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雨のち異世界転生  作者: 松下 咲郎
第一章 始まりの家、終わってる村
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第二話 4月13日

歩くのはいい。音楽を聴きながら、友達と話しながら、家族と話しながら、ゆっくり歩くあの時間がいい。1人でもいい。1人でゆっくり歩くといろんなことが浮かぶんだ。あれもやりたいこれもやりたい、無限のように可能性が広がって、見てる空が優しく微笑んでるような気がする。だから歩くのはいい。


「え、冷静にさ。あんたばかなの?」

「うっせー、理由があんだよ。」

立ち上がる炎とドロドロに溶けた何か、もはや人が発したのかもわからない発狂。赤と黒と茶色と人間、綺麗な色は何もない。

「いや、だってせっかく後100回だったのに、人殴って罰則10000回って、、あんた馬鹿なの?」

「そりゃ俺も殴ったら罰則つくくらい分かってるつーの。」

「じゃあなんでやっちゃったのさ?」

肺を業火が焼き、体を針が突き刺し、届くはずもない心に痛みと恐怖が襲いかかる。しかし、

「そいつがな、どうせ地獄に来るんならもっと殺しておけば良かったなんてぬかしやがったから。」

「、、」

「どうしてそんな考えになっちまうんだろうな。同じ人間なのに。」

しかしこの2人にその全ては当てはまらない。彼らには痛みや苦しみは何も届かない。、、否。逆である。全て届き、全ての痛みを味わった上でこの2人はそれを受け入れている。

「まぁあっちの世界はあまりにも濁ってたからね」

「でも濁ってたというにはあまりにも美しすぎた。」

世界を愛している。

「そうなんだよねー、どうして私たちは、美しい世界を汚れた目でみないといけなかったんだろうかね」

「そうだな。世界は美しいんだよ。汚れていたのは、濁っているのは常に俺たちで、世界じゃない。」

2人は歩く。悔しさも後悔も全て置き去りにして――

「じゃあせめて次は、、、美しい世界を、優しい愛で見てみようかな」

「そうしたいな。」

「ま!気軽に行きましょってやつですわ!」

「はぁ、、まぁ、そうなんだけどな。なんせ、」

「なんせ、僕たちはもう」

「「自由なんだから」」

ここは地獄。世界で罪を犯したものが己を改める場所。そして全てが始まるスタートライン。

今その地獄を2人は歩いている。



ーー時は流れ。律は地獄での職務を終えた。ーー

「はい。お疲れ様でした、地獄での職務1億回終了でございます。」ーパチパチ

「え?終わり?ですか?」

冷静に早すぎる。あれ?一億回ってそんなもんなんだっけ?

「あまりそういった反応をされる方がいませんので、分かりませんが、終わりですよ。」

たしか、良くんと一緒に地獄のクレープを食べていたような。

「地獄のクレープを食べている時にこちらへお呼びしました。ほら今も口にドロッとクリームが。」

「あー、これはしっけい!」ーペロリ 

どうやらこちらの思考は読まれているらしい。

あまりいい気はしないが、しょうがない。

それよりも、ここは、ーー

「ここは世界の狭間です。唯一現実世界へと行けるところでございます。」

どうりで、何の面白みもなー、

「ごほん、それで、ここでは何をすればいいんですかね?」

さっきまでの地獄とは異なり、真っ白でそれ以外の色が何もない。黒ばっかり見ていたから、目がチカチカする。

「ここでは、異世界へ行くための手続きをしていただきます。」

「ほう。」

「異世界ではまず何になりたいか。そしてどんな能力を得たいか、全てここで、決定します。」

なるほど、ここが生と死の狭間で、異世界へのエントリーを魂返還の法則を利用して、、いや、あんま考えなくていいか。

「それじゃあお姉さんのスリーサイズは?」

「はい?」

「いや、スリーサイズ。」

「失礼ですが女性ですよね?」

「うん?いやすごい実りある体つきしてるから何なのかなーって思って!」

「えんまさん、またすごいの押し付けてきましたね。」

「ん?なんて?」

「いえ!なんでもございません。あー、しかしですね、スリーサイズを聞くと他のことが聞けなくなる決まりでして。」

「また変なきまりだね」

「決まりですので」

「まぁじゃあしょうがないかなー」

とまぁつかみはこれくらいにして、

「それじゃあ僕は異世界へ人間のまま行くことを希望するよ」 

「人間のままですか。承知しました。なかなか、お強いんですね」

「まぁーね!自由に生きたいので!」

「それでは、能力の方はいかがなさいますか?」

「そのことなんだけどさ、能力は要らないから、今の記録を全部引き継いで欲しいんだー!」

「、ふぅー。」

お姉さんの態度が少し変わった。

今までは無愛想だった顔が、これからの決意を問うような、不安そうに我が子を見守る親のような顔に変わって、そして聞いた。

「いいんですか。地獄での記録も引き継がれますよ。あの苦しみが、体に染みついたままで、新しい人生を始めるってことなんです。それでも?」

「それでも、今の僕を殺して、新しい私になるのは嫌だ。」もう、自分を曲げて、他者に合わせるのはこりごりだ。なんのために自分が生きてるのかわからなくなる。だから自分で決める。

