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【百万PV感謝!】転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第十六章:VividColors VS Alphadeal

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終わりの始まり

 倒れている橘香(きっか)へ駆け寄り、伊吹(いぶき)が抱き起こす。


「大丈夫か!? 誰か、担架を持って来てくれ!」


 智枝(ともえ)紫乃(しの)が備え付けの担架を運んで来たので、伊吹が橘香を抱き上げて乗せる。


「ぶつかっただけ、大丈夫だと思う」


「そうか。でも心配だから加藤先生に診てもらおう」


 加藤先生とは()ノ塔に常勤している産婦人科医の事だ。


 伊吹が担架に付き添いながらエレベーターへ向かうと、エレベーターの前でこちらの様子を窺っているライルと執事と侍女がいた。


 VividColorsヴィヴィッドカラーズの四棟のビルは、警備の関係でキーがないとエレベーターすら乗れないようになっている。


 ライルは応接室を飛び出て案内もなく廊下を歩き、女性にぶつかっても気にせずエレベーターを呼ぶも来ず、イライラしながらボタンを連打していたところ、自分がぶつかった女性がどうやら伊吹の大切な人らしいと気付いた。

 ライルと執事と侍女は、どんどん自分達の立場が悪くなっていくのを感じて青ざめている。


「どけ、邪魔だ」


 伊吹がエレベーターの前から動かなかったライルの肩を突き飛ばし、壁へと追いやる。

 ライルが何やらわめいているが無視をする。


「あの、その女性は……?」


 ライルの執事が質問した為、伊吹が今の今まで着けていたドット絵のお面を取り、素顔を見せて質問を質問で返す。


「この子にぶつかったのは誰だ?」


「ら、ライル様です」


 執事が視線だけで射殺さんとばかりに睨みつける伊吹に怯え、橘香にぶつかったのがライルであると白状してしまう。


「そうか。

 おいおっさん。お前は皇族の妻にぶつかり、お腹の子に危害を加えた。

 俺の子供だ。

 三ノ宮伊吹親王さんのみやいぶきしんのうの名において、俺はお前を許さない。

 大日本皇国の全力でもってAlphadealを潰す。覚悟しとけ」


 すかさずメアリーが通訳してライルへ伝える。

 ライルは自分がしでかした事を理解し、腰が抜けて床へへたり込んだ。


 執事がライルへ謝るようにと叫んでいるが、ライルは茫然としたまま何の反応も示さない。

 そしてエレベーターが到着し、橘香を乗せた担架を持ったまま、伊吹はエレベーターへ乗り込む。


「そいつら藍吹伊通(あぶいどお)りの外に捨てといて」


 栗田(くりた)へそう伝えると、ちょうどエレベーターの扉が閉まった。



「何でここにいたの?」


 担架に乗っている橘香の手を握り、問い掛ける伊吹。


「先生が動けるなら散歩した方が良いって言ってたから……。ごめんなさい」


「いや、謝る必要はないよ。悪いのはぶつかって来たあいつだ。

 でも、何で(きょく)ノ塔に?」


 散歩するのなら室内空中庭園がある(しょう)ノ塔の方が良いのでは、と思った伊吹はそう橘香に問い掛けた。


「……いっちゃんの声が聞こえるかなって」


 伊吹にようやく笑みが戻る。

 付き添っていた智枝と紫乃も、ようやく緊張感から解放された。

 二人とも、これほど怒りを露わにしている伊吹を見た事がなかったので、どうなるのかとハラハラしていたのだ。



 橘香の診察が終わり、特に異常は見られないと加藤医師から診断が出た。

 念の為に今日はゆっくり過ごすようにと言われ、伊吹は橘香を車椅子に乗せて、()ノ塔にある橘香の自室へ送り届けた。


 同室である美哉(みや)は、ベッドで眠っていた。伊吹はそっと美哉の額にキスをする。

 美哉と橘香は二人で一部屋が良いと望んだので、普段から同じ部屋で過ごすようにしている。

 美哉はつわりで気分が優れず、橘香だけが散歩に出ていたのだ。

 伊吹は橘香がベッドへ横になったのを見届け、同じく額にキスをして、お腹を愛おしそうに撫でた。



 橘香の部屋を出ると、廊下に藍子と智枝とメアリーが待機していた。


「あいつらは?」


「指示通り外に連れ出してもらったよ。

 三人はゲートの外の待機室で待ってたお付きの人達にわーわー言われて困ってるみたい」


 藍子が宮坂みやさか警備保障からの報告を伝えた。


「そっか。

 ついカッとなって親王って名乗っちゃったけど、何からすべきかな。

 百三十兆円のコングロマリットを潰せないにしても、可能な限り力を削り取る方向で攻撃したいなぁ。

 監視カメラの映像も使えなくはないけど、うちの技術力あり過ぎて逆に捏造を疑われる可能性もあるし」


 伊吹の中では、すでにAlphadealとは戦争状態に突入している。

 次は何を使ってどのように追い詰めていくかを考えなければならない。


「まずは内閣官房長官に連絡か?

 それとも皇宮の心乃夏(このか)さんか……」


「ご主人様、マスコミが報道を開始したようです」


 智枝がスマートフォンの画面を伊吹に見せる。

 Alphadealが会いたいと言って来た時点で、マスコミにAlphadealの関係者がVividColors本社のある藍吹伊通(あぶいどお)り一丁目に来るという情報をあらかじめリークしておいたのだ。



 去年秋に起こった振込遅延騒動と、先ほどのYoungNatterヤンナッターのVividColors公式アカウントの呟きとを合わせると、交渉が決裂した事は明らかだ。


 藍吹伊通りのゲート外で待機していた報道陣が、サラがVividColorsの用意した車に乗ってゲートを通過する場面と、ライルがお付きに詰め寄られている場面をカメラで押さえていたようで、すでに写真や動画が出回っている。

 伊吹が自分のスマートフォンでそれらの報道を確認していると、智枝と藍子のスマートフォンに着信が入る。


「ご主人様、内閣府と外務省と宮内省からそれぞれ次官級の人員を向かわせるとの事です。

 受け入れますか?」


「おば様より宮坂家からも人を寄越すと申し出があったよ。

 こっちも受け入れる?」


 伊吹は二人に向き直り、指示を出す。


「大会議室に対Alphadeal参謀本部を設置しようか。

 宮坂家には大いに稼いでもらおう。

 どれだけ搾り取れるかねぇ」


 伊吹がまた悪い笑みを浮かべる。

 そうそう、と少し前に重要な役割を指示していた栗田(くりた)へ問い掛ける。


「確保出来てますか?」


「はい、(しょう)ノ塔へぶち込んでおくよう指示を出しましたので」


 伊吹は栗田の肩を叩いて労った。

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