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未来からの伝言  作者: 涼
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新しい未来へ

■ 2019年2月24日(日)


朝8:00に目が覚めた。昨日から莉奈が妹の佳織が使っていた部屋で寝ている。もう起きているなら気をつかって出てこないのかもしれない。俺は佳織が使ってた部屋の前に行ってドアのノックしてみた。中から「はーい」という声が聞こえたので俺はドアを開けた。莉奈が「おはよう」と言ったので、俺も「莉奈、おはよう」と言った。俺は佳織の部屋に入っていって莉奈を抱きしめた。莉奈は「ちょっと祐樹君、どうしたの?」と言ったので、俺は「莉奈が無事でよかった」と言った。その後、俺と莉奈はキッチンへ行って朝食を食べた。そして母親が俺の顔を見て「今日は二人でどこか行くの?」と聞いてきたので俺は「特に予定はないよ」と答えた。朝食を食べ終えて、俺と莉奈は俺の部屋に入った。特にすることもなかったので、莉奈と一緒にインターネットで山記事を見ていた。しばらく二人で山の話をしながら過ごしていると莉奈が「ところで祐樹君、今日、全てを話してくれるって言ってたよね?」と言った。俺は「その話か・・・わかった。じゃあ心して聞いてほしい」と言った。そして俺は話しはじめた。


「莉奈、前に重要な人物の話をしたと思うけど、まずそれは未来人とだけ言っておくよ。名前に関しては絶対に言えない」

「そうなんだ。未来人か・・・祐樹君はその人から何か聞いたんだよね?」

「その未来人が言ってたことがね、信じられないかもしれないけど昨日の2月23日に莉奈は死ぬ運命にあったんだ」

「え?わたしが昨日死ぬ運命にあったってどういうこと?」

「前に別の未来線からやってきた藤堂さんのことは覚えてる?」

「覚えてるよ。あの藤堂さんの世界線では祐樹君とわたしは死んでいたんだよね?」

「この世の中にはいくつかの世界線が存在するんだけど、俺達がもともといた世界線はナンバー5なんだ。そのナンバー5の世界線で莉奈は2月23日に死ぬ運命にあった」

「でも、今日は2月24日でわたしは生きてるよ。どういうこと?」

「簡単に言うと俺が莉奈の運命を変えたんだよ。本当は死ぬ運命であったのを新しく生きている運命に変えたんだよ」

「わたしの運命を変えたって意味がちょっとわからないんだけど、本当は死ぬ運命であったわたしが今生きてるのはなぜなの?」

「それは、ナンバー5という世界線を俺は分岐させたんだよ。つまり今いるのはナンバー5の世界線ではなくて、ナンバー17という新しい世界線にいるんだよ」

「世界線を分岐させたって祐樹君は何をしたの?」

「俺は3ヶ月前から未来や過去の出来事を改変させ続けたんだ。本当は大ケガをしたり死ぬ運命だった人をタイムリープを使って助けに行ったり、あらゆる出来事に逆らいながら未来を変えた。そのおかげで世界線を分岐させることができた」

「だから3ヶ月前くらいから祐樹君は悲しそうな表情をしてたんだね?」

「そうだよ。世界線の分岐は簡単にできなかった。このままだと莉奈は死んでしまうことになると考えると悲しくなってきた」

「そういうことなら、どうしてそのことをわたしに話してくれなかったの?」

「もし、そんなことを話したら、莉奈は死を選ぶと思ったんだよ。俺に無理をさせないように行動すると思った。でもそれだと世界線は分岐しないんだよ。だから今まで言わなかった」

「そうだね。わたしはおそらくそんな運命であるなら祐樹君に気をつかってたと思う。無理させないようにしてたと思う」

「それにそんなことを言ったら莉奈にとってそれは死の宣告になるわけだから、絶対に言うわけにいかなかったんだよ」

「西浦さん達と一緒にスキーに行った時もそうだったんだね?」

「そうだよ。あれは西浦さんがスノーボードでケガをするということを阻止しなければならなかった。全ては未来を改変させるためにとってた行動なんだよ」

「そっか・・・祐樹君はそうやってわたしの知らないところで大変なことしてたんだね」

「俺は絶対に莉奈を死なせたくなかった。そのためなら最後の最後まで諦めずに過去や未来を改変し続けた。そして世界線は分岐して、莉奈の運命は変わった。俺は喜びに満ち溢れたよ」

