21 今度はどっちから -完-
これで完結です。
なんとなく、分けられなくて、いつもの2話分ぐらい長いです。
どうぞよろしくお願いします。
研究室を閉めて、ハヤトはまたフユトを抱っこだ。
もう安定の定位置だよね。
エントランスで万里ちゃんに手を振って、海斗さんの入出チェックをしてもらう。
「連絡するから」なんてこそって言ってるのが聞こえて。
でも、気づかない振り!!
出ようとしたら、上野さんに捕まった。
「ね、切るだけ!
10分もかからないから!」
あー、確かに髪、伸びたままなんだよね。
結べるからって、そのままにしてた。
「切って貰えば。
それぐらいの時間なら大丈夫」
ハヤトの言葉に理容室&美容室に行き、前と同じくらいの長さにしてもらった。
うん、すっきり!
なんだか、若返った気がする!
と言っても私はまだ21歳になったばかりなんだけどね。
「ありがとうございます!」
「うん、お肌もちゃんとお手入れしてたのね! よろしい!
また続きの研修に来てね!」
「はい!」
エントランスでハヤトとフユトと海斗さんが待ってて、……人だかりができとる。
フユトパワーというか、赤ちゃんパワー!!
みんな癒されて〜!
「お待たせしました!」
「……リア!?」
ハヤトが驚く。
「ん?」
「いや、前と……」
「切り過ぎたかな」
「いや、いい。かわいいよ」
海斗さんがムズムズした表情をしていた。
海斗さんの車に持参したチャイルドシートをつけて、いよいよ大岡家へ!
お母さんの祥子さん、叔父さんの蓮人さん、そして末の弟の陸人くん。
大岡の家の男子は人か斗をつけるのが、なんとなくな流れ?
住宅街の普通の家。
外から見たら、複雑な家庭環境だとは全く思わないだろうなー。
本当に普通の家。普通の家庭に見える。
簡単に挨拶して、アラスカで私の事情で結婚を急ぐことになりご挨拶ちゃんとできずすみませんでしたと伝えた。
「事情……?」とフユトを見る叔父さん。
普通にお父さんポジションにいるけど、いまだに叔父さん、なんだよね。
「いえっ!
私の家の方の問題で!
フユトは結婚してから授かりました!」
なんか慌てて言ってしまった。
「アレクさん、冬人を抱かせてもらえる?」
祥子お母さんの言葉に頷く。
「はい! ハヤト、下ろすの手伝うよ」
ハヤトの抱っこ紐からフユトを抱き取り、抱っこ紐を外したハヤトにフユトを戻す。
「ん?」
「ハヤトからお母さんに」
ハヤトが少し驚いた表情をしたが、気を取り直して、お母さんに近づき、フユトを抱っこさせる。
「重いよ」
抱き取ったお母さんはぱあっと明るい表情をした。
「まあ! 冬くん!
おばあちゃんですよ!」
そして、叔父さんに向かって「おじ……、えっと、なんて呼べば……」と詰まった。
海斗さんが言った。
「いい機会だからさ。
母さんと叔父さん、ちゃんと結婚したら?
冬人におじいちゃんって呼ばれたいだろ?」
顔を見合わせるお母さんと叔父さん。
陸人くんも言った。
「もう……、兄ちゃん達のお父さんに、いつまでもお父さんの仕事させるのは……。
やめた方がいいんじゃない。お母さん」
陸人くんもハヤトや海斗さんのように……、苦しんでいるのかもしれない。
もうこの年齢になれば、自分が叔父さんの子であることは、計算できるし、わかっちゃうよね。
叔父さんがフユトの顔を覗き込んだ。
「冬くん、お、おじいちゃんだよ」
海斗さんが車の中で感心している。
「孫パワーってすごいな。
なんか後ろめたいこと、恥ずかしいこと、できないっていうか」
ハヤトはチャイルドシートで眠るフユトを見て言った。
「ああ、あんなに長く悩んでいた問題が一発で片付くとはな……」
お母さんも叔父さんも正式に籍を入れ、お父さんの遺族年金の廃止届を出すそうだ。
良かった。
「あんなに俺達が言っても行動起こしてもだめだったのにな。
孫は子よりかわいいってマジか!」
海斗さんの言葉にちょっと反論したくなるが、しなかった。
たぶん、あなた達、子のためにと考えていた気がする。
でも、なんとなく不正をしていると思いたくなくて、考えないようにしてて、途中で正すことができなかった。
フユトはいいきっかけであったに過ぎない。
本部の宿舎まで送ってもらい、チャイルドシートを取り外す。
「海斗さん、ありがとうございます!」
「いーや、アレクさん!
