第07話 Part Of Me
家に帰ると、おばあちゃんにコッテリ怒られた。
「何時だと思ってるんだい」
「森で迷ったの。……ごめんなさい、おばあちゃん」
「出かける時はどこに行くかぐらいは言いなさいといつも言ってるだろう」
遅い夕食を済ますと、おばあちゃんが言った。
「リリー、あんた学校はどうするんだい?」
「だって……。行っても仕方ないもの」
「家に閉じこもってたって、魔法はうまくならないよ」
「……わかってるよ」
「リリー」
「ごちそうさまでした」
顔を洗って部屋へ戻り、着ていた黒のワンピースを脱ぎ捨てた。おばあちゃんが縫ってくれる服は、上質なものだってのはわかる。
色は黒とグレーばかりで、デザインがシック過ぎる。
(私にはまだ似合わないのに)
本当は白いブラウスにピンクのワンピースを合わせるような、そんな可愛らしい服が好き。近所の子たちはみんな着ている。
ほかには、隣りの国のお姫様が着ているようなたっぷり布を使ったドレス。
リボンとフリルがいっぱいついてて、後ろは結んでリボンにするような。
靴は編み上げのブーツが好きなの。色は茶色がベスト。
ここは譲れない。
……って。
田舎娘が鏡に向かって笑いかけて、何になるというのか。
……おばあちゃんを心配させてるのはわかってる。
私は。魔女なのに、何故か魔法が使えない。
他の子が簡単にできることが、私には出来ない。
ほうきで空も飛べない、猫を変身させたりできない。
魔法で学校を吹っ飛ばすなんて論外。
学校に行っても、楽しくない。
トレニア以外、誰もあたしに話し掛けない。
トレニアはクラスが違うから、ずっと一緒にいられるわけじゃないし。
これといった特技も夢もない。
四角い窓から見えるのは空と森の影だけ。これが私の世界。
私は……。
魔法も使えないまま、ずっとこの村にいるのかなあ。
ロウソクが短くなり、消えそうになった。マッチで、代わりのロウソクに火をつけた。
「……」
気に入らなくて、引出しを開けて、赤いバラの形のロウソクを探した。
「まだ、あったはずなんだけど」
水に浮かべるタイプの、透明なバラの形のろうそく。
グラスに入れて火をつけると、赤い光が広がってワインのよう。くれたのは……トレニアね。どこかのお土産だったはず。
机の上には、渡しそこねたミートパイと、惚れ薬がかごに入ったまま置いてあった。
やっぱり、こんなマズイものを渡せないよね……。
ガッカリされたくないし。嫌われたくないし。
初めて会ったあの時、私の世界に光が差し込んだ気がしたの。
……ノア様に。
明日は会いたいな……。




