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第2章 班決定

ブックマーク等ありがとうございます。

本当に励みになっております。

あんまり山も谷も無い章なので、生暖かい目でお付き合いいただけると幸いです。

 これからの学校行事としては、夏休みまでに林間学校、夏休み中には夏キャンプ。10月のはじめには学年別学校対抗総合戦闘大会とイベントが目白押しで、泊りがけになってしまうものも多い。というか全部泊りがけである。

 

 林間学校とかキャンプとか聞くと、年頃男子としては溢れ出る妄想を堪えることが出来ないところだが、冒険者高専のものとなるとワケが違う。

 林間学校は森林フィールドを想定したガチンコサバイバル実習だし、キャンプに至っては無人島に行ってのリアル黄金○説だ。


 ダンジョンでは時間の流れが違う事も相まって、2日3日潜るのは当たり前。長ければ1週間、下手すれば数か月潜らなければ攻略できない階層もあったりして、冒険者にとって衣食住の現地調達は必須技術である。

 人類総ヒャッハー時代の冒険者達とは違って、豊かな生活にどっぷり浸かった新世代の冒険者はこれで脱落する人も少なくないらしい。


 そして今回は林間学校だ。

 ちょっとした市ほどもある広大な【息吹】のフィールドの中でも、特に鬱蒼と茂る森林フィールドがあり、普段は立ち入らない特殊仕様のそのフィールドで、俺たちは3泊4日間を生き抜かなくてはならない。


 資材と食材の持ち込みに制約を受けながら、現代人がお気楽に笑ってられるほど大自然は甘くない。加えてモンスターの襲撃まであるとなると、俺たちレベルのひよっこが単独で何とかできる範囲を超え、チームでの連携が何よりも重要となる。

 だから今回の班決めは、林間学校を左右する重要なポイントといえる。チームがまとまらないと目も当てられない事になるのは間違いないだろう。 

 



 クジ引きは教室の左側の列から引いていくということで、1列目は男子である。最初は尼子屋だった。

 尼子屋は特に気負った様子も無く、箱に手を突っ込んで折りたたまれた紙片を摘み出すと、ペリペリと開いていく。


「頼むッ 外れてくれッ!」

「A行くなよ~ 絶対行くなよ~?」

「はっずれろッ はっずれろッ はっずれろッ」


 馬鹿な野郎共による大合唱である。

 中には祈祷しているヤツもいるが、今時、小学生でもそんな事中々しない。

 尼子屋は開いた紙を見て、何でもない事みたいに呟いた。


「あ、Aだ」

「はい、尼子屋君はAチーム っと」


 モモ先生がアーニャの名前の下に「尼子屋」と書き込む。

 そして即座に大ブーイングである。


「尼子屋さ~ん! 勘弁してくださいよ~ッ!!」

「あんたモテ期突入だけじゃ足りないっつーんスか!?」

「おすそ分けをッ! お慈悲をどうかっ!!」

「その紙片は不幸の紙片で1週間以内に誰かに渡さないと……」


 

