21話 ~朝顔~
荷物をまとめて安宿の一階にある受付へ向かった。
「ひでえ顔してるぞ。大丈夫か?」
宿の店主が眉をひそめて声をかけてきた。顔つきは悪人そのもので言葉もぶっきらぼうだったが、根っからの悪い人ではなさそうだった。
「……大丈夫です」
軽く頭を下げて鍵を返し、安宿を後にする。
この宿は素泊まり前払いで二千五百ゴールドだった。あの家から持ち出せた金は、全部で八万ゴールド。正直もう少しあるかと期待していたのだが、どれだけ探しても見つからなかったのだ。できれば今日中に何か稼ぐ手段を見つけなければならない。
「公園にでも行くか……」
特に用があるわけではないが、他に行けるあてもなかった。ふらふら歩きながら通りに出ると、朝の活気が街全体を包み込んでいた。
「あんちゃん、飯でもどうだ?」
屋台で大鍋の前に立つ、ねじり鉢巻きのおっさんが声をかけてくる。
「飯か……」
食欲は湧かない。だが、何か腹に入れておかなければ体が保たないことくらいは分かっていた。
「美味い美味い、特製肉団子スープだよ! パンと一緒に食えば一日中稼げるぞ!」
大きな鍋の中で、肉団子スープがぐつぐつと煮込まれている。
「っぐ……っ!?」
次の瞬間、強烈な吐き気が襲いかかり、俺は小走りでその場を離れてその場にしゃがみ込んだ。
「なんだおい、大丈夫か?」
喉の奥から激しく込み上げるものがあったが、ここ数日まともに食べていない胃袋からは、苦い胃液がわずかに吐き出されるだけだった。
肉団子スープ——あの時、あの家に毒キノコを混ぜて食わせた料理と同じだ。そうだ、あの時とまったく同じ匂いがする。体が拒絶反応を起こしていた。
それでも………緑田は胃液を飲み飲んだ。
「……ひとつくれ」
立ち上がり、力強い眼差しで言った。それでも、生きていかなければならない。なんとしてでも……。代金を払い、必死の思いで腹の中へ流し込んだ。
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