15 ふたりきり
どうぞよろしくお願いします。
ハヤトと私はまた部屋に戻った。
「……あの時、何を感じた?」
「武井先生の所で?」
頷くハヤト。
「武井先生の違和感、怪我と年齢のことは言ったけど。
あと、すごく身体が行くなって、近づくなって、拒否してるというか……。
なんだろう、チリチリしたものを感じたというか。近づいてはいけない、みたいな」
「前にもそんなことが?」
「いいえ、初めて……。
武井先生には、そこまで感じなかった。
あの二階に行こうとした時に強く感じたから……」
「俺も感じた。
あの二階へ上がる階段へのドアを開けた時からだ。
俺は、その感覚を知っている。
ダンジョン内で、魔物が襲ってくる前兆だ。
リアが言うように、なにかちりちりという、細かな、身体だけが五感を通して細胞レベルで反応しているような……」
「同じ感覚を感じてた?
魔物って……」
武井先生の後姿。二階へ上がっていく後姿を思い出してぞっとする。
なんで、父は……、ハヤトも知らないということは、連絡を取っていなかったということだ。
なにか、とんでもないことが起きている気がする。
「武井クリニック。どうにかして調べたいが……。
本部と連絡を取り考えてみる。
リアはもう近づくな。ダンジョンへ来ていることはわかってしまったから、何か連絡が来るかもしれないが、ひとりでは絶対に行くなよ」
「はい」
私は頷いた。
私の左頬をハヤトがやさしく手のひらで覆うようにしてくれる。
「……なかなかふたりきりにはなれないな」
「そうですね」
「次の休み……、本部へおいで」
「連絡します」
「うん」
ハヤトの顔が近づいてきて、キス、している時に部屋の外が騒がしくなったと思ったらドアが開いて。
「何やってるのよ!」
そこにいたのは美咲で。
「私だってね! すっごい素敵な恋人ができたんだからね!」
は?
私とハヤトはたぶん同時にピエールの姿を思い浮かべたんだと思う。
あのカードの内容ではまだ『恋人』とは断定できないような気がするけど……。
「それは……、おめでとう、なのよね?」
私は首を傾げながら、そう言った。
井狩総班長と牧野さんが申し訳なさそうに入って来て、美咲を連れ出そうとして「止められなくてごめんなさい!」と謝ってくれた。
「いえいえ。では、またの休みに!」
ハヤトはおかしそうに笑ってから、部屋を出て行った。
牧野さんが美咲を連れ出し、井狩総班長が申し訳なさそうに言う。
「本当にごめんなさいね……」
「いえいえ、もう話も終わってたところで! 大丈夫でしたから!」
私は慌てて言った。
読んで下さり、ありがとうございます。