 くじ引きはどんどん進む。


「お願いします神様、どうかAを」

「アーニャさんとの明るい家族計画をッ」

「運命が俺を引き寄せる…… くっ とうとう結ばれてしまうのか……っ」 


 そうして1列目の男共がクジを引いては「ずーんっ」と轟沈する様を、他の男子は腹を抱え指を指して大爆笑。冒険科男子はメシウマが大好物である。

 次は女子の列だ。


「…………女狐」

「おー 神城さんはAチームですね~~ッ!」


 枠が一つ減ったという悲鳴と、女子でよかったという安堵の声が交錯する。

 葵さんはアーニャと一緒になったことに心底不満だったようで、舌打ちしながら席に戻った。お前何でアーニャの事嫌いなんだよ、尼子屋が不安そうにしてるじゃねえか。


 くじ引きも2列目、3列目が終わり、段々とチームの色みたいなものが見えてくる。

 例えばAチーム



「……女狐と一緒は不本意。だけど尼子屋はよろしくおねがいします」

「よろしくね、神城さん」



 アーニャ 葵 尼子屋


 火竜戦に挑んだ話題のメンツで、バランスも良く、そして実力派揃いである。アーニャの人気を除いてもなお、当たりの班という認識は全員が持っているだろう。

 対照的なのがEチームである。


「えぇ~とぉ あーにゃんと一緒じゃないのはぁ ナナ残念だけどぉ~ がんばろぅねぇ~」 

「やっべ! 俺意外みんな馬鹿ってかーちゃんに言っとかねーと!」

「オイオイ、オレ以外みんなバカじゃねーか。大丈夫かよ」


 多々羅ナナ、旨鹿(うましか)龍之介、弦月奏


 3人全員が前衛。

 我がクラスの馬鹿3強のうち2名までもが名を連ね、脳筋バカと誉れ高い男女の弦月奏が加わった馬鹿チームである。

 3人とも見た目が非常に良いだけに、残念臭もまた半端ない。



 そして4列目のくじ引きが始まった。

 いつも自信満々の高飛車女、西郷寺カノンが金髪ドリルをプルプル震わせながら不安そうに天を仰ぎ、何やらブツブツと呟いている。


「おねがいします神様っ りょうへ――― Aチームを引かせてください…… えいっ!」

「はーい、カノンちゃんはCチームっと」


 ずどーんっ と縦線が入る勢いで項垂れるドリル。そして彼女の肩にそっと手を置く人物がいた。

 ドリルが振り向くと、そこには満面の笑顔の千田君。彼の手には「C」と書かれた紙片があった。



「イヤあああぁぁあぁぁッッ! 」



 ドリルが真っ白になって崩れ落ちる。

 そしてその横で、小さくガッツポーズをする女子の姿が在った。



「よしッ 西郷寺さんには悪いけどっ よし……っ」 


 

 比佐山郁美。

 【J】に拘束されたドリルチームの一人である。


 俺は知っている。いや、鈍感系主人公の尼子屋とドリル以外はみんな気付いているだろう。あの事件以降、比佐山郁美が尼子屋をチラチラ見ては顔を赤くしていることを。


 はた目から見ると、彼女達は尼子屋に対して酷い仕打ちをしてきた。

 堂々とパシリに使い、暴言を吐き、足で小突く。そんな扱いをずっと続けてきた。

 そしてあの火竜戦である。


 散々酷い事をした相手が、自分たちを助けるために名乗りを上げ、絶対に無理な戦いへとその身を投げうった。強靭な後ろ脚に蹴り飛ばされ、何度も何度も血反吐を吐きながら立ち上がり、敵うはずも無い敵へと再び斬りかかる。

 しかも、後に聞けば最初に助けに行くと叫んだのはその当人だという。

 

 再生回数が少なすぎて誰も注目していないが、彼女達4人を映した動画も実はUPされている。その中で彼女は、まるで想い人の帰りを待つ少女の様に手を組み、囚われのお姫様が助けに来た騎士を見上げる様な視線で、その戦いを見守っていた。

 彼女の視線が誰を追っていたかなど、今更議論する必要も無かった。

 比佐山は精一杯取り繕った表情で、さも不本意だとばかりにぼやいた。



「いや~ 尼子屋と一緒なんて最悪! なんなのよもう! ふんとに! ふんとにもー!」

 


 俺たち男子はいつか来る修羅場を夢想して、ニマニマと最低な笑顔を浮かべていた。

 モテ男など地獄に落ちるがいいっ!