「じゃあわたしが今生きてられるのは祐樹君が運命を変えてくれたからなんだね。祐樹君に守ってもらった命なんだね」

「まあ、俺が莉奈の命を守ったというのはどうかと思うけど、莉奈が生きている新しい世界線が誕生した。だから莉奈はその命を大切にしてほしい」

「祐樹君に守ってくれた命・・・それは絶対に大切にする。わたしは頑張って生きるよ」

「これが世界線の状態を表してる数値なんだけど、今は17.03と表示されてる。この17という整数値が大きな世界線なんだけど、この整数値がずっと5の状態が続いた。俺は2月23日が迫ってくればくるほど悲しくなってきた」

「わたしのために祐樹君は頑張ってくれたんだね。本当にありがとう・・・わたし頑張って生きていく」

「西浦さんもかなり協力してくれたから、今度会った時は西浦さんにもお礼を言っておいてね」

「うん。わたしのためにそこまでやってくれたなんて・・・嬉しいよ」


莉奈は涙を流しながら何度も「ありがとう」と言った。俺は莉奈の頭をなでながら「俺が望んだ未来だから」と言った。全てを莉奈に話した俺は心がスッキリした。今まで何度も莉奈には黙っていて話せなかった辛さから解放されたのだ。ナンバー5の世界線にいる2033年の俺には感謝したい気持ちでいっぱいだった。それにしても、もし俺がナンバー5の世界線にタイムリープをして何もしないでいると莉奈は本当に死んでしまうのだろうか。それとも、もうナンバー5の世界線にタイムリープできなくなったのだろうか。それはわからないが余計なことはしないでおこうと思った。その後、俺は西浦真美に電話をして莉奈が無事に生きてることを伝えた。


■ 2019年2月27日(水)


世界線が分岐したといっても日常生活には何の変化もなかった。俺は10:00前に会社に出勤して自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。システム開発部のデスクフロアを見渡すと池上有希、小松結衣、児島信二など普段通りにしている。新しい世界線でも特殊能力はまだ使えるようだ。黙々と業務をしていると西浦真美から『ちょっと休憩室にきてくれない?』とテレパシーが送られてきた。俺は西浦真美に『すぐに行くよ』とテレパシーを送った。


休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が休憩室に入ってきた。西浦真美は椅子に座って「ふー」とため息をつくと話しはじめた。


「水嶋君、莉奈ちゃんが無事で本当によかったわね。わたしもホッとしたわ」

「ここは新しい世界線みたいだからね。これからの未来は俺達が作っていくしかないんだよ」

「莉奈ちゃんのことはそれでいいんだけど、水嶋君に一つ聞きたいことがあるのよ」

「俺に聞きたいことって?」

「以前、別の世界線からやってきた藤堂君のことなんだけど、たしかナンバー11の世界線だったかしら?」

「ああ、あの世界線のナンバーは11だね。それがどうかしたの?」

「ナンバー11の世界線の藤堂君とわたしの関係ってかなり親密な恋愛関係なんじゃないの?」

「それは・・・うーん」

「やっぱり水嶋君は何か知ってるのね?もういいから話してくれないかしら」

「もうこの世界線では西浦さんは藤堂さんと付き合っているから話すけど、西浦さんの想像する通りだよ。二人は結婚式の日程まで決まってるらしい」

「わたしと藤堂君が結婚!?この世界線ではまだそこまで考えられないわ。でもナンバー11の世界線に行った時に怪しいと思ってたのよ」

「まあ、ナンバー11の世界線の藤堂さんの行動見てればわかるよね」

「それにわたしのことをときどき真美って呼び捨てにしてたから、ずっともしかと思っていたのよ。でもどうして水嶋君はわたしにそのことを言わなかったの?」

「ナンバー11の世界線で藤堂さんと西浦さんが結ばれるとすれば、この世界線でも二人は結ばれるはず。でも、俺がそれを言うと二人は気まずくなって本来あるべき関係にならない気がしたからだよ」

