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30本目の世界線  作者: 大原英一
雷鳴
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18本目

「なに、いまの」

 オレのうしろで多々木探偵が言った。稲川淳●みたいな言い方だった。

 ドア(ぎわ)にいた芽衣さんもびっくりしてオレらを振り返った。てことは、彼らもおなじ光を見たのだろうか。あの閃光を。

 ドアを開けて事務所に入ってきたのは、ひとりの老女だった。


 その瞬間、オレのなかで記憶がフラッシュバックした。

 オレはこの老女と会ったことがある。たしか年明けだったか……オレにヘンな予言をしてきたババアだ。

 いまにして思えば予言は当たっていた。それは水戸さんの来訪を告げていたのだ。

「おばあちゃん!」「吉田さん!」

 探偵と芽衣さんがほぼ同時に叫んだ。だいたい予想はしていたが、このローブを着た老女こそがつまり、めんそーれ吉田なのだろう。


「どうしたの、吉田さん。ハワイ(ワイハー)じゃなかったの?」

 多々木さんが聞いた。

「その心算じゃったがの。未来のワシからメールがきて、ヴァカンスは中止じゃ、エイプリルフールに探偵を訪ねよ、てなわけできた。芽衣、お茶を淹れておくれ」

「あ、はい!」

 シンクに立つ芽衣さんを尻目に、老女はオレのとなりに座った。おなじソファに。


 探偵がオレを見ている。オレはうなずき返す。

 そう、これこそがメールによる過去改変なのだ。オレがこれまで彼にしてきた荒唐無稽なお話が、いま吉田によって証明された。

「……まあ、いいか」多々木さんは気を取り直して言った。「吉田さん、紹介します。青木くんです」

「はじめまして。いい(おとこ)じゃの」

「いや、はじめましてじゃないでしょう……。オレを憶えていませんか?」

「はて」


 ウソでしょ。オレを忘れちゃったのか、このバ……お方は。

「え、青木くん、吉田さんをしっているの?」

「お名前は存じませんでしたが……会ったことがあります」

「いや、ワシはしらん」

 吉田があくまで言い張るので、オレは年明けに彼女から予言を受けた件について話した。だが、


「ワシは軽々しく予言したりなどせん。もし予言したのであれば、その相手のことを忘れたりはせん。ぜったいに、じゃ」

 この吉田という占い師がウソを言っているとは思えなかった。すると、やはり世界線が変わったのか……。オレは探偵に提案した。

「多々木さん、これまでの経緯を吉田さんに説明しようと思うのですが」

「そうだな……吉田さん、この青年の話を聞いてやってもらえるかな」

「うむ。いい(おとこ)じゃの」


 またそれか……。ちょうど芽衣さんが占い師にお茶を運んできたところだ。そのまま彼女は向かいのソファの、探偵のとなりに座った。

 ふと思いついて、オレは水戸さんお得意の世界線年表を(こさ)えることにした。彼女がそうしたように、オレもスマホのカメラで画像(キャプチャ)を撮ってあった。

 芽衣さんから紙とペンを借り、キャプチャを参考にして時系列を書き込んでゆく。あらたに得た情報は随時追記した。

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