俺の方が本当に感謝です!
日本にいるのは1カ月間でしたよね!
またお会いしましょう!」
懐かしの! 宿舎の部屋! 親子だと狭いか?
でも、これくらいの方がなんだか安心する。
大切な写真とか、お茶椀とか、グラスとか、全部置いていったもんな。
始まりも、ここだった。
愛理さんが「おかえりー」と玄関から入ってきた。
「一応、風を入れて、掃除機はかけた。
掛け布団も干しといたけど。
荷物整理の間、フユト預かるよ!」
「あ、よろしくお願いします!」
部屋を整え、フユトグッズを出して、ベッドマットにも掃除機をかけた。
写真の隣の蜂蜜の瓶にミネバに貰った母の服の生地で作られたリースを持たせかけるように飾る。
ふふ、大切な物、増えた。
夕食はケータリングを頼んであって、受け取って準備もできたので、愛理さんに連絡して、フユトと来てもらった。
一緒に食事をし、はー、疲れたね! なんて話をしていたら愛理さんが言った。
「もう少し、フユト預かろうか?」
私はハヤトの後ろの方、ソファにフユトといたからテーブルの方を見た。
ハヤトの後ろ姿が見える。
フユトは離乳食を食べ、授乳もしてご機嫌だ。
今日は抱っこが多かったから、動き回ってうれしそう。
ハヤトの顔を見た愛理さんは「了解! 3時間くらいかな」と言った。
え!?
ハヤトどんな顔したの!?
で、愛理さんは本当にフユトを連れて行ってしまって。
あ、こんな感じのふたりっきりは久しぶり。
フユトが生まれてからは、ほぼなかった、よね!?
「リア……」
呼ばれたけど、私は食器を持ってキッチンに入ったところで、キッチンカウンターから返事をした。
「明日、大家さんの所に寄って、それから、水族館に行こう!
フユトに見せてあげたい。
ハヤトがお父さんとよく行ってた場所」
「うん……。
中佐の納骨は、今度の日曜日だよな」
「うん……」
私は食器を片付け終わり、ハヤトのところに来た。
なんか、変な沈黙……。
「ハヤト……、私を、その……」
やっぱり、私から言わないとだめか!?
「リア、……俺に抱かれていただけないでしょうか?」
ハヤトの震える声。
「は、はい! よろこんで!」
「なんだ……、その。うん、気抜けた……」
「……ふふふっ。言ってくれてありがとう。うれしい。
最初の時を思い出した。本当に必死だったんだから……」
「……もうひとりでどこにも行かないでよ」
「行くわけないでしょ!」
ハヤトがキスして抱きしめてくれた。
これから先の未来。
ハヤトとフユトと……、それから……。
生きている限り、ずっと一緒に、いたい。いや、いる。
◇ ◇ ◇ 完 ◇ ◇ ◇
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
どうだったでしょうか?
本当に好き勝手書いてて、終わるのかと思っていたら、ちゃんと終わりました。
ハッピーエンド、ですよね!
ほっとしてます。
書いていて『転生ガチャ』を書いている時の感覚を思い出しました。
登場人物が勝手に動いてくれて、楽しくなって。
そして、出産について。『転生ガチャ』は主人公ネモが姉の出産に付き添ってたので。付き添ってた夫の話や陣痛中に来た妹にはこんな感じに見えてたかなとか思い出しながら書きました。
今回はリア自身が出産だったので、本人視線で妊娠出産、そして育児のことを思い出して、楽しかったです。本当に臨月と出産直接が壮絶すぎて……。
授乳で乳首切れるなんて! 聞いてないよ!
その後のことを少し。
アラスカダンジョンでは日本の子連れ隊が大暴れ。
フユトと、タニアとジェシーんとこの子とに、モーゼとロイの魔法英才教育が始まります。
それから、数年後、ハヤトとリアには女の子が生まれます。
今度はリアが皆実と名付けます。
異世界に飛ばされた時、助けになった日記&魔法メモを残してくれてた最後の召喚聖女にちなんで。
皆実のノートは写しを研究所に残し、本物は家族に返せました。
地球は場所によって濃い薄いはあるけれど、魔力が巡るようになり、異世界人第一世代も地球上を自由に移動できるようになりました。
そんな未来。これからもリアとハヤトに幸せが続きますように!
そう思っていただけたら、うれしいです。
感想や評価をどうぞよろしくお願いします。




