれ組長の坂本忍の跡を継ぐと言われている男……!岡崎がいるところには、必ず何かが起きるな。)


土方は授業が終わる放課後まで校門の前で待っていた。


土方敏夫が高校の正門をくぐると、異様な熱気が漂っていた。剣道場へと歩くにつれ、ざわめきが大きくなり、剣道場の前には多くの生徒たちが群がっている。


「なんだこれは……?」


土方は近くにいた生徒を捕まえて尋ねた。


「何があるんだ?」


「 岡崎と転校生の坂本が剣道で決闘するんですよ!」


「……は?」


土方は眉をひそめた。岡崎は確かに向こう見ずな性格だが、

よりによって暴力団の坂本と剣道で対決とは


「岡崎はとんでもないトラブルメーカーだな……」


そう呟きながら、人だかりをかき分けて剣道場の中を覗くと、そこには竹刀を構え、一触即発の雰囲気を漂わせる二人の姿があった。


坂本龍太郎は余裕の笑みを浮かべ、竹刀を軽く回しながら言う。


「ほう、ようここまで来たのう。男なら逃げんと勝負せんといかんぜよ、岡崎!」


岡崎洋介は息を整えながら、竹刀を握る手に力を込めた。


「美香を極道の妻になんかさせない……!」


その瞬間、剣道場の空気が張り詰めた。


挿絵(By みてみん)


竹刀を構えた岡崎洋介と坂本龍太郎の間には、張り詰めた空気が漂っていた。

剣道場の観客席には、クラスメイトたちが固唾を飲んで見守る中、土方敏夫は腕を組みながら呟いた。


(……北辰一刀流か。まさか、こんな高校でこの流派の剣を目にすることになるとはな……。)

坂本龍太郎の構えを見て、土方はすぐにその流派を見抜いた。

北辰一刀流は幕末の新撰組隊士たちも学んだ剣術であり、尊王攘夷の志士が多く学んだことで知られている。


坂本は竹刀を軽く回し、土佐弁で笑った。


「岡崎、おまんの覚悟、見せてもらおうかのぅ?」


岡崎は答えず、ただじっと坂本を睨みつける。

審判役の剣道部顧問が二人を見て、深く息を吸った。


「――始めッ!」


掛け声とともに、坂本が鋭く踏み込んだ。


バシュッ!


空気を裂く竹刀の音。岡崎は瞬時に防ごうとしたが、坂本の打ち込みは速すぎた。


「無効!」


岡崎が顔を横にずらしたが面が大きく揺れ、衝撃が頭に響いた。観客席からどよめきが上がる。


「くそっ……!」


岡崎はすぐに体勢を立て直し、竹刀を構え直す。


坂本の構えは、まさしく北辰一刀流の特徴を備えていた。

剣道の型に収まらない、その流儀の奥深さ。


北辰一刀流には、居合術の技法も含まれている。

納刀状態から一撃で相手を仕留める技術、それは幕末の志士たちが暗殺や護身のために磨いたものだった。


「……なるほどな。」


岡崎は竹刀を構え直しながら、坂本の剣の流れを読もうとした。


今の一撃をもらったのは、速さに圧倒されたからだ。次は、捉えなければならない!


「はっ!」


今度は岡崎が先に動いた。

彼の竹刀が坂本の小手を狙うが、その瞬間、坂本は竹刀を鞘に収めるような動きを見せた。


「なっ!?」


次の瞬間、坂本の竹刀が一閃し、岡崎の胴を捉えた。


「胴あり!」


観客席から歓声が上がる。岡崎は信じられない表情で、坂本を見つめた。


「いまのは……居合術の動き……!?」


「気づいたか? これが北辰一刀流の真髄ぜよ。」


坂本は余裕の笑みを浮かべ、竹刀を肩に担ぐ。


「まるで幕末の剣士みたいだな……。」


岡崎は悔しそうに拳を握るが、同時に坂本と自分との実力の差を認めざるを得なかった。

観客席からは、悲鳴のような歓声が上がる。


「洋介ーー!!!」

伊藤美香が立ち上がり、叫んだ。

「負けないで! 絶対に坂本に、なんか負けちゃダメ!」


「おおっ! これはまるで恋愛ドラマのような展開……!」

クラスメイトたちがざわめく中、岡崎は竹刀を握り直した。


(まだ終わってない!)

岡崎の目が燃え上がる。


「次の一本で決めるぜよ。」

坂本が再び構えた。


幕末の剣士たちが命をかけた北辰一刀流の剣と暗殺武術の剣が、現代の高校剣道場で再び交錯する!

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