式部教子・式部司
式部教子と司の姉妹がVividColorsの本社ビルへ住むようになったのは、伊吹が藍子と燈子との結婚の儀を終えた年末の押し迫った時の事。
結婚後すぐという事と、年末であるという事もあり、二人は伊吹に対して特に何かを教えるというような事はしていなかった。
さらに、年明け早々にAlphadealとの面会があり、そのままAlphadeal、そして米国との戦争状態へ突入した。
二人はハワイで伊吹がデイヴィッドと面会する際、そして米国大統領と面会する際の儀礼作法などを伊吹に教えるなど、裏方としての役割を全うしていた。
作法といっても、それほど難しいものではない。
安易な約束事をしない、謙遜をしない、必要以上に相手に同意をしない。
など、式部姉妹は伊吹に対し、皇族としての立場での発言に気を付ける事を重点的に教えた。
伊吹は皇宮内の儀式にはあまり参加する予定がないので、式部姉妹の仕事は外交上の儀礼的な教育が主となる。
「頭を下げてはなりません。
伊吹様の背中には皇国八千万人の国民の生活と立場が掛かっております」
「分かりました、と言ってはなりません。承諾と受け取られる可能性があります。
相槌はなるほど、と口にするようにして下さい」
現在、治ノ棟、副社長室にて、伊吹は式部姉妹より外交上の態度や返答の仕方についての指導を受けている。
「お疲れでした、伊吹様。ご立派でした」
「今日見せておられた態度であれば、十分にお勤めが果たせるかと思われます」
教子も司も、伊吹に対しては褒めて伸ばす方針で指導を行っている。
この世界では、男性は社会に出るなどの積極的な活動を行わない。
社会は女性を中心として回っており、政治も経済も女性が動かしている。
ただ、男性の代理として女性が任されている場合も多く、皇室や王室のある国は特にその傾向が強い。
そう言った国の国民は、男性に頼られ、男性に従い、男性の為に働き、男性に褒められるという事が何よりの名誉と考える。
そしてその考えは、式部姉妹も同様である。
「実際に国賓を招く際は常に教子と司が控えてくれるんでしょ?
じゃあ特に問題ないかな。二人がいてくれるだけで心強いし。
よろしく頼むね、頼りにしてるよ」
伊吹にそう声を掛けられた教子と司は、それだけで心が満たされ、うっとりと表情を蕩けさせてしまう。
「もちろんでございます。
この教子、いつ如何なる時も伊吹様のおそばに控えております」
「この司、誠心誠意伊吹様へお仕えする所存でございます」
「うーん、堅いなぁ。
今は国賓がいる訳じゃないんだし、もっと気軽に話してくれない?
何て言うか、弟に話すような感じとかさぁ」
伊吹は伊織の初めての子供であり、この世界には血の繋がった妹が無数に存在すると予想している。
それだけではなく、乃絵流を自称する多恵子や美羽などの年上の妹がいるので、妹キャラに食傷気味である。
前世では姉が二人もいた伊吹だが、この世界においては姉はいない。
前世では辟易としていた姉という存在であるが、勝手なもので、いなければいないで求めてしまうもののようだ。
美哉と橘香は伊吹の二つ年上にあたるが、伊吹にとって二人はあくまで幼馴染なので、姉キャラではない。
智枝に対しては弟として甘える事もある伊吹だが、智枝は弟キャラが性癖に刺さり過ぎるので、日常で伊吹が弟として甘えてしまうと智枝の生活に支障を来たす恐れがある。
そこで、伊吹は式部姉妹を姉認定しようとしたのだが。
「いいい伊吹様をおおお弟など、おおお恐れ多い事です!!」
「そそそそうです! ごごごご勘弁下さいませ!!」
「えぇ……、滅茶苦茶動揺してるじゃん」
伊吹はもしやこの二人も智枝と同じく弟属性持ちなのではと思ったが、ゆっくりと話を聞く限り、そういった性的志向ではなく、単純に本当に恐れ多いと思っている事が分かった。
「あのね、教子お姉ちゃんと司お姉ちゃん。
僕もたまにはお姉ちゃんに甘えたいなと思う事があるんだよ。
だからね、二人が僕を甘やかしてくれたら嬉しいなって思うんだけど、どうかな?」
伊吹からそんな言葉を受けて、恐縮しながらも二人は相談し合い、伊吹の望みを叶えるべく努力するという方針を決めた。
「分かったわ、伊吹。
お姉ちゃん達には、いっぱい甘えて良いからね?」
「うん、ありがとう教子お姉ちゃん」
「さぁ伊吹。
さっそく私達がお風呂で身体を洗ってあげるからね」
「うん、司お姉ちゃん。
って、結局そっち方向になるのね。まぁ良いけど」
教子お姉ちゃんと司お姉ちゃんは、風呂場では弟の伊吹のヤンチャぶりに振り回されて、ひぃひぃと泣かされてしまうのだった。




