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イケメン死んだらいいのに(会話回)

祭りの神輿当番で死にかけてました。骨折してないよね・・・


設定混じりの会話回です。ちょっとつまんないかも


GW、読むものが無くてヒマしてたら、処女作をUPしたので読んでみてください。『インターフェイス』です。http://ncode.syosetu.com/n6827dy/


 永遠に続くかと思われた組手を終えた俺は、縁側で大の字になって死にかけていた。

 

「この程度で音を上げるとは、兄上はなぜこのような……」


 ふんだんに蔑みを含んだ年下美少女の視線が突き刺さる。

 普段ならば「ご馳走様です」と手を合わせる場面だがそんな余裕すら無かった。

 興味を失ったように踵を返して去っていく鈴蘭。

 反論の余地も無い。せめて紳士として脳内レベルアップで辱めてやった。

 しかし、こうして休憩をくれるあたり、客分として少しは気を使ってくれているらしい。


「しっかしサムライってのホント化け物か……」


 昨日、BBAに俺たちの置かれた状況を説明すると、それならとにかく対人経験を積めということで、俺は昨日からずっと鈴蘭と組み手の特訓だ。

 漫画みたいに劇的なパワーアップが待っていると期待していたわけではないが、思ったより地味な展開である事は認めざるを得ないだろう。

 結局のところ、強くなるための近道はそれほど多くないのだ。


 ともあれ鈴蘭は…… とにかく強かった。

 まず動きが読めない。速度は圧倒的に俺に軍配が上がるはずなのに俺の攻撃は悉く躱され、いなされ、返される。


 そして何より、サムライの特性とはいえ、打撃も斬撃も無条件で装甲を貫通してくるなんて冒険者にとっては悪夢でしかない。

 レベルアップで纏ったはずの装甲がクソの役にも立たないのだ。一体何のために|レベルアップ|《絶叫》を重ねてきたのか自問したくなる。

 レベル6の高校生男子がレベル1のJCに一本も取れないまま、土を舐め続けている状況。正直、ここまでやられるとは思っていなかった。


「あの普通な両親から想像も出来ねえな……」


 昨日の夕飯でご挨拶した佐々木父は、極々普通のオッサンだった。

 うっすらと汗の滲んだシャツと、少しだけよれかかったスーツのズボンがしっくりくる普通の公務員だ。

 もちろん一輝と鈴蘭の父親なので、部下や同僚にはモテモテであろう渋み奔ったイケメンオヤジだっが、危険な匂いはまるで感じない。 


 俺たちが戦闘論議をしている時には、来週に迫った地域のゴルフコンペについて佐々木母と楽しそうに語っていたし、サムライとして敵を屠ることより、いかに300ヤード飛ばすかの方に興味があるらしい。

 彼にとっては、一輝がサムライとして強くなる事より、友達を連れてきたことのほうがよほど重要で、口周りにビールの泡を張り付けながら終始ご機嫌の様子だった。

 

「おーい、佐々木ぃ~ お前は休憩しないのか~?」

「うん? ああ、そうだね。そろそろ少し休もうかな。あと1本やったら休むよ」


 一輝は昨日からずっと、腕くらいの太さがある鉄棒を斬り付けている。

 もはや取り繕う気も無いのだろう、とっくの前から上半身裸で、筋肉が躍動するたびに飛び散った玉の汗が真夏の日差しをキラキラ反射する。一輝曰く『セクシープリズム』という現象らしい。怖気を通り越してもはや安心すら覚える馬鹿だ。

 

「シィィ―――ッッ」


 鉄と鉄が交錯し、火花が弾け、キンッと澄んだ音が鳴る。そして一輝は何度目になるかわからない溜息を吐いた。そして困ったような笑顔を浮かべながら縁側で寝そべる俺に近づいてくる。


