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2話 異世界へ転移/盗賊戦1

戦闘描写があります。

拙い文章ですがよろしくおねがいします。

 

蛇遣神――アスから刀を受け取った俺は受け取った刀についてものすごく気になっていた。


唐突だが、俺の格闘技の師匠は重度の武器マニアだった。

その師匠は俺が中学生くらいになったときに


「お前にも武器の使い方を教えてやる!」


と頼んでもいないのに素手の戦闘術に加え、主に居合刀を使った抜刀術など色んな武器の扱いや対処法を教えてもらった。


「何の役に立つんだよ」というようなものもあったがヤクザ共の対処にすごく役に立った。


閑話休題


そんなわけで俺もかなり武器類、主に日本刀に惹かれるようになった。ちなみに刀を使った戦闘より、長年嗜んでいた素手の方が得意だったりする。



「さて、この刀は――っと」



とあまり装飾がない黒塗りの鞘から刀身を抜いて目線の高さにおき刀身をまじまじと眺める。



「! おおぉ……」



思わず感嘆の声を漏らしてしまった。

漆黒に紫色光沢が映えている80cm近くある刀身に、鋭く波打った波紋。それが俺には美しく見えた。


そのとき、俺が無意識に表情を綻ばせ、心のそこから嬉しそうにしている様子を見たアスは「ふっ」と軽く笑みを浮かべ「気に入って貰えてなによりだ」と小声で言っていたことに俺は気づかなかった。



「さてっ!」



パンッとアスは手を叩き合わせ、切り替えるように促した。


俺は「うん?」と刀を鞘へスッと納刀し、視線をアスに戻す。



「お前との契約と刀の譲渡も完了した。そろそろ出発するとしよう」


「わかった」



俺がそう頷き、貰った刀をズボンのベルトに差してからアスの横に並ぶ。


アスは俺が準備できたのを確認してから右手を前にかざした。

すると、周りの灰色の空間に2mほどの縦線が入るとそこから自動ドアのように左右に開いた。その向こうには眩しいような白い光が漏れている。



「空間移動が使えるのか?」


「はずれだ。我の世界と向こうの世界を繋ぐ門を開いたのだよ」


「なんか楽しそうだな。声が弾んでるぞ」


「そうか? 我が向こうに行くのが久々でなあ。少し気分が上がっているのだ」


「ん? アスも一緒に来るのか?」


「ああ。お前の契約者だからな」


「そうか。じゃあ俺もアスが一緒に来てよかったと思ってもらえるように頑張るとするか」


「はは。嬉しいことを言ってくれるではないか。では期待しているぞ」



俺は頷いてから空間の繋ぎ目の向こう側にアスと共に足を踏み入れ、飛び込むと俺の意識がスッと引き抜かれたように途切れた。


△▼△▼△


「……っは」


俺は短く息を吸い込むような声を上げてから意識が覚醒していった。

仰向けで大の字に寝転がっている体勢からゆっくりと体を起こし、手を閉じたり開いたりなどをして自分の身体に異常がないことを確認する。


周囲を見渡すとあたり一面には草原が広がり、それを囲うように背の高い木が、並んでいる。

空から見ると円形の草原の広いエリアの薄い緑を囲うように大木の木々の深緑が広がっているのだろう。


異世界転移は成功したが、近くには肝心のアスがいない。

何処に行ったんだ?