「そういうことだったのね。でも今は藤堂君のことを真剣に考えてるから大丈夫よ」

「藤堂さんと西浦さんはお似合いだと思うよ。俺は応援したいって思ってるよ」

「お似合いなのかしらねえ・・・まあ応援してくれることはありがたいことね」

「あと、西浦さんに言い忘れていたんだけど、もし俺達が今タイムリープをしたらどうなるのかわからないんだよ。もしかするとナンバー5の世界線に戻るかもしれない。でも過去を改変したらせっかく分岐した世界線がなくなるかもしれない。だからタイムリープはしないでほしいんだよ」

「わたしがタイムリープする必要はないから大丈夫よ。それに別の世界線にタイムリープするのは無理なんじゃない?」

「それがわからないんだよ。だからタイムリープはしばらく禁止しようと思ってる」

「わかったわ。わたしは使わないから大丈夫よ」

「それを聞いて安心したよ。じゃあそろそろ戻るね」

「わたしも戻るわね」


俺と西浦真美は休憩室を出た。俺は自分の席に戻って業務を続けていた。この日は何事も起こらず平和に業務をしていて勤務時間終了の19:00になった。俺はさっさと退社して帰宅した。


帰宅して俺は夕食をさっさと食べてシャワーを浴びた後に自分の部屋に入った。パソコンの電源を入れてメールをチェックした。DMやニュースメールがある中に「新しい世界線の俺へ」という件名のメールが届いていた。俺はすぐにメールを確認した。


”

新しい世界線にいる俺へ

2033年の水嶋祐樹だ。

どうやら世界線の分岐に成功したようでよかった。

俺は2033年の世界線ナンバー5から2018年に新しく

誕生した世界線ナンバー17の俺にメールを送っている。


そっちの世界線では笹原莉奈は無事に生きているだろうか?

新しいナンバー17の世界線の未来は存在していない。

そこでそっちの俺に一つ最後のお願いがある。

そっちの俺は世界線を分岐させるために過去や未来の出来事を改変していったと思う。

そしてそっちの俺は見事に世界線を分岐させて新しい世界線を誕生させた。


そっちの俺がナンバー5の世界線で過去や未来を改変させた出来事やその方法を

細かくブログに記載して公開してほしい。

もちろん、そのブログを閲覧するにはパスワードの入力が必要なようにしてほしい。

パスワードは「2033_5to2018_17」にしてほしい。

こちらからそっちのブログを閲覧することはできる。


そっちの俺がしてきたことを参考にさせてほしい。

そしてナンバー5の世界線の笹原莉奈の運命を変えたいと思っている。

なんとしても笹原莉奈を助けたいんだ。

だからよろしく頼みたい。


あと、もうそっちの俺達はナンバー5にタイムリープすることはできない。

別の世界線に移動する方法ならあるが、余計なことはしないように注意してほしい。

そして世界線ナンバー17の未来は君達が作っていってほしい。

”


俺はこのメールを読んですぐにパスワード付きでブログ記事を書きはじめた。俺が今までやってきた未来や過去の改変、その方法などこと細かく記載した。ナンバー5の世界線にいる2033年の俺は何年経っても莉奈を助けたいようだ。もし俺が協力ができるのであれば、ナンバー5の世界線の莉奈も助けてあげたいと思った。おそらく世界線ナンバー5にいる2033年の俺は、世界線の分岐をさせずに莉奈を助ける方法を考えるのだろう。そして、ナンバー5の世界線にいる2018年の俺にメールを送るつもりなんだろう。結果には必ず原因があるということであれば、世界線を分岐させなくても原因を解決させれば莉奈を助けることができると考えているに違いない。俺は言われた通りにブログ記事を指示されたパスワード付きで公開した。これは世界線ナンバー5にいる2033年の俺への感謝とお礼といってもいい。これによって2033年の未来が変わればいいと願っていた。