 そして俺の番だ。

 予感があった。

 奇しくも、あの地獄を生き抜いたメンツが丸ごとAチームに入っている。これは戦の神の思し召しに他ならない。残りの1席、きっとそれを引くのは俺だ。

 同じことを思ったのであろう、男子共の敵意と殺意を込めた視線を一身に浴びる。誰しもが固唾を飲んで俺の引くクジに注目していた。

 そして俺はおもむろに紙片を引き抜き――――




「おおっと! ミナト君はEチームです~!」







 ◇ ◇ ◇ ◇






 くじ引きの後は班に分かれて話し合いタイム。


「まずはチームリーダーを決めて下さ~い!」


 と言ったっきり、モモ先生は鼻歌を歌いながらスイーツ特集が組まれた雑誌に夢中だ。

 


「……リーダーは尼子屋がいい」

「えっ! 僕がっ!? 東雲君がいるでしょ!」

「ハア!? 納得出来ないわ! だけど、他にやりたい人がいないならしょうがないかもねっ!」



 Aチーム最後の席を獲得したのは、なんとクラス委員長の東雲だった。

 前衛も後方支援も出来るオールラウンダーな東雲と、突撃一筋の葵、先を見て事前に危険を察知する尼子屋に、前衛組の中で女子力も戦闘力の高いツンデレ戦士比佐山。そして極めつけは同世代最強のイモ戦士、アーニャである。

 バランスも良ければ戦闘力も高い。冒険科1組の最強布陣に近い形だ。


「リーダーとかめんどくせえ、千田、お前やれよ」

「拙者、千田氏こそリーダーに相応しき人物とお見受けするでござるぅ~」

「私は、誰でも、いい、です」

「もう勝手にしてくださいませ……」


 Cチームのリーダーはまさかの千田君になりそうだった。

 結果的にAチーム以外もそこそこバランスのとれたチームになっている。Cチームでさえも、前衛を率いる北里、支援組の八代や、病弱だが強い田嶋さんといった何気に優秀なメンツが揃っている。

 

 しかし、俺たちEチームだが……


「はははっ モンスターなんかオレが一捻りにしてやんよ」

「ナナもぉ 強ぃよぉ~」

「一之瀬、かーちゃんがお前のサイン貰ってこいってうるさくて」



 実に楽しそうなセリフを吐いた人物を紹介すると、上から


 問題あらば全て物理で解決する拳闘士の男女(おとこおんな) 弦月奏

 紫外線上等、頭の中までこんがり日焼けしたアイドル冒険者志望のギャル 多々羅ナナ

 8人兄弟の長男、肝っ玉かーちゃんに頭が上がらない剣士 旨鹿(うましか)龍之介


 俺を含め5人中4人が前衛、そしてそのうち3人までもが馬鹿である。底辺高も底辺高で、特に頭の悪いやつが集まる冒険科の中でもさらに生え抜きの精鋭である。


「こ、小森ですっ! よろ、よろしくっ おねがいしますっ!」 


 ペコリと頭を下げたのは、身長150cmに満たない小さな体に、大きな夢を二つもぶら下げた結界師。 

 チームの唯一の癒しである小動物系ロリきょぬー様。小森胡桃(くるみ)ちゃんだ。


 いつもオドオドして引っ込み思案な彼女は、その愛らしい小顔を不安一色にして馬鹿どもの様子を伺っている。実は俺の中で「レベルアップ(絶頂)を拝みたい女子ランキング」トップ3に入る子なのだが、如何せん冒険者としての実力はぶっちぎりで低い。もしかして一般人にも負けるんじゃなかろうか。

 

 俺は脱力して項垂れながら言った。


「んで、リーダーはどうすんだよ……」


 するとすぐさま馬鹿3人が気勢を上げる。


「はいはいはい! オレがやる! リーダーっつったらオレしかいねーだろ!!」

「はぁ~い!! ナナがぁ 適任だとおもぅよぉ~っ!!」

「8人兄弟の長男として俺が適任じゃね?」


 どうにかしてくれと胡桃ちゃんを見ると、視線に気づいた彼女がワタワタと手を振った。


「え、そのっ わたし以外なら誰でも……っ」


 俺は机に突っ伏して呻く。



「誰でもいいからまとめてくれこのチーム……」




 

感想いただけると嬉しいです。

ちなみにくるみちゃんは、2話か3話でちょろっとだけ登場したロリきょぬー様です

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