第06話 ラウネル南の森
「着かないじゃん!! ほんとにこっちでいいの?」
「わかんないよ、あの時だって迷子になってたどり着いたんだから」
朝早く家を出たのに、もう日が暮れかけている。
「私たち、方向オンチみたいだねトレニア」
「これだけ迷ってたら、そろそろたどり着いてもよさそうなモンなのに」
「お腹空いたね……」
「でも、このミートパイは食べられないしね……」
よく考えたら、自分達で食べる気がしないほどマズいパイとジュースをプレゼントをしようというのだから、これは策というより無策な気がする。
日が落ちて、蝙蝠があちこち鳴き始めている。
「ちょっと寒いね」
「帰れ……る……かな?」
トレニアに上着を貸し、森の間から空を見上げた。
星の位置からして、村からだいぶ北にいるようだ。
(おかしいな……。南に進んでたはずなのに)
方向わかんなくなるから迷子っていうんだろうけど。
「戻ろうリリー。今日はムリだよ。ってか、お腹すいたし」
「……そうだね」
帰れるの?
「おばーちゃんに怒られる」
「まあ、迷子になったって言えばいいよ」
そのまんまだね。
しばらく森の中を進むと、ぽっかりと視界が開けた。
「……城だ」
「ここ? リリー」
「ここだと思う」
すっかり暗くなった森に、城の塔が見えた。
荒れ果てた庭。
一角はバラ園になっている。
「あのベンチ、見た気がするな……」
「……真っ暗だよ? 人が住んでいるように見えないよ」
トレニアは、城に目を移した。
窓はたくさんあるが、明かりは漏れていない。
幾重にも絡まった蔦が、びっしりと表面を覆っている。
「やっぱり誰もいないよ。その時、たまたまいただけなんじゃないの?」
あの時の、銀色の髪の人。
ノア様はこの城に住んでいるわけじゃないっていうの?
「私の城って言ってたわ。ここじゃなかったとか?」
「古い城なんて、みんなどっか似てるよ。実は逆方向なのかもしれないし」
トレニアに言われると自信がない。
「村に帰ろう」
■
村に着く前に、探しにきたシャーロットと合流した。
シャーロットは太っているため、「ぐぎゃー」と鳴く。
太っているため、ジャンプして抱きつこうにも、トレニアの腕まで届かない。
「ちょっと待ってね」
トレニアが何か呪文を唱えると、人の姿に変わる。
変身できる猫って便利だなあ……。
「トレニア、リリー、また学校行かなかったのか。担任が来てたぞ」
「授業出なくていいって言ったのはアッチよ」
やれやれ、と肩をあげると、シャーロットはトレニアに貸した上着に気付いた。
「貸してくれたのか。ありがとうリリー。トレニアはこっち着ろ」
ちゃんとトレニアにポンチョ持ってきたんだ……。
「優しいねー、シャーロット」
「って、コレ、アンタの布団にしちゃってるやつじゃん。毛だらけなんだけど」
「じゃあまた編んでくれ」
「うるさいよ」
いいなー、年上の彼氏。
猫だけど。
トレニアはなんでも持っている。私と違って。
「リリー、家まで送る。さ、帰ろうぜ」