■ 2019年3月23日(土)


昨晩から莉奈と藤堂晃、西浦真美の四人でアルプスの麓にある健康ランドで仮眠をとっていた。今日は朝早くから天狗ヶ原スキー場に行く予定だ。朝4:00にシアタールームで目が覚めた。俺は起き上がってすぐに温泉に入った。温泉に入って眠気をすっかりとると登山服に着替えた。藤堂晃も遅れて温泉に入ってすぐにあがってきて着替えた。そして健康ランドのロビーで莉奈と西浦真美が待っていたので合流した。朝5:30に車に乗って天狗高原スキー場へ向かって車を走らせた。藤堂晃と西浦真美は天狗ヶ原スキー場のゲレンデで滑るようだが、俺と莉奈は天狗ヶ原スキー場のゲレンデトップから標高2450メートルの天狗ヶ岳まで登ってバックカントリースキーをする予定だ。


朝7:30に天狗ヶ原スキー場の駐車場に到着すると、それぞれが荷物を降ろしてゴンドラのチケットを購入するために並んでいた。朝8:00になってチケット売り場が動き出した。かなりの人がいるが、ゲレンデトップから上は一気に人はいなくなるだろう。ゴンドラのチケットを購入すると俺と莉奈は登山届を提出した。そして8:30にゴンドラに乗ってゲレンデのトップまであがった。莉奈にとってはじめてのアルプスになるが、それが雪山登山になるとは思わなかった。そして西浦真美と藤堂晃は滑走をはじめたが、俺と莉奈はそのまま樹林帯の中をスキー板とスキー靴をザックに装着して登りはじめた。最初はなだらかな登りだったが、森林限界を超えたあたりから急登になる。ここをスキーで滑るのは絶対に楽しいだろうとワクワクしながら登っていた。莉奈は途中で疲れたといったが、急登の途中で休憩するわけにもいかなかったのでなだらかなところまでひたすら登り続けた。ちょっとしたピークになっているところで俺と莉奈は休憩した。莉奈は「登ってきたところをスキーで滑るのが楽しみ」と言った。俺も同じ意見なのだ。自分達が必死に登ったところをスキーで滑走するのが楽しみなのだ。10分ほど休憩をして再び登りはじめた。だんだん晴れてきて迫力あるアルプスの山々を望みながら登っていく。俺は撮影をしながらゆっくりと登っていった。


天狗ヶ原スキー場のゲレンデトップから2時間ほどで天狗高原という場所に到着した。そこから少し平坦な道を歩いて天狗ヶ岳のピークを望むことができた。俺は「莉奈、あの山に登って昼食をとったらスキーで滑るんだよ」と言った。莉奈は「あそこか・・・まだ登らないといけないんだね」と言った。天狗高原で30分ほど休憩をして、再び登りはじめた。あと標高200メートルくらい登ったところが天狗ヶ岳の山頂なのだ。予想では1時間ほどで登れると思っていたが、天狗高原からは雪質がよくてスムーズに登っていくことができた。そして天狗高原から40分ほどで標高2450メートルの天狗ヶ岳に登頂した。


俺はザックからアルミシートとバーナー、べニア板を出してお湯を沸かした。そして持ってきていた二つのカップラーメンにお湯を注いで、おにぎりを出した。非常食用に持ってきていた饅頭を出して、綺麗な雪を少し饅頭にのせて食べた。莉奈は「ここの雪は食べれるの?」と言ったので、俺は「莉奈も同じことやってみるといいよ。この辺の雪なら綺麗だから」と言った。莉奈は同じように饅頭の上に雪をのせて食べた。すると莉奈は「これ美味しいね!」と言った。俺は「アルプスの雪なら綺麗だから食べても問題ないし、饅頭にのせて食べると美味しいよね」と言った。そしてカップラーメンを食べながらおにぎりを食べた。食後にはインスタントコーヒーを飲みながらアルプスの山々を見渡していた。莉奈は「どの山も真っ白だね」と言ったが、まさにその通りなのだ。積雪期のアルプスは岩肌むき出しの迫力ある山容を望めないのが残念なところだが、雪に覆われた山容も他では見ることができない。