「はぁ、そうですか、、わかりました。設定させていただきます。」

白い世界に縞模様が走り、それが読めはしないが、言葉だということだけはわかる。黒と白、またチカチカする。

「そしてですね、あちらの世界では、律さんは赤ん坊と、成人としてと、生まれ方を選ぶことができます。」

「そりゃ赤ちゃんから一択でしょ、なんか成人からってもったいなくない?」

「また独特な考え方ですね、赤ちゃんは見るから可愛いのではないですか。」

「んん!いや!わかるよ!?あのなんとも言えない愛くるしい顔!おてて!ぼでぇい!めちゃ可愛い!!最高!」

「何もそこまで言えとは。やっぱ根が変態なのかな。」

「赤ちゃんを可愛いと思わないやつなんて生き物じゃないでしょ」

「あ、今の時代、それ人権侵害らしいですよ。まぁ、おっしゃる通りですけど。」

「あーー!うっさいな!元の世界のめんどくさくなってきたとことを掘り返すな!、今はそれで落ち着いてんだから!」

やはり人と話すのは楽しい。

地獄で学んだことの一つである。

「、あ、あと気になっていたのですが、律様は、いわゆる『タジュウジンカク』というやつですか?一人称が変わっておられましたので、」

「ん?あー、なんか癖でね?あのおっさんが見てたアニメが私とか僕とか、なんか女の子しか出て来ない系のやつで、なんかしかも、あ?あ?あん?あん?みたいな、、、」

「律さん。それ以上は結構です。なんかすみません、」

「いやいいんだけどね?でー、やっぱ変?かな?」

「どちらかに統一されてはどうですか?」

縞模様は消え、全てを設定し終えた女は、律にたわいもない話をする。

「んー、じゃあ、わたしを略してワシで」

したかった。

「そろそろ尺が長いので転送します。勝手にやってください。」

ーーその瞬間、白い世界はひび割れ、その破片が、割れ目が色づいて、久々に見る青や緑といった、世界の美しい色たちが息を吹き返しす。そして律を再び歓迎し、そのまま飲み込まれていくかの如く、白を世界の色が埋め尽くしていく。

それに律は心が踊った。ーー

「いやせめて!その!わしがいいのか悪いのかだけでも!」

「まぁ自分で決めたらいいんじゃないですか?なってったって、」

「「自由だから」」

「ですよねw」

いよいよ律の体は薄くなり、あと刹那の時間しかここにはいれないことを理解させる。

「あー!お姉さん!本性表したな!もうお土産買ってきてやんねー!クソ野郎ー!元気にしろよ!」

怒ろうとしたのか感謝を伝えたかったのか、もうこの数十分で感情が動きすぎて何が何だかわからなくなってしまって、もうなんかどうしようか、そう律は思ったので、

「まぁとにかくありがとう!行ってきます!」

原点に戻り、感謝で別れることにした。

ーー世界は上下から引っ張られ、律はそのねじれへと吸い込まれ消えていく。そして主人を入れた世界の扉はまた閉じるーー

「最後に心配して、感謝してどうするんですか。」

そこに残るは女だけ。

似たような男が地獄に行く前にいたが、その男とはまた違う。本当に1人だけの女に、今という時間は

「まったく、楽しい時間でした、ね。」

楽しい時間だっようで。


ー律が生まれる15分前。ー

草木が生い茂り、生物が多様にいる。それは人間が強奪し、身勝手に管理することで残してきたもの。

だから夜の山には、風と虫が奏でる音しか聞こえない、はずだが、

「ぅゔ生まれそうー、!!」

「そうなのか!頑張れー!!」

この山には望まぬ二つの異なった声音が轟く。

「うぅー!苦しい、よぉ!」

「おぉー!!頑張れ!!あ!ほら!今ちょっと頭が出てき、ては、ないかもだけど!あとちょっとかもだから!」

「そう言うのが1番!!イライラ!す、る、から!」

「んー!!じゃあ!、が、がんばれ!」

「うぅー!!ん!!」

だがなぜか、虫も風も全ての生命が、この瞬間だけはそれを許す。生まれる瞬間というのはそれほど尊い。

故に、その子がこれからどう生きようが、その命の尊さは変わらない。

「もう無理ぃ!死にそう!!」

「死んだら、また一緒にトランプ出来なくなるよ!!いいの!?」

「トランプしたぁい!!」

「だったら踏ん張れ!!」

死んでもなお、尊く、結局、優劣なんて初めからない。

「あ!!今度こそ!頭!頭出てきたよ!」

「本当!?あと少し!ー!」

だったらなぜ、認められず、奪い、争うのか。

その答えを言う前に。

「おんぎぁー!!(ってやつだよな)」

今は先に祝うべきことがある。

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