24話
「よし……」
南野緑田の口元から笑みがこぼれた。
胸が激しく高鳴る。
生まれて初めて手に入れた本物の魔道具。これに魔力を込めるだけで、目の前で超常現象が引き起こされるのだ。
「ふふ……」
通りかかる人々が怪訝な顔で視線を向けてくる。安っぽい服装、痩せこけた頬、そして危険な光を宿した目の若者が、カエルの顔が大きく刺繍された派手な肩掛け鞄を抱えて不気味に笑っているからだ。
治安の悪いこの泥棒市には危険な人間がごまんといたが、今の緑田の浮き立ちぶりは別格だった。
(九千ゴールド……。ただの鞄にしては高い買い物だったが、これほど優秀な魔道具を手に入れられたと考えれば安いものだ。
本当はもう少し値下げ交渉をしたかったのに、店主のババアが途中で聞こえないフリをし始めやがって……まあいいか)
◇
名称: カエル鞄のストレージ
概要: 肩掛け鞄
効果: 物を吸い込んで収納し、自在に取り出すことができる。収納容量は27立方メートル。ただし取り出す際には、リンゴ一個、またはそれに相当する重量の虫を与えなければならない。
危険度: 0 / ランク: 3
◇
手に入れたこの魔道具には、色々と検証すべき課題があった。
一、どの程度の魔力を消費するのか
この世界では常識だが、限度を超えて魔法を使えば気を失い、最悪の場合は死に至ることもある。緑田自身は『開示』の能力でそこまでの危機に陥った経験はないが、用心に越したことはない。有能な道具であればあるほど、比例して魔力の消費量も増えるはずだ。
二、どのくらいの大きさのものまで収納できるのか
表示された収納容量は27立方メートルだが、それと同じ大きさのものをそのまま丸ごと飲み込めるわけではないだろう。想像通りなら、収納できるのはこの鞄の『口の大きさ』までのはずだ。となれば、大人の頭ほどのサイズが限界か。もし小さな物しか入らないのだとすれば大問題だ。
三、収納した物の重量はどうなるのか
これについても見当はついていた。詰め込めば詰め込むほど鞄自体が重くなるはずだ。重さに耐えかねて鞄の底が破けてしまえば、元も子もない。
『彼を知り己を知れば百戦殆からず』
この過酷な世界を生きていくために、まずはこの魔道具の性能を限界まで把握する。
緑田は道端に落ちていた石ころを拾い上げ、心の中で強く念じた。
(『収納』……!)
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