第3話 ただのクラスメイト
しばらく沈黙が続いていた。
俺は中野さんのなすがままに肩を預け歩いていた。
「迷いがなさそうに歩いてるみたいだけどもしかして当てがあるの?」
「この森を歩いているとき、明かりが見えたの」
「だけど、人の声が聞こえた気がして。一緒にいた渡会くんかなって思ったの。」
だから向かってきてくれたのか。優しい。
「本当にありがとう。命の恩人だよ。」
「にしても、弓矢が使えるの?」
「私、弓道部なの。近距離だし、的も大きかったから。」
そうだったのか。納得のジョブ選択だな。にしても、
躊躇いもなく人型の生き物を狩れるものなのか。いや、勇気を出して人命を優先してくれたんだろう。
「ここ、どこなんだろうね」
「日本ではなさそうだよね。木の感じとか。なんでこんなとこいるんだろっ」
「ゲームの中ってことはないか?」
この腹の痛みがゲームで再現できるわけはない。聞くだけ意味はない。ただ、帰るにはどうすればいいか。とか、そういった議論を避けたかったのだ。
にしても、中野さんは2人だと意外と話してくれる。もっと寡黙なイメージがあったが。
「もしそうだったら、えっと、すごいね。」
「ところでその本と杖はなに?魔法使いになったってことかな?」
「そうらしいんだけど、技術までセットで授けてくれてないみたいなんだ。」
「でも炎はでたから、もう少しで使いこなせるかな!」
強がってみせる。本当は呪文を解読しないことには魔法なんて使えないだろう。
「あ、明かりが見えてきたよ。」
「ほんとだ」
街というよりは村だな。だがそこまで狭くもなさそうだ。
RPGの始まりの村って感じだな。村長へ挨拶か?冒険者ギルドへ登録か?いやその前に治療か。
やがて森を抜け、舗装された道を歩く。
村の門番みたいなのが1人いるし、そいつに事情を説明するとしよう。
「誰だお前ら!」
話しかける前に俺らに気づいた。
知ってる言語だ。
「えっと、俺たちは……」
「おい、なんだその怪我、こっちにこい!」
名乗ろうとしたが、親切で、話が早くてありがたい。
門番に事情を聞かれたが、流石に屋上から突然見知らぬ森に彷徨ったと伝えたら意味不明だ。
適当に嘘をつくことにし、森で遭難したと伝え、道中で緑の怪物に襲われたと伝えたら、医者に連れてくれた。
医者で診てもらってる間に、門番曰く、俺たちに宿を用意してくれるとのことだ。
宿に行く前に俺たちにご飯も食べさせてくれた。あまりの手厚い扱いに逆に腹の中を疑ってしまうほどだ。
というか門番がずっと案内してくれるもんだから、村の入り口を見張る仕事はいいのか?と聞いたら、滅多にこの村に人も厄介者もやってこないから、してもしなくても変わらないとのことだ。
俺たちは案内された宿に向かった。
受付で鍵をもらい、部屋へ案内されたそのとき、
重大なミスに気づく。
鍵が一つ。しかない。一部屋、貸してくれるってことだよな。しまった、俺たちの関係性を伝え忘れた。
俺たちはただのクラスメイトだ。
部屋を共有し同じベッドで寝るような関係性じゃないんだ。ましてや今日初めて話したんだ。
「あ、えっと部屋もう一つないか聞いてくる」
そう提案し、俺は受付の方に行ったが、受付のおじいちゃんはいなかった。もう遅いから受付終了て感じか。
先に受付にいった俺に中野さんが追いついた。
「受付の人いないみたいなんだ、どうしよう」
「そっか、でも、さらに一部屋も貸してもらうのは流石に気が引けるし、私は一つの部屋でも大丈夫だよ。」
そうだよな。これ以上ご厚意に甘えるわけにはいかない。
「わかったありがとう。俺ももちろん大丈夫だ。」
俺たちは2人で同じ部屋に泊まることになってしまった。




