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ファンキー・ロンリー・ベイビーズ  作者: 清泪(せいな)


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第21話 ジャズ・ロックを叩いて渡る 4

 飛び膝蹴りが入り勝が着地しようとした瞬間、仰け反っていたティホンは左腕を振りかぶった。

 片膝をつき上半身は仰け反り力の入る姿勢では無かったが、勝はまだ爪先がついたぐらいで身体は宙に浮いている状態だったので、ティホンのそのラリアットに身体を吹っ飛ばされた。

 コの字に置かれた高級ソファーに再び叩きつけられる。

 革張りのソファーはクッションが効かず、地味に身体を痛めつけた。


 ティホンは鼻の辺りを赤くしながら立ち上がった。

 テーブルのぶつかった左足を睨み少し上げると、絨毯を強く踏み込んだ。

 勝もすぐに立ち上がった。

 ラリアットを受けた右腕が痛みに痺れていたが、左手で身体を押し上げてソファーの上に立った。

 175cmの勝はソファーの上に立っても、まだティホンよりも低かった。

 

 ティホンの右腕がまっすぐ勝の顔を目指して伸びる。

 殴りにかかるのではなく、手を開いて掴みに来ている。

 アイアンクローだ。


 ティホンの手の動きに合わせて、勝は上半身を後ろに倒した。

 両手でティホンの太い腕を掴む。

 両足を蹴りあげて飛びつく。

 勝の重量にティホンの身体が前屈みになる。

 蹴りあげた勝の左足がティホンの後頭部を叩く。

 前屈みになったティホンの身体が加速する。

 右回転に身体を捻る勝。

 巻き込む様にして、ティホンが前転しガラスのテーブルの上に大きな音をたて倒れた。

 高級ソファーの上で倒れ込むようになった勝は、そのまま身体で掴んだティホンの右腕の関節を極めた。

 飛びつき腕十字。

 以前一度だけ見たことのあった技で、咄嗟に身体が動いた。


 ティホンは苦痛の声を漏らした。

 何をされたのか一瞬わからなかった。

 気づけば天井を見上げ、腕の関節を極められている。

 後頭部のダメージは大したことはない。

 前に倒すために押された程度だ。

 ダメージは、倒れて叩きつけられた背中。

 頑丈そうなガラスのテーブルがミシミシと音をたてている。

 ティホンの体重以上の衝撃が、テーブルとティホンの身体にかかっている。


 勝の左手がティホンの手首を捻った。

 ぎちっ、と音が鳴る。

 今度は声を漏らさず、ティホンは勝を睨みつけた。


 さて、どうしたものか。

 勝は次の手を悩んでいた。

 飛びつき腕十字を見たのはグラップル羽姫の一試合だった。

 試合なので、飛びつき腕十字が極ったらすぐに相手がギブアップして試合が終了した。

 しかし今はスポーツマンシップに則った健全なる試合などではない。

 手首を捻った程度で相手が降参を告げるとは思えない。

 告げられても言葉わかんねぇけど。

 ならばいっそ折りにいくべきか。

 勝の思考は急拵えだった為、一歩遅かった。


 先に動いたのはティホンだった。

 捻られた右手を開いて閉じて握りしめ、勝の身体ごと持ち上げた。

 ティホンの右腕の血管が太く浮き上がる。

 右肩あたりの筋がぎちぎちと音をたてる。

 45度程右腕を上げると、今度は勝の身体をソファーに叩きつける為に右腕を降ろした。

 一度、二度、三度。

 持ち上げては降ろして、勝の身体を叩きつけた。

 耐えれず勝の手が離れる。

 ティホンはもう一度腕を上げて、ソファーに倒れる勝に振り降ろした。

 叩きつけられた痛みにもがきながら勝は左足を伸ばした。

 伸ばした足、左足の踵がティホンの顎を蹴る。

 力の入らない蹴りはただ当てただけに過ぎなかったが、それでもティホンの腕が再び振り降ろされるのを止めるには十分であった。

 勝は左向きに転がり、ソファーから落ちるようにして通路に逃れた。

 仰向けに倒れた身体を起こすのに激痛が走る。

 身体の正面も背面も叩きつけられて、強い痛みと熱を持っていた。


 顎を蹴られたティホンは一瞬の隙に勝に逃げられた事に舌打ちをして、上半身を起こした。

 ガラスのテーブルがミシミシと音を立てる。

 僅かに眩む頭を横に振り、立ち上がった。

 逃した勝を追いかける様に振り返る――よりも先に足のふくらはぎに何かがぶつかる。


 何が?


 決まっている、ガラスのテーブルだ。

 ティホンが立ち上がるタイミングを待っていた勝が再びテーブルを蹴り押したのだ。

 予期せぬ衝撃にバランスを崩し、再び仰向けにテーブルの上に倒れるティホン。

 テーブルのミシミシという音が一層強く鳴る。

 頑丈なガラスのテーブルにヒビが入る。

 ティホンの目に映るのは、天井、そして、振り降ろされる脚。

 勢いよく振り降ろされた踵がティホンの鳩尾に突き刺さった。

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