17 本当の恋人
どうぞよろしくお願いします。
ハヤトは笑って私の頭をぽんぽんとした。
ちょっと子ども扱いされてムッとする気持ちと、でも、なんだか甘えさせてくれるようなうれしい気もして……、私は不思議な気持ちになった。
「じゃあ、本当の恋人ってことで」
ハヤトの軽い言葉に私は言い返してしまう。
「いいんですか? 本当に?」
「いいよ。こちらからもお願いしたい」
「じゃあ……、よろしくお願いします……」
「お願いされた」
私はクスッと笑ってしまった。
「どうした?」
「いえ、ハヤトって、私が思っていたより、明るい人なのかなって」
ハヤトは驚いた表情を浮かべたが、頷いて微笑んだ。
「それは……、きっとリアのおかげだな」
車が動き始めた。
「あれ? でも、強要されたとわかったのに?
志願は取り消しにならないんですね?」
ハヤトが苦笑いした。
「さっき少将が確認しただろ。
リアも『志願で良かった』的なことを言ったし。
それに今から、追加の『当番』を出すことは、な」
「はい、この形で今の早瀬家を出られたのは私にとって良かったです。
美咲からも離れられて……、二年後まで生きていられる希望も出てきました」
笑ってそう言うと、ハヤトは前を見ながら「リアを死なせはしないよ」と言った。
私はその声のトーンに、まだ父への申し訳なさを感じて……、敢えて明るく返事をした。
「はい、守ってもらいますから! 頼りにしてます!」
ハヤトは微笑んだ。
……今はこれでいいのかもしれない。
私は父が勤めていた本部の場所は知らない。
父は家から車で出勤していたから。家から軍服を着てね。
製薬会社と防衛研究所が提携している病院にへの実習や製薬会社の研究室には一緒に行ったことがあるが、本部の研究室は行ったことがない。
ダンジョンについて総合的な研究をしているとは聞いていた。
もうただの跡地となったインド、ギリシャのダンジョンを調査に行ったり、アラスカでの研究から父が仮定していた『人類の進化』の研究でもあるのだろうか?
車で移動しているからはっきりとはわからないが、なんとなく街の表示や掲示物から予想して、電車の駅で位置を整理した。
ハヤトはこの約一年間、本部の研究室で、研究者としてのの仕事で私服で過ごすことが多かったそうだ。敢えて社会の様子を知りたいと電車での通勤をしていたそう。私が会社の駅から乗って来て、先にハヤトが宿舎の駅で降り、私が社宅の駅で降りる。この帰宅時間が、重なっていて、出会えたということだ。
もし……、父に本部の場所を聞いていたら、ハヤトのことも最初から軍の関係者と思い……、あんなことを告白できなかったかもしれない。
車は私にとって初めての防衛隊本部に到着した。
父の職場だったところだと思うと緊張する。
「ここからは早瀬医療士と呼ぶから、俺のことは大岡大尉と呼んでくれ」
「はい! 承知しました。お、大岡大尉」
ぎこちなく言うと、くくっと笑われた。
「カバンの大きな荷物はこのまま車に載せておくよ」
ハヤトが車から下りたので、私も書類の入った封筒だけ持って下りた。
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