表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

百々目鬼(2)

「ちょっと! こんなガキんちょ寄越してどういうつもり!?」


 今日の仕事は数日前に血相を変えて相談所に飛び込んできた派手な化粧の依頼人に、東雲から預かった道具を渡して注意事項と使い方の説明をするだけの簡単な仕事だったはずなのに。と、携帯片手に怒鳴り散らしている派手な化粧の女を見ながら英二は盛大な溜息を吐き出した。


「話になんないわ!」


 そう吐き捨て女が荒々しくベッドに腰を下ろした。年上の女性とワンルームの部屋に二人きり、しかも女性が座ってるのがベッドという思春期の少年なら夢のようなシチュエーションではあるが、英二としてはさっさと帰りたい。たとえ、黒い布着れのような何かがチラチラ見えていても。


「とりあえず、仕事終わらせていいすか?」


 その言葉に女からの返事はないが、英二は背負っていたバックを降ろすと中から透明な液体の入った二リットルのペットボトル二本と四枚の御札を取り出した。


「まず、この御札を部屋の四方に貼って下さい」

「シホーってなによ? ちゃんとわかるように説明しなさいよ!」


 ソレくらいわかるだろと突っ込みたい衝動を抑えつつ、こっそりと溜息を吐き説明を続ける。


「四方ってのは、東西南北の事っす。この御札で部屋に結界を張ります」

「めんどくさ、アンタやってよ」

「そりゃ無理っすね。この結界の中に居るのはおねーさんだけじゃないとダメなんで俺が帰った後にやってもらわないといけないんすよ。んで、今日風呂に入る時にこのペットボトルの中身を全身にかかるように頭からかけてください」


 女の目玉がギョロリと英二の方を向いた。女の体中にある(・・・・・)いくつもの目玉が一斉に。


「おねーさんに憑いてんのは百々目鬼って怪異っス。これは手癖の悪い人間に憑くモノなんすけど、心当たりあります?」


 淡々と説明を続ける英二に彼女に対する同情は微塵もない。憑かれた原因は彼女自身なのだから。


「それから、目玉(ソレ)が消えるまでは外に出ねー事、誰も部屋に入れない事。ま、おとなしくしてれば二、三日で目玉は消えるっス」


 ベッドに座ったまま英二を睨んでいる彼女を尻目に玄関のドアを開け、一度振り返る。


「あ、言い忘れてました。二回目のお払いはかなりキツイみたいっすよ。まあ、次があるかどうかはおねーさん次第っすけど」


 ぺこりと頭を下げ、部屋を出る。閉まったドアに何かがぶつかる様な音がしたが、気にする事無く英二は歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