「鈴蘭から1本は取れたかい?」

「これが一本取った男の顔に見えんのか?」


 汗だくのイケメンが爽やかに髪を掻き上げ、イケメンスマイルを放つ。俺はイケメン死ねばいいのにと思った。


「まあ、普段の一之瀬は正直、強いとは言えないからね」

「お、おう、わかってはいても正面切って言われると割とショックだなオイ……」

「弱いと言いたいわけじゃない。むしろキミは同世代、いや、今世の冒険者の中で最高にセクシーだと断言出来る」

「お前の女好きはカモフラージュってことは無いよね……?」


 反射的にケツ穴(マイ・ウェイ)を締めると、佐々木は苦笑しながら「ないない」と手を振る。

 ヤツの言う『セクシー』は汎用性高すぎて何言ってるかさっぱりわからん。

 なんか褒めているんだろうなとは思うが、文字で起こすと途端にバカにされている気分になる不思議。

 それはともかく、俺は昨日今日で疑問に思っていたことを聞いてみる。


「お前、昨日からなんでそれ(斬鉄)ばっかりやってんの?」


 すると、一瞬だけ険しい表情を見せた一輝が、スウッと視線を鉄柱に向けた。

 そして、普段からは想像もできない獣じみた目つきで、右の口端を凶悪に吊り上げる。ゾワリと、背中に冷たいものが奔った。


「今の僕に必要な技術だからさ」


 その台詞は怒りのようであり、喜びのようでもある。もしかしたら何らかの手応えを掴んでいるのかもしれない。

 足りない技術を身に着ける過程は苦しくも充実したものだし、努力の果実の味は挫折の苦みを忘れるほど甘美なものだ。


「ヒトの延長上にある鉄を斬るのではなく、鉄そのものを斬る力が僕には必要だ」


 だが、対人のスペシャリストである一輝が、ここに来てから動かない鉄ばかりを斬っている。その違和感を解きほぐすために、なぜ今の一輝に必要なのかがどうしても気になった。


「サムライにとって【斬鉄剣】は到らなければならないセクシー(境地)の一つなんだよ。今回はそのために実家に帰ってきたんだけど、婆様は『プリチーが足りない』の一点張りさ。何が言いたいかさっぱり分からないよね。一之瀬もそう思うだろ?」

「いやお前も似たようなモンだから」

「セクシーとプリチーは別物だよ?」

「違いがわかんねえよ。それよりなんで今のお前にその力が必要なんだ?」


 その問いに、一輝は軽く目を細める。


「知ってるかい? 今年の新入生、要するに僕たちは『新時代』と呼ばれる期待の世代なんだって事を」

「『新時代』? なんだそれ、初めて聞いた。それにさっきの質問と何の関係が……?」

「財閥系の旧家の秘蔵っ子、エルダー、トップランナーの二世、魔導革命で巨大化したの新興企業の御曹司。ダンジョンの恩恵や技術が一回りした結果、純粋培養されたセクシー達がこぞって冒険者高専に入学を果たしてる。鹿島の名を聞いた時に思い至るべきだったよ」


 そして、一輝はフウッと軽く息を吐いた後、驚くべき一言を口にした。



「鹿島に届かなかった斬撃、おそらく彼の武装は魔導外骨格(ドレス)だ」






―――――――







 

 魔導技術が齎した爆発的技術革新による第5次産業革命。混迷の時代に産声を上げた一つの企業がある。

 その名を『鹿島エーテライズ・インダストリー』


 鹿島工業創業者、鹿島慎之介は言う。


―――当時、私たちは残飯漁り会社と揶揄されていました。


 学者たちの間で新技術の発掘と研究に心血が注がれ、可能性と仮定のロジックばかりが持て囃された時代、巨大な夢の周りに漂う残滓を地道に実用化し続けた彼らは当初、セコイ連中だと冷笑すらされていたのだという。

 しかし、時代の荒波をこぎ出した、その小さな小さな小舟は、やがて大嵐が過ぎ去った後には巨大な戦艦へと変貌を遂げる。

 

 いつの時代も人々が求めるのは天上の夢などではなくて、手の届くところにある小さな幸せだ。

 特に大戦の爪痕生々しい復興時代、偉い学者の壮大な論文より地方企業の便利グッズが人々に受け入れられたのは至極当然の話と言えるだろう。

 魔導工学と既存技術の融合によってなされた補完現象。そうして痒い所に手を届かせる事を社是としてきた地方の一企業は瞬く間に膨れ上がり、膨大な既存技術を有するメーカーを飲み込み巨大化していく。


 あらゆる分野での融合を果たし、魔導工業の雄となった鹿島エーテライズ・インダストリーは、自衛軍の兵器調達をも引き受けるまでに成長し、今や日本を代表する巨大コングロマリットの一つだ。

 そんな企業が去年、軍需産業が主導する展覧会にとある兵器を出展した。拠点制圧、暴徒鎮圧用人型兵装


【Derect Response Ether Seven senses Skin】


 魔導外骨格(DRESS)である。

 大戦後、同盟国の技術や支援を頼らない安全保障は世界の常識で、各国が独自の技術を研究し鎬を削っている。しかし個性豊かな各国兵器群も、魔導を取り入れるという事は例外なく世界共通。

  

 魔導を動力として取り入れたパワードスーツは既に実用化しており、そんな中で発表された魔導外骨格(ドレス)のお披露目に興味を示す関係者は少なかった。2番煎じ、3番煎じに目を向けるほど進歩のスピードは緩くない。

 今更そんなものを作ってどうするのだ。製造・運用コストを鑑みると結局は戦略兵器足り得ない鉄くずではないか。

 そんな嘲笑を他所に、そのスペックが公表されるやいなや、鼻で笑っていた関係者は腰を抜かして脱糞したという。

 

