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17話 ~甘えんぼ~

 



 緑田は叫んだ。声が擦れるまで叫び続け、声が出なくなってからは嗚咽した。


 冷たくなった黒丸の身体を抱きしめた。カチカチに固まったその身体からは、生命の温もりなど微塵も感じられなかった。


 犯人は、すぐに分かった。エマだ。


 黒丸のすぐ脇に残された吐しゃ物の中に、見覚えのある「害獣用の毒餌」が混ざっていたからだ。あの女が、黒丸の通り道にわざと仕掛けたに違いない。


 もちろん、俺は黒丸の存在を誰にも話していなかった。だが、あの女がカーテンの隙間から、外にいる俺を頻繁に覗いていたことを知っている。俺が何かヘマをしないか監視していたのだ。そして黒丸の存在に気づき、毒殺した。


 理由はただの嫌がらせだ。あの女は、俺の苦しむ顔を見るのが楽しくてたまらないのだから。


 声が潰れるほど泣き叫び、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながらも、俺の頭は冷酷に冴え渡っていった。


「死にたい」「殺したい」


 毎日そう思いながらも、俺は一度だって実行に移さなかった。そんな度胸もなかった。


 甘えていたのだ。いつか誰かが助けてくれるのではないか。自分は異世界からやってきた特別な存在なのだから、いつか能力が覚醒して逆転できるはずだ――どこかでそう高を括っていた。


 流れる涙とともに、世界が塗り替わっていく。


「殺したい」ではない。「殺す」のだ。


 失敗してこちらが返り討ちに遭ったって構わない。殺す。殺す。殺す。絶対に、あの家族を殺す。


 朝日が昇る頃には、俺の心から迷いは消え去り、恐ろしいほど澄み渡っていた。


 ――『開示(青)』


 進化を遂げたこの力こそが、俺の殺意を現実にする武器だ。

 スキルとは神からの贈り物だという。ならば俺は、神からもらったこの力で、奴らを殺すことに決めた。


 黒丸と同じ死に方を与えよう。






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