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30本目の世界線  作者: 大原英一
雷鳴
22/32

21本目

 2016/4/1 21:38


 消えた。青木岳人が、一瞬にして。アタシたちが山田一郎の部屋を出て、まだ10分くらいのことだった。

 アタシと青木は駅へ行こうとしていた。とりあえずアタシのねぐらが無事かたしかめるために。

 となりを歩いていた青木は、まるでマンガのように、音もなく夜の(とばり)に消えて行った。もし彼から目を離していたら、彼がバックレたのかと疑っただろう。


 アタシは走った。もときた(みち)を疾風のごとく駆け抜けた。

 青木が消えた、てことは、彼は死の運命が待っている【世界線1】に戻ったのかもしれない。つまりトリガーが発動した……。

 考えられる事態はひとつだけ。誰かがあの部屋で卒業アルバムをひらいたのだ。

 青木本人がその行動を採らなくてもトリガーが発動するなんて、正直その発想はなかったわ!


 部屋を出るとき鍵はかけなかった。山田の持ち物にはいっさい手をつけないという青木の意見にアタシは賛成した。

 その選択が裏目に出たらしい。まあ、かりに鍵をかけたところで、卒業アルバムが存在するかぎりいずれおなじ結果になった可能性はある。


 山田のアパートに着いた。アタシは息を整えつつ警戒した。

 もし誰かが悪意を持ってトリガーを引いたのだとしたら、そいつは青木の敵かもしれない。アタシにとっても敵かもしれない。

 アタシたちがさっきまでいた204号室に明かりが点いていた。部屋を出るとき電気は消したはずだ。誰かがいるのは、まちがいないようだ。


 ドアをノックすると、すぐに人が出てきた。女性だった。

「あの……どちら様でしょう」

「夜分にすみません。私は、山田さんの同僚で水戸と申します」

 なりすましはお手のものだ。さっき青木から山田一郎の社員証を見せてもらったので社名も憶えている。


「じつは、山田さんが会社を無断欠勤しているので、心配になって様子をうかがいにきました」

「そうですか……。わたしは今日、彼と会う約束だったんですが、どうしても彼が電話に出てくれなくてここへきました。鍵がかかっていなかったので、部屋で待つことに」

「あなたは、その……山田さんの彼女?」

「はい。山田花子といいます。……あ、まだ結婚はしていなくて、彼とは偶然おなじ苗字なんです」


 うわ、山田花子きた。もしかして彼女が、この世界でアタシに取って代わる存在なのだろうか。

 アタシは得意の貧血大作戦に出た。玄関口で急に(うずくま)る、誰もが心配でたまらなくなるあれだ。

「ちょっと、大丈夫ですか?」

「……ええ。お水をもらっても、いいかしら」


 それでまんまと部屋にあがることに成功。卒業アルバムが開かれているか、どうしてもたしかめたかったのだ。

 やはり、それはベッドの上で開かれていた。山田の恋人・花子が手持ち無沙汰にやったことなのか……。

 とりあえず、これが確認できればもうこの部屋に用はない。速攻で仮病が治ったアタシはここを辞することにした。

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