『ようやく目覚めたか。お前いや、ヨルは一度寝ると起きるのが遅いようだな』


周囲を見渡していると突然聞こえたアスの声にビクッとさせてから、またしても周囲を確認するもいない。

遠くからだんだん物騒な雰囲気の人たちが近づいて来ているのは気のせいだろう。


「本当にやめて欲しい」


俺は呆れ声で溜息混じりに言う。


『どうした? 無事、異世界転移に成功した。お前も身体に異常は無いだろう』


「ああ。確かに、身体には異常は無い。だが盗賊っぽい奴等に囲まれてる状況のどこが無事なんだよ! 早くも生命の危機じゃねえか!」


そいつ等は頭に統一の派手な赤いバンダナを巻いた盗賊らしき男たちが11人いる。

転移したときからちらちらと見えていた。それがだんだんこちらに向かって近づき、7m程まで詰められたときには確信した。

狙われてるのは俺だ。


「なんでだ? なぜ見つかったんだ」


『ああ、そういえば、転移させるときに丁度ヨルがいる位置を発光させたからな。それに向かってきたのだろう。お前もツいてないな。あっはっはっはっはっはっ』


「お前の所為かよ!」


「なぁーにさっきから一人でブツブツ言ってんだぁ? おめえ」


おかしいと言うように笑うアスに少々怒りを覚えていると、装備が貧弱な下っ端の一人が痺れを切らしたのか苛立ちを含んだ口調で言う。


その手には脅すようにナイフをちらつかせニヤニヤと醜悪な笑みを浮かべてじりじりと距離を詰めてくる。


数名は俺を馬鹿にしているのかナイフや剣を抜いていない。

武器を向けられた俺は、気分を切り替え、目の前の男たちを警戒するように睨み付ける。


(なあアス)


『なんだ?』


(これだけ殺意を向けられているんだ。殺ってしまって構わないだろ?)


『ああ。この世界は賊の類に対して殺しは不問となっている。丁度いいからヨルの実力を見せてくれぬか』


(わざとおびき寄せたな。それよりも今は目の前の敵だ。敵意や殺意にはそれ相応に報いてやる)


お前らでこの刀の試し切りをしてやろう。


そう考え、左手の親指で腰に挿している刀の鍔を押し上げ、右手で柄に手を掛けすぐに踏み込めるよう体勢を低くして構える。

構えを崩さずに11人の配置を一通り眺め、斬り伏せていく順を決める。刀を振るうのが楽しみ過ぎて自然と口角が上がる。

いやあ、楽しみだなあ。


――――


夜が抜刀の構えをとると、先ほどまでばかにするようにニヤけていた盗賊たちがそれぞれ武器を構えだす。


だが、それよりも速くに夜は跳び出し、一番左の下っ端に肉迫する勢いで間合いを詰める。


その盗賊は一瞬で距離を詰められたことに怯み、「ひぃっ」と情けない声を漏らし、片手剣を持った右手を咄嗟に伸ばす。


しかし、夜の俊敏な抜刀術で、その盗賊は伸ばされたの腕ごと喉を切り裂かれる。


喉を切り裂かれた盗賊は声を上げることなくその場に倒れた。

夜は近くにいる4人へ即座に狙いを付ける。


標的にされた者たちは剣を持って呆然と立っているだけでほぼ無防備な状態だった。


当然その隙を見逃すはずもなく、一人ずつがら空きの首筋や脇腹に正確且つ深く刃を滑り込ませ、一太刀で生命を刈り取っていく。


盗賊たちは仲間を一瞬で5人屠られたことに動揺し、その場で動けずにその場で剣をガタガタと震わせたり、喚いたりと冷静さを失っている。


「残りは6人か」


と夜は倒れた屍に目もくれずに次の標的たちを威圧するように睨み付けながら目算する。


「――っ野郎共! 相手は一人だ。連携を崩さずに人数差を活かせ!」


いち早く冷静さを取り戻したリーダーらしき盗賊は声を張り上げ、怯む仲間たちを鼓舞する。


それを見た夜は、


(あの仕切ってる奴を殺したら、こいつ等は総崩れで終わりだな)


と判断し俊敏な足取りで下っ端を取り仕切る周りよりも派手な装備の盗賊のリーダーに向かう。


「うおぉぉおおーーー!」


と野太い声を上げ果敢にも一人の盗賊がリーダーに近づけさせないと先陣を切り、3人が続いてぱらぱらと夜に挑んで行く。


(まあ、そう簡単に狙い通りにはならないか)


