18本目
「なに、いまの」
オレのうしろで多々木探偵が言った。稲川淳●みたいな言い方だった。
ドア際にいた芽衣さんもびっくりしてオレらを振り返った。てことは、彼らもおなじ光を見たのだろうか。あの閃光を。
ドアを開けて事務所に入ってきたのは、ひとりの老女だった。
その瞬間、オレのなかで記憶がフラッシュバックした。
オレはこの老女と会ったことがある。たしか年明けだったか……オレにヘンな予言をしてきたババアだ。
いまにして思えば予言は当たっていた。それは水戸さんの来訪を告げていたのだ。
「おばあちゃん!」「吉田さん!」
探偵と芽衣さんがほぼ同時に叫んだ。だいたい予想はしていたが、このローブを着た老女こそがつまり、めんそーれ吉田なのだろう。
「どうしたの、吉田さん。ハワイじゃなかったの?」
多々木さんが聞いた。
「その心算じゃったがの。未来のワシからメールがきて、ヴァカンスは中止じゃ、エイプリルフールに探偵を訪ねよ、てなわけできた。芽衣、お茶を淹れておくれ」
「あ、はい!」
シンクに立つ芽衣さんを尻目に、老女はオレのとなりに座った。おなじソファに。
探偵がオレを見ている。オレはうなずき返す。
そう、これこそがメールによる過去改変なのだ。オレがこれまで彼にしてきた荒唐無稽なお話が、いま吉田によって証明された。
「……まあ、いいか」多々木さんは気を取り直して言った。「吉田さん、紹介します。青木くんです」
「はじめまして。いい漢じゃの」
「いや、はじめましてじゃないでしょう……。オレを憶えていませんか?」
「はて」
ウソでしょ。オレを忘れちゃったのか、このバ……お方は。
「え、青木くん、吉田さんをしっているの?」
「お名前は存じませんでしたが……会ったことがあります」
「いや、ワシはしらん」
吉田があくまで言い張るので、オレは年明けに彼女から予言を受けた件について話した。だが、
「ワシは軽々しく予言したりなどせん。もし予言したのであれば、その相手のことを忘れたりはせん。ぜったいに、じゃ」
この吉田という占い師がウソを言っているとは思えなかった。すると、やはり世界線が変わったのか……。オレは探偵に提案した。
「多々木さん、これまでの経緯を吉田さんに説明しようと思うのですが」
「そうだな……吉田さん、この青年の話を聞いてやってもらえるかな」
「うむ。いい漢じゃの」
またそれか……。ちょうど芽衣さんが占い師にお茶を運んできたところだ。そのまま彼女は向かいのソファの、探偵のとなりに座った。
ふと思いついて、オレは水戸さんお得意の世界線年表を拵えることにした。彼女がそうしたように、オレもスマホのカメラで画像を撮ってあった。
芽衣さんから紙とペンを借り、キャプチャを参考にして時系列を書き込んでゆく。あらたに得た情報は随時追記した。