いよいよスキー靴を履いてスキーを装着して滑走をはじめる。間違ったところへ滑っていくと危ないので、まずは俺が先に滑っていった。そして途中で止まってストックをあげて莉奈に合図をした。莉奈が滑走しはじめた。雪質がいいのでかなり滑りやすいだろう。俺はスマホで莉奈の滑走しているシーンの動画を撮った。俺のところまで滑ってくると莉奈は「すごく滑りやすい雪質だね。ターンも切りやすいし上手になった気がする」と言った。俺は「アルプスの雪質はやっぱり違うんだよ。かなり滑りやすいと思うよ」と言った。そしてそのまま天狗高原まで滑走した。登りに40分もかかったところをわずか10分ほどで滑り下りてくることができた。俺は莉奈に「動画を撮るから、ここからはゆっくり滑っていこう」と言った。約3時間もかけて登ってきたところをわずか30分ほどで滑るのはもったいないので、ゆっくり滑っていきたいのだ。


天狗高原から途中途中で止まって動画を撮影しながら滑走していった。自分達が登ってきたところをスキーで滑っていく楽しさは実際に体験しないとわからないと思う。そして最初の樹林帯の中をスキーで滑っていく。樹林をよけながら滑っていくのだが、これもバックカントリースキーの醍醐味だろう。そして、天狗高原からわずか40分ほどで天狗ヶ原スキー場のゲレンデトップまで滑り下りてきた。


少し足が疲れたので少し休憩した。今度はゲレンデを滑っていくのだが、ここからはあまり楽しい滑走ではないので動画も撮影しない。天狗ヶ原スキー場のゲレンデはとても長いので、ゲレンデの下まで滑るのも時間がかかる。俺と莉奈はゲレンデをひたすら滑走していった。人が多くてもう楽しくないので、何か作業をしてる感じだった。そして15:00頃にゲレンデの下まで滑り下りてきた。もうスキーで滑走するのは飽きたので、西浦真美と藤堂晃が戻ってくるのをレストランの中で待っていることにした。16:00になったのでゲレンデの入口に行って西浦真美と藤堂晃の二人と合流した。そして車に荷物を積み込んで帰宅するために車を走らせた。


三人とも寝不足でよほど疲れていたのか車の中で眠っていた。俺は好きな音楽を流しながら高速道路をひたすら車を走らせた。高速道路を2時間ほど走らせてサービスエリアに立ち寄った。そして夕食をとったが、みんなまだ眠いのかあまり食欲がないようだった。俺だけがソースカツ丼セットを食べて、他の三人はきつねうどんを食べていた。夕食を食べ終えてから車に乗ると、三人は再び眠った。俺はひたすら車を走らせてさらに2時間ほどして、やっと俺の家の最寄り駅に到着した。三人は目を覚まして「運転お疲れ様でした」と言ってそれぞれ電車に乗って帰っていった。俺もさすがに疲れていたのでさっさと家に帰宅した。


今回、俺と莉奈、そして西浦真美と藤堂晃がスキーに行くことになったのは、莉奈が元気に生きてるという証であるということを実感するためだった。それを俺と西浦真美は話をして天狗ヶ原スキー場に行くことになったのだ。そしてそれはまさに実感することができた。西浦真美も実感できたと思う。俺と莉奈の未来がある世界線だということを実感できたといえるだろう。


■ 2019年4月6日(土)


