表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】へなちょこリリーの惚れ薬  作者: 水樹みねあ
第三章 雨の古城
8/36

第08話 再会

■ 

 目を覚ますと、まだ夜明け前だった。


 ベットのから天井を見つめる。私の世界は、ここだけ。

 ノア様には一度会っただけ。


 目を閉じると、瞼の裏にあの人の姿が浮かぶ。

 暗闇の森に、浮かび上がるような銀色の髪をしたその人は、紫色の瞳をしていた。

 名前も聞いた。

 名前も名乗った。


 ただ、それだけ。なのに、いてもたってもいられず、私はまた学校を休んだ。


 学校へ向かう時間よりも早く、ローブをまとって森へ向かう。

 スカートのすそが、朝露に濡れた。



 道は途中で二手にわかれていた。

 左の道を進む。


 川沿いの道は涼しくて、どんどん歩けた。

 しばらくすると、森の先にぽっかりと空き地があらわれた。

 空が広い。カモミールの白い小さな花が一面を覆っている。


 ほかにも白や黄色の百合がたくさん咲いている。


 少しだけ摘んでいこう。

 ひょっとしたら、またあの人に会えるかもしれないし。

 そんな保障はどこにもないんだけど。

 この先の湖まで行ってみることにする。


 ちょっとだけ、のつもりが、かごいっぱい百合を摘んでしまった。

 気づくと、空には雲が出てどんよりとしている。

 日が陰っている。湿った風が髪を揺らした。

「……帰らなきゃ」


 雨が来る。

 まずい。




「リリー?」

「……ノア様?」

「どうしたのこんなところで」


 鬱蒼と茂った森の間から、突然、姿を現したのはノア様。


 信じられない!

 ウソみたい!


 また会えるなんて……。


 彼はかごを指さして「百合を摘むためにこんなところまで?」と微笑んだ。

「はい。本当はもう少し遠くまで行くつもりだったんですけど」

「遠くって」

「この先の湖まで」

「何しに?」


 予定なんてない。

 あなたに会えればと、ぼんやり思っていただけ。


「また逢えたらって思ってた」

「……私に? 嬉しいよ」



 この人の微笑みはまるで魔法だ。何も言えなくなる。


 サァ……と雨が、風に乗って降り始めた。


「大変だ、リリー、こっちへ」

「えっ、あっ、はい!」


 ぎゅっと手を握られ走り出す。

 あたし、今、手をつないでもらってる……。



 たどり着いた先は、彼の城だった。

 だいぶ古い城らしく、壁はところどころ崩れていた。

 ギィィーと、鉄の扉を開けて駆け込む。

 大広間の先の階段が左右に二つ。



 二人とも髪も服もびしょびしょに濡れてしまっている。

「ごめんね」

「えっ」

 白い肌に、アメジストのイヤリング。

 同じ色の瞳がすぐそばにある。


「さらってきちゃった」


 あたしは。

 目をそらせずに、立ち尽くした。



 かごから、一輪、百合の花が落ちた。

 音もたてずに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