死後の誕生
状況説明回
山城国西岡
永正7年(1510年)
とある商家で男児が誕生した
その子供の名は久秀、松屋の主、松永重久の長男だ
松永家は日蓮宗を信仰していた
そのため、近くの本山である妙覚寺に赴くのだった
(ん、ここはどこじゃ? 儂はあの絶望的にな状況から生き残ってしまったのか!)
しかし、彼はあることに気が付いた
(どういうここじゃ、喋れぬ、それに……ま、まさか! 父、母だと!!!!!!!)
父と母、彼にとって両親は独り立ちする前に旅立ってしまった者達だった
この時期に彼らが浄土へ旅立ってしまった事が、彼が商家をやめた原因でもあり、続けることができなかった原因でもある
(ど、どういうことなのじゃ! 物の怪に化かされておるのか……)
しかし、化かされていないことは薄々と久秀は気づいていた
(むむ……考えていても仕方がない、それにこの道は……妙覚寺か、懐かしい)
妙覚寺の記憶は彼との記憶でもある
(庄五郎、おぬしは凄いやつだったのう、おぬしがまいた種は子が大木にしよった)
庄五郎とは斎藤道三の父、松波庄五郎のことだ
(さて、寺についたな。ああ、儂は今日生まれたのだな)
久秀は寺に来ていた意味を察し、その意識を落としたのだった