今日は朝から引っ越し作業をしている。俺と莉奈の同棲生活がはじまるのだが、車をすぐとりに行けるように俺の自宅近くにある3LDKのマンションに住むことになった。俺と莉奈の生活スタイルが違うのでそれぞれ部屋は分けることにした。莉奈は同棲生活をはじめることにワクワクしているようだ。引っ越し作業はそれほど手間ではなかったが、家具を揃えるのが大変だった。家事は分担することになったが、莉奈は朝早くて仕事から帰ってくるのも早いので、食料の買い出しの担当は莉奈がすると言っている。俺の部屋は相変わらず登山道具だらけになったが、莉奈の部屋はどちらかといえば女の子チックな感じにレイアウトしていた。新しい世界線での未来は俺達が作っていくのだ。莉奈との同棲生活はその一つと言えるだろう。引っ越し作業は女優の新垣優こと黒岩優がたまたまオフの日だったので手伝ってくれることになった。


「黒岩さん、せっかくのオフの日なのに引っ越し作業を手伝ってくれて申し訳ない」

「いえいえ。水嶋さんにはお世話になっていますから、このくらいのことはお手伝いさせていただきますよ」

「こちらこそ演技のコツを教えてもらってるし、今後とも黒岩さんにはお世話になると思うのでよろしくお願いするよ」

「わたしでお役に立てるならいつでも力になりますよ」


引っ越し作業は17:00過ぎまで続いた。俺や莉奈の両親、俺の妹である佳織も手伝ってくれたので1日で終えることができた。インターネット回線もマンションについてるため、俺的には助かったのだが、やはりちゃんと光ファイバー回線をひきたいので工事を依頼している。18:00には引っ越し作業が落ち着いたので手伝ってくれた人達は帰っていった。莉奈は食料の買い出しに行ったので俺はパソコンの電源を入れてメールをチェックした。DMやニュースメールなどが届いていたが、その中に「世界線ナンバー17の俺へ」という件名のメールが届いていた。俺はすぐにメールを確認した。


”

世界線ナンバー17の俺へ

世界線ナンバー5、2033年の水嶋祐樹だ。

2019年の世界線ナンバー17の俺にメールを送っている。


今回は報告したいことがある。そっちの俺が掲載したブログを確認した。

そして、こちらで分析した結果、ナンバー5の世界線でも笹原莉奈を助けることができた。

これはそっちの俺のおかげなのだ。2033年にも笹原莉奈は元気にしている。

そっちの俺には本当に感謝する。


そっちの俺が未来や過去を改変したことによって、笹原莉奈の運命を左右する出来事が発生したのだ。

それは2019年2月13日だ。あの園児がバイクにはねられる日のことだ。

あの事故は、そっちの俺が未来や過去を改変したことによって起こったのだ。

しかし、それと同時に笹原莉奈の運命を左右する出来事になったわけだ。

こっちの俺は世界線を分岐せずに、笹原莉奈を助ける方法を考えた。そしてあることに注目した。

そっちの俺が一つだけしなかったことがある。それは笹原莉奈の行動を変化させなかったことだ。

そっちの俺はあの事故の原因を解決させて、結果を変えた。それにより世界線を分岐させた。

ところがこっちの俺は、あの事故はなかったことにするように過去の俺に指示をだした。

園児の母親とバイクの運転手を説得して、あの日、あの現場に行かないようにした。

それにより、あの事故、あの出来事はなかったことになった。

それともう一つは、あの事故の日、笹原莉奈に仕事を休ませて病院へ行くように過去の俺に指示をした。

これにより笹原莉奈の行動は変化させることになった。

そして世界線を分岐させなくても2019年2月23日の笹原莉奈は死ぬ運命を回避させることができた。

これも全てそっちの俺がヒントを教えてくれたおかげなのだ。本当に感謝する。


そっちの俺はもう新しいナンバー17という世界線の中で生きている。

未来はそっちの俺達に作っていってほしい。幸せな未来になるように頑張ってほしい。

ナンバー5の世界線、2033年からそれを祈っている。

もう非常事態でも起きない限り、そっちの俺にメールを送ることはないと思う。

今まで本当にお疲れ様だった。

そしてありがとう。2033年になったら世界線ナンバー5の俺によろしく伝えておいてほしい。

”


