表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【百万PV感謝!】転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第二十八章:お忍び旅行

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

305/397

お忍び旅行

 露天風呂にて摩耶(まや)が伊吹へと抱き着き、どちらからともなく唇を重ねた後、伊吹が部屋に戻ろうと提案した。

 確実にのぼせるか風邪を引くかするだろうと考えたからだ。


 手早く身体を拭いて、脱衣所で控えていた侍女に部屋を用意するよう伊吹が頼むと、すでに智紗世(ちさよ)によって手配されていた。

 大浴場からほど近い部屋に案内され、二人きりにされた伊吹と摩耶は、身体を重ねる事となった。



「失礼致します」


 スマートフォン経由で呼び出された智紗世が、ノックをした後に事後の部屋へと入って来た。


「摩耶の侍女を呼んでもらえる?

 あと、午後からの予定の確認がしたいんだけど」


 全裸のまま智紗世へ指示を出す伊吹を見つつ、摩耶は恥ずかしそうに身体を掛け布団で隠している。


「午後からのご予定ですが、摩耶殿下は京都市内にて交換留学生の会合に出席なさる予定です。

 摩耶殿下のご様子を確認させて頂いた上で、延期にするか中止にするかとアルティアン王宮は考えておいでです」


 智紗世の口ぶりから、摩耶は自分の母親と姉が自分と伊吹が結ばれた事を認識していると気付き、さらに顔を真っ赤に染める。


「差し出がましい提案かも知れませんが、摩耶殿下はもうしばらくお休みになられた方がよろしいかと。

 昨夜は徹夜で対応に追われていた事でしょうし……」


 朝から励んだ訳ですから。とまでは言わず、智紗世は伊吹へ目線を送る。


「今が八時半で、予定は十四時か。アルティアン側から川下りの了解は得れた?」


「残念ながら、得られました」


 京都市内までの移動手段として、伊吹は観光用の舟で川を下る事を提案していた。智紗世が調べた限り、死亡事故も報告されている為、あまり積極的に勧めたくなかったのだが、伊吹がお忍び旅行らしいからと押し切った形となる。


「そっか。

 ここから船乗り場まで三十分。乗って一時間半。そこから車で二十分。お昼ご飯に一時間、もいらないか」


「いえ、ご主人様だけが昼食を摂られる訳ではありませんので」


「だよね。となると、ゆっくり出来るのは二時間か。

 摩耶、とりあえずこのまま二時間仮眠しよう。寝てないのがアルティアンの学生に悟られると、気を遣わせてしまうだろうし」


 摩耶は言葉を発さず、頷く事で答える。


「分かりました。それではまた、二時間後に参ります。

 ……あまり喉に負担を掛けられませんように」


 智紗世が残した言葉が、自分に向けられたものだと理解し、摩耶はさらに縮こまるのだった。



 その後、伊吹と摩耶はゆっくりと休憩し、再び風呂で汗を流し、簡単な食事を口にした後に旅館を出発した。

 ゆっくりと休憩をし過ぎたので、出先で昼食を摂る時間的余裕がなくなってしまった。


「車の中で寝ると良いよ」


 ゆっくりと休憩したのだが、一睡もしていない為、伊吹が摩耶に移動の車内で寝るよう勧める。

 何か言い返したいと思う摩耶だが、それほど気力も体力も残っていなかったので、言われるがまま目を閉じた。



「摩耶殿下がお越しになった時にお乗りになられた、あの線路が出来るまでは筏と荷船による水運利用が盛んでした。千三百年間ほどでございます」


 船乗り場に到着し、船頭に渡された救命胴衣を身に着けつつ、説明に耳を傾ける伊吹と摩耶。

 その様子を、首相官邸が手配した報道関係者が撮影している。二人の逢瀬は非公式なものであるという建前の元、ひっそりと取材をさせている。

 また、ネットニュースには二人がその場を離れた一時間後に報道するという決まりを設けている。


「伊吹殿下ぁー!!」

「ふく、じゃなくって伊吹様ぁーー!!」

「いつもありがとうございまぁーーす!!」


 伊吹は舟に乗る前に、摩耶をその場に残して声を掛けてくれた人々へと歩み寄る。


「皆さん、こんにちは」


 まさか声を掛けられるとは思っていなかった人々が、緊張のあまり固まってしまう。


「私と摩耶殿下はお忍び旅行中なので、誰にも教えないで下さいね。少なくとも明日までは」


 そう言って、伊吹が口元へ人差し指を付けると、見ていた人々が釣られて口元へ人差し指を持っていく。


「約束ですよ」


 そう言い残して伊吹が舟へと戻っていくと、人々はお互いに顔を見て、頷き合う。



「国民の事を信じておられるのですね」


 舟に乗り込んだ伊吹に対し、摩耶がそう声を掛ける。

 一部の自国民の行動に振り回されてしまった形になり、摩耶には思うところがあるようだ。


「そんな大層なもんじゃないよ。別に約束を破られても僕は大きな被害を受けないからね。

 ただ、守ってくれたら嬉しいなぁって程度だよ」


 伊吹はつい最近、自身が皇族である事を知らされた。

 一方、摩耶は生まれた時から王族として育てられており、両者の間には男性と女性であるという以外にも大きな差がある。


「このお忍び旅行が終わって、日本で予定している摩耶の公務日程が終わったら、ゆっくりとお互いの事を話そう。

 ただ子供が出来ればそれで良い、とは僕は思わないんだよね。

 自分の子供を身籠る人の事を良く知りたいし、自分の事も知っておいて欲しいと思うし」


 舟が川を下り始め、速度が上がり揺れが大きくなる。

 伊吹が摩耶へと右手を差し出すと、摩耶は微笑んで左手を重ねたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