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30本目の世界線  作者: 大原英一
雷鳴
10/32

9本目(★)

「あ、ヤバっ」

 水戸かず子がいきなり言った。それからテーブルに肘をつき、髪をわしゃわしゃと混返(まぜっかえ)しながら、

「ヤバいヤバいヤバいヤバい……」と連呼した。

「こわいこわいこわい。何だよ、いきなり」

 オレは不安になって聞いた。この不安定な世界で唯一の()りどころである彼女が取り乱すとかマジでビビる。

「おなじよ……アタシも、あなたと」

「何が」

 それには答えず、彼女はふたたびペンを執った。先ほど書いた【世界線1】の項目に何やら追記している。


********************

【世界線1】

 2017年3月31日に青木が消失した世界。荷物が届けられた世界。

(追記)

 2016年4月1日。水戸、任務で青木宅を訪問し荷物を届ける。その後、青木とともに世界線2へ移動。


【世界線2】

 本来、青木が存在しなかった世界。山田一郎というダミー(?)。

********************


「これがどういうことか、わかる?」

 ペンを置くと彼女はオレに聞いた。

「だから……ふたりして【世界線2】へ移動したってことだろ」

「【世界線1】からね。結果、あなたはどうなった?」

「……居場所がなくなっていた」

「それとおなじことがアタシにも起こり得るってわけ」


「いやいやいや、ちがうだろ。アンタは2016年から2017年へ行き、また2016年に戻ったんだ。もとは【世界線2】にいたんだよ」

「希望的観測、てやつね。アタシにもそう考えていた時期がありました」

「逆に、なんで【世界線1】にいたと思うんだよ……あ、」

 恥ずかしいノリツッコミみたいになってしまった。そうか、そういうことか。

「気づいたみたいね。そう、アタシは組織からあなたのことを聞いていた。あなたが存在していた世界線、てことは1でしょ」


「マジか……。最悪、ふたりともホームレスかもな」

「予定変更でわるいけど、アタシ、いったん独りで帰るわ。家に山田一郎ならぬ山田花子がいるかもしれないから、たしかめる必要がある。あなたはとりあえず、この部屋で山田一郎さんのことをしらべて」

「でも大丈夫かな……。山田氏の友だちとか彼女とか、ここへくる可能性あるよ?」

「これを渡しておく」

 言って彼女は腹部から何かを取り出した。ドラ●もんか。


「え、なに、どうやったの?」

「ビビりすぎよ。使い方を説明するから」

 彼女が差し出したそれは、ゆうたら催涙ガス噴射装置だった。印鑑くらいのサイズで、かちっとやるとブワッて出るらしい。長嶋(ミスター)みたいな説明でスマン。

 ようするに、この山田一郎の部屋にいることをオレが咎められた場合、これを使ってバックレろということだ。

 まあ、そうそう使うことはないと思うが、いざという場合の備えにはなるだろう。にしても、こんなスパイ道具らしきものまで持っているのかこの女は……。


 状況がわかったらまた連絡するわ、そう言って彼女は部屋を出て行った。

 正直、二度と彼女に会えないんじゃないかという不安はあった。だがここは信じるしかない。何と言ってもオレらは世界にふたりしかいない漂流仲間なのだから。

 ちなみに秘密道具は腹ではなくベルトに仕込まれていたらしい。そりゃ、ま、そうか。

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