 魔法の発現と同様に、魔導で形成される強化外骨格を展開。

 かつて量子力学という名の空想科学に頼った、夢の技術がそこにはあった。

 そしてそれ以上に人々を驚愕せしめた要素。それは―――


「ダンジョンでたった1個の武器として認識される…… ダンジョンに持ち込める世界唯一のパワードスーツ……」

「そう、君のエーテルガンと同じ理屈さ。更には概念的に鋼鉄の実体を伴うセクシー過ぎる兵装だね」

「ちょ、ちょっと待てよ! あれはまだ実用段階には無いって―――」


 冗談言うなよという俺の空笑いに、一輝は至極真剣な視線を返す。

 確信が込められた一輝の台詞に、俺は言葉を失った。


「実用化していなくとも、試作機(プロトタイプ)は存在するだろうね。そしてもし実用化がなされれば、ダンジョン攻略の有り様が変わるかもしれない」

「鹿島ってのはまさか……」

「そのまさかさ。魔導工業の雄、鹿島エーテライズ・インダストリーの御曹司。世界最先端の魔導武器を有する新興勢力、それが僕たちの敵だ」 


 ゴクリと唾を呑みこむ。

 一輝の言が本当ならば、それが何を意味するか考えるだけでも恐ろしい。

 大会で使用してもルール違反じゃない『兵器』が、たかだか高専生の大会で使用されるという事だ。そして武戦に勝つためには、俺たちはそいつを撃破しなければならないと言う事に他ならない。

 この先の規制がどうなるかは別として、ダンジョンが認める以上は少なくとも正当な武器だ。大会で使用できる武器は『ダンジョンに持ち込める装備』という解釈の余地無き一文が全てである。


「もしそれが本当だったら、んなもん勝てるわけねぇぞ。アニメやゲームのロボットに生身で挑むなんてイカれている……」


 未だ汗がしみ込む、白味がかった金髪を掻き上げたセクシーサムライが無邪気に笑う。

 飛び散る汗が演出するセクシープリズムがやけに眩しくて、俺はただ目を逸らした。


「それは違うよ一之瀬。君はあの時見せてくれたじゃないか。無力だった僕たちの前で、あのとてつもない絶望と相対して、だから今度は…… 僕の番さ。自身の価値(セクシー)を、君に示して見せる」


 俺は思わず苦笑した。

 いい加減、誤解されるのに疲れたという気持ちもある。

 一輝は火竜戦の事を言っているのだろう。武戦に目の敵にされるのも、あの女子リポーターに意味深な脅しをかけられるのも全部それが理由だった。

 俺だって馬鹿じゃない。クラスの連中が俺に一目置いている雰囲気も何となく感じているんだ。今更それをほじくり返したりはしないけど、それでも俺は知っている。

 あれはマグレだ。

 そう、俺は…… 俺は―――強くなんてない


「お前が俺に何を期待してるか知らねえけど、俺はそんなんじゃない。レベル1のJCにボコられるような実力しか無いんだ。過度に期待するのはやめろ」


 荒くなってしまった語調。キツく言い過ぎてしまったかと、横目で窺った一輝はなぜだか少し嬉しそうだった。

 それはまるで初めての我儘を生暖かく見守る恋人の様で、あまりのイケメン力に危うく惚れそうになった。電凸食らい過ぎて俺の心は荒み切っていたらしい。

 

「ははッ でも気落ちする事はないさ一之瀬。僕はね、生まれて初めてのプレゼントが刀だった。そしてそれを手に取った瞬間、教えられてもいないのに扱い方を理解した。どう抜けばセクシーに振れるか、どう斬ればセクシーか。妹も同じさ。僕たちはそれが当たり前の事だと思っていたんだ」

「それがエルダー(在来者)の血、って事か?」

「そうさ。時折、父さんのように適性の薄い人が現れるらしいけど大抵のエルダーは生まれながらの血に技術が刻まれている。知ってたかい? ウチのクラスにもエルダーは結構いるんだよ」


 突然変わった話題に目を白黒させる。

 もしかして気を使われたのだろうか。だとすればこの子どんだけイケメンなのさ。

 

「ああ、小森ちゃんだろ? あの結界とおっぱいは偉大な血を引く証拠だ。他に……多分葵もそうだけどおっぱいはまあ、アレだ」

「違うよ一之瀬、『おっぱい』じゃなくて『おつぱい』さ」

「よう相棒(バディ)」

「セクシー」


 差し出された拳にコツンと拳をぶつける。

 イケメンかと思ったらやっぱりただの馬鹿だったようで安心した。

 

「他にも財閥系の子たちは半分エルダーみたいなものだよ。カノンちゃんやジュリエッタちゃんだね。後は知る人ぞ知る有名どころは……」


 他に誰かいるのかとクラスメイトの顔を思い浮かべる。

 そうだとしても驚かないのが何人かいた。多々羅や虎穴さんあたりなら納得だ。変形式の変態武器なんか普通の人が扱えるものじゃないし、虎穴さんの札に至っては如何にもといった感じだ。

 しかし、一輝の口から飛び出したのは想像もしなかった人物の名だったのだ。


「田嶋かな」

「は? 田嶋!?」


佐々木家修行回は次で終わり

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