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百々目鬼

「ありがとぉーまたねー」


 にこやかな笑顔を浮かべ、女達は手を振る。しかし、そのにこやかな笑顔はエレベーターの扉が閉まると同時に崩れた。


「あーめんどくさ」


 派手な化粧の女がそう漏らすと、一緒に居た金髪の女も口を開いた。


「つうかさ、今のオヤジ。ケチ過ぎじゃなかった?」

「それ思った! 『飲みたいなら飲み放題の焼酎(コレ)一緒に飲もう』とかありえないっしょ!」

「おまけにアフターどう? とか馬鹿じゃねー? 誰が行くかっての」


 好き放題客を貶す彼女達に一人の青年が駆け寄ってきた。


「マキさん、次のテーブルお願いしまーす!」


 青年は彼女達が勤める飲み屋の新人ボーイ。マキと呼ばれた派手な化粧の女は青年を軽く睨む。彼女達の貶していたオヤジを店に案内してきたのはこの男だからだ。


「はいはい」


 別の店から出てきた男性と話している金髪の女に片手を挙げて、マキは歩き始める。店に戻る途中で目が合った男に愛想を振りまくのも忘れない。たとえそれがヨレヨレのスーツを着た冴えない風貌の男であっても。


 店に戻ったマキは一度ロッカールームに入っていく。先程のオヤジの席でタバコがなくなってしまったのだ。バックの中にもう一箱あったはず。そう思っていたのだが、あいにく見当たらない。仕方なくテーブルの上にあった誰のものかわからないタバコに手を伸ばす。いつものタバコより軽いものだがこの際気にしない。


 ロッカールームの前から先程のボーイが彼女を呼ぶ声が聞こえる。一応返事はするが彼女はすぐに出ようとはせず、バックから財布を取り出す。中身は数枚の一万円札と小銭が少し。タバコを買うのに一万円札を崩したくはない。しかし小銭では足りない。彼女はためらう事無く、床に置いてあったバックに手をかけた。そのバックは彼女のものではない。たまたま他の店からヘルプに来た女の子の私物。名前も覚えていない女の子の財布を開き、千円札を抜き取る。


「タバコ買ってきて」


 ロッカーを出ると待機していたボーイに金を渡し彼女は颯爽と歩き出した。

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