プロローグ
はじめましての人ははじめまして。
前作を読んでいた方はお久しぶりです。
藍澤蒼です。
拙いものではありますが、どうか温かい目で読んでいただけるとありがたいです。
……ああ、死んだな……
赤いペンキをぶちまけたかのように血で染まったコンクリート塀を背にもたれかけ、頭を垂れるような姿勢で俺は倒れている。
だんだん、視界がぼーっとぼやけて焦点が合わなくなり、目の前が次第に暗くなっていく。
生きてるものは遅かれ早かれ死ぬのは皆同じだと思っていたが、まさか俺がこんな早く死ぬとはな……。
クソッ…死にたくねえなあ…。
そう思いながら、俺は目の前が真っ暗になっていくのを眺めた。
そして俺の意識は途切れた……。
△▼△▼△
夜は自分の身体に不思議な感覚を覚え、かっと目を見開く。
仰向けに倒れている上体からむくりと起き上がり、居場所を把握しようと周りをきょろきょろと見渡した。
そこは動植物などは一切なく、ただひたすら辺り一面、灰色の世界が広がっているだけだ。
両手を広げたり閉じたり、裏返して手の甲を注意深く見たところ、薄い方ではあるが日本人らしい肌色という見慣れた自分の肌に安心した。
服装を確認すると、袖を肘辺りまでまくった黒いパーカーとジーンズを着ている。
無限に広がっている灰色の世界に驚いていると、ふと今までの経緯を思い出した。
△▼△▼△
--経緯に入る前に俺のプロフィールを紹介する。
俺は、6歳頃からいくつか格闘技を習っている。
当時、平均より背が低かった俺を案じた両親は、体作りのためにと大人たちに混じって習わさせられたのがきっかけだった。
最初は嫌々だったが、ある出来事がきっかけで楽しく取り組める用になった。
小2の頃に自分と比べて、体格差がかなりある上級生に絡まれた。普段から、大人たちと稽古をしていた俺は簡単に撃退することができた。
そのことで自信がついて楽しくなったり、今も続けている。
こうして適度な運動と食生活を続け、今は178cmまで背を伸ばすことができた。
前置きの俺のプロフィールはここまでだ。
―三人称視点―
去年の格闘技世界大会に優勝したことで、夜はかなり舞い上がっていた。
春に高校に入学したての頃のことだ。
街中で自分と同じ学校の制服を身に着けた2人の女の子が、頬や目元の傷が目立つ、いかにも柄が悪そうな4人組の男たちにナンパされているのを発見した。
余裕で対処できると判断した夜は救出しようと後ろから声をかけた。
そのとたん、一人が振り向きざまに夜の顔目掛けて殴りかかった。
それが引き金となり、ナンパした男たちは夜の精錬された格闘術によって再起不能状態にされてしまった。
それから数日に一度の頻度でヤクザのような連中に絡まれるようになった。
人数が増えたり、古風な武器が使われたりするも、夜は余裕をもって撃退することができた。夜もレベルアップしていく相手を倒していくことに楽しんでいた。
――しかし、今回に限ってはだめだった。
深夜に近い時間帯に、夜は家の近所の住宅街を一人で早歩きで自宅に向かっていた。
いつもはこの時間帯だと車一台通ることも無い。
だがその日は違った。
夜の数メートル後方辺りでワゴン車のような大型車が停まるような重低音のエンジン音が辺りに響く。
そしてバタバタとドアが閉まる音に続いて何人かが車から降りる音と会話しているのが夜の耳に入った。
だが、帰りが遅くなったことに急いでいる夜は、気にせずに歩き続ける。
すると突然、後方から連続した複数銃声のあとに、夜は背中に前へ倒れそうになるほどの痛みと衝撃を受けた。
夜は咄嗟に倒れないように、倒れないように足を踏ん張った。
だが、未だに続く衝撃と共に焼けるような激痛が全身に走り、「う゛っ」と呻き声をあげる。
夜は今、後方で「ヒャッハー!!」と奇声を発しながら機関銃を連射しているヤクザたちに撃たれている。
弾丸の雨に晒されている夜は体中を至るところ打たれぐらぐらと視界が激しく揺らいでいき、眩暈のようなそれよりも酷いものに陥る。
夜は2,3歩ほどよろめくと、コンクリート塀に自らの血に塗れている背中をべしゃりと打ちつける。
その間も胴体や腕や膝など至るところに弾丸の穴を空ける。そしてコンクリートに背中をずるずると擦り付けながら倒れる。
――そして俺の意識は途切れた。
読んでくださりありがとうございました。
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