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2.百々目鬼(プロローグ)

「ありがとうございましたー」


 茶髪店員のやる気のない挨拶を背に派手な化粧をした女は店を後にした。チラリと振り返ってみても誰かが追いかけてくる様子はない。

鼻歌交じりに駐車場に停めていた車に乗り込むと買い物袋を助手席に乱暴に置き、持っていたバックを漁る。

取り出したのは未開封の良く冷えたペットボトル飲料。会計済みを示すシールの貼ってないペットボトルの蓋を開け、真っ赤な唇へと運び喉を潤す。


 初めて万引きという行為を行ったときに感じた罪悪感は行為を繰り返すうちに薄れていき、今ではそれがどんなものだったのかさえ思い出せない。


 不意にバックから流行の女性アーティストの歌が流れてきた。再びバックを漁り、携帯を取り出す。画面には『アツシ』の文字が浮かんでいる。


「はいはーい」


 女は携帯電話を片手に、飲みかけのペットボトルをドリンクホルダーに置くと車のエンジンをかけ、周囲の確認もしないまま走り出した。近くを歩いていた男の子の手を母親らしき女性が慌てて引っ張る。何かを叫ぶ女性をバックミラー越しに一瞥し、それでも止まる事無く女は走り去る。


「あれ、明後日じゃなかった? ウッソ明日!?」


 会話を止める事無く女は暫く車を走らせ、二階建てのアパートの駐車場に停車させると買い物袋とバックを掴み、一階にある部屋の扉を開ける。

漸く通話の終わった携帯をベッドに放り投げ、自身は風呂へ。

着ていた服を脱ぎ、何気なく鏡に視線を向けると左肩の辺りに一本の赤い筋が入っているのが見えた。

痛みも痒みもないそれを女は気にも留めず、シャワーを浴び始めた。


 

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