夜は口元に嗜虐的な笑みを浮かべながら、素早い足取りで距離を詰めていく。


先頭の両手剣を大振りで近づく一人に「遅せぇ」と一喝し、剣が振り下ろされる前に右へ抜ける。

それと同じタイミングで、すれ違いざまに相手の左脇腹を斬り裂き通り抜ける。


すると左側から横薙ぎに斬ろうと近づく者とその斜め後ろに両手にナイフを持った者、右側には剣先を夜へ向けて来る者に目を向ける。


夜は右側の盗賊に狙いをつけ、刀を右脇に構えて距離を詰める。


互いの間合いに入ると、相手は剣を持った腕を伸ばし、剣先が夜の眼前に迫る。


それを見切っていた夜はギリギリのタイミングで左に躱わし、走った勢いのまま相手の脇腹をすれ違いざまに斬る。


続いて夜は左から迫る2人にキッと睨み付けるように目を向けていると、ふと後ろからサッサッサと1人が素早く駆け寄る音を耳にする。


しかし、夜は音の大きさからまだ間合いに入っていないと判断し警戒しながらも再び二人へと狙いをつける。


夜はその二人との間合いを詰める。


前に立つ剣使いは、「やっや!」と剣を雑に振り回す。

当然、それらの攻撃は見切られているため夜の身体に掠りもしない。


そして横薙ぎに振ったところで、夜はガラ空きになっている喉元に切っ先を突き刺す。


夜は刀を引き抜こうとした瞬間にナイフニ本の盗賊が、喉を貫かれた盗賊を蹴りつける。

それによって夜の黒刀は、刀身の半ばまで貫通したことで簡単に抜くことができなくなる。


それを好機としてナイフ使いは、夜の首筋めがけて俊敏にナイフが振るう。


悠長に刀を回収しようとすれば、引き抜く前に首を掻き切られ、鮮血を散らすことになるだろう。

それを眼前に迫るギラギラと鋭く光るナイフが物語っている。


「ちっ!」


(一旦刀は諦めて素手で殺るか)


夜は舌打ちをし、刀を引き抜く時間がないと判断し、柄から両手を離す。


ナイフを避けるために体勢を低くすると、右足を軸に半身で前に出た相手の右足に左足で回し蹴りを放つ。


ナイフ使いはバランスを崩して地面に仰向けで倒れる。

起き上がろうとしたところへ、体勢を立て直した夜に喉を踏み潰され「ぐぎゃっ」と詰まった声を上げ息絶える。


先ほどから聞こえている足音がすぐ近く、右斜め後ろで止まる。


夜は咄嗟に相手に右半身を向けると、上段に振り上げられた剣が今、振り下ろされようとしている。


夜は剣が振り下ろされる直前、相手の手の甲へ自分の右手の手刀を当てると同時に左足を前に出す。


そして、相手の手首を切り下ろすことで振り下ろされる力をそらしながら相手の手首を掴む。


その盗賊は突然力を逸らされたことによってバランスを崩して前のめりの体勢になる。


相手が起き上がれないよう伸ばされた二の腕と手首を上から押さえながら、前に出していた左足を軸に相手の体勢をさらに崩しながら、自身を時計回りに180°転換させる。


地面に這い蹲るように倒れた盗賊は、夜に右腕一本を押さえつけられ地面に固定されている状態だ。


そのため右腕、特に手首は手の平が上を向くようになっていることで手に力が入らず剣を落としてしまう。


夜はすかさず、盗賊が落とした剣を拾うと相手の首筋に剣を振り下ろす。


夜は首を切断するのに使った血に塗れた剣を左手へ持ち替えながら、黒刀を刺したままの死体に近づく。

そして、残ったリーダーに挑発するように言う。


「後はお前1人だけだ。そこでビビッて下っ端だけに任せていないで自分も参加していれば少しは結果が変わったかもしれないのにな」


リーダーを見据えながら喉に刀を突き刺したまま仰向けになっている死体を足で押さえて刀を引き抜き、血振りで切っ先に着いた血を払い落とす。


「そうだな。まさかオレの部下共が全滅するとは思わなかった。

だからよぉ……部下を弔うためにもせめてお前さんの命だけは貰っていかなければならねぇ」


リーダーはギリリと歯を食いしばり、腰から一本のバスタードソードを抜き正眼に構える。


その刀身の中心には緋色の幾何学的な模様の魔方陣のようなものが刻まれている。


夜は右に黒刀、左に血の着いたままのショートソードを持った手をだらりと下げながらも、いつでも刀剣を振れるよう相手の動きを警戒する。


そして一定の間合いを保ちながらリーダーを中心に円を縁取るようにゆっくりと移動していると、アスが真剣な口調で忠告する。


『ヨル、あの男が持っている剣、あれはただの剣ではない。十中八九魔剣だ』


(魔剣? そんな凄そうな得物をそこらの盗賊でも持っているのか?)


『この世界では普通に魔剣を持っている人は多い。剣に属性やら特殊能力やらが付与されていれば魔剣扱いだ』


(そうなのか)


『ああ。気をつけるのだぞ』


(わかっている)


「さあ、俺を楽しませろ、魔剣使い!」


と夜は煽る様に啖呵を切り、リーダーとの間合いを一気に詰めるべく地面を蹴る―――



読んでくださりありがとうございました。

誤字、ならびに脱字などございましたらご指摘ください。

刀の長さを1m強から80cm近くにしました。


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