俺はこのメールを読んで、ナンバー5の世界線でも莉奈を助けることに成功したことは喜ばしいことだと思った。本当は世界線ナンバー5に移動して状況を確認しようと思っていたが、もうその必要もないようだ。この新しく誕生させた世界線ナンバー17の未来は俺達が作っていく。そのためにも莉奈と未来を一緒に歩いていこうと思う。そう考えてると莉奈が買い物から帰ってきた。今日の夕食は引っ越し祝いに高級な牛ステーキとご飯、味噌汁だった。俺がご飯を炊いて、味噌汁をあらかじめ作っておいたので、莉奈が牛肉を焼いた。そしてリビングのテーブルで莉奈と二人で食事をしていた。俺は莉奈に話を切り出した。


「莉奈、来年の5月26日に入籍しようか?」

「え?入籍って結婚するってことだよね?」

「そうだよ。同棲生活を1年も続けたら、もう十分だと思うし、それにちゃんとしておきたいんだよ」

「でもどうして5月26日なの?」

「覚えてないかな?5月26日は俺達がはじめて出会った日だったってこと」

「あっそうだった。でも、わたし・・・あのね、一つだけ結婚することに迷いがあるの」

「結婚するのに何か迷ってるの?」

「うん・・・ちょっと言いにくいんだけど、あのね・・・わたし、子供はいいかなって思ってる。祐樹君は結婚したらわたし達の子供ほしいよね?」

「莉奈は子供好きだから保育士をしてるんじゃないの?どうして子供はいいの?」

「子供は好きなんだけど、自分の子供ってなるとなんか違うかなって・・・でも祐樹君は子供ほしいよね?」

「莉奈、まだ俺の気持ちがわかってないね。別に俺達の子供がいなくてもいいと思ってるよ」

「え?そうなの?祐樹君はわたし達の子供はいなくてもいいって思ってるの?」

「俺は莉奈と一緒に人生を楽しんでいきたいんだよ。幸せな家庭というより莉奈と一緒にいたいんだよ。ただ、それだけなんだよ。それに子供がいなかったらずっと新婚生活でいられるわけだし、俺は子供がほしいなんて思ってないよ」

「そうなんだ。わかった。じゃあわたしの迷いはもう消えたよ。来年の5月26日に入籍してもいいよ。でも結婚式とかしなくていいの?」

「莉奈と結婚式をするなら、標高3000メートルの山の上で二人でしたいと思ってる。結婚式ができる山があるんだよ。それに披露宴とかそういうのも俺はあまり好きじゃないのでしなくてもいいよ」

「そんな山があるんだ。わかった。わたしはそれでいいよ。祐樹君に任せるね」

「この世界線の未来は俺達が作っていくんだよ。だから莉奈、一緒に俺と人生をエンジョイしていこう。楽しい未来にね!」

「うん!祐樹君と楽しい未来を作っていこう」


■ それから一年後・・・


いつものように会社に出勤して自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。すると児島信二がニコニコしながら「おはようございます」と言って出勤してきた。俺は児島信二に「何か嬉しいことでもあったの?」と聞いてみた。すると児島信二は「山内さんが僕との結婚を真剣に考えてくれるって言ってくれたんですよ」と言った。俺は児島信二に「それはおめでとう。頑張ってね」と言った。しばらく業務をしていると西浦真美から『ちょっと休憩室に来てくれるかしら?』とテレパシーが送られてきた。俺は西浦真美に『すぐに行くよ』とテレパシーを送った。


休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が入ってきた。そして西浦真美が話しはじめた。


「実はね、藤堂君にプロポーズされたのよ。わたしが結婚なんて考えられないんだけど、水嶋君はどう思う?」

「もう西浦さんも結婚すればいいんじゃないかな?藤堂さんとは結ばれる運命にあるんだと思うよ」

「でも藤堂君と新婚生活とか想像つかないのよ。それにわたしは家事は苦手なの」

「藤堂さんは家事ができるみたいだからいいんじゃないかな?」

「まあそうなんだけどね。それより水嶋君は先に入籍して結婚式は7月にするのね。山の上で結婚式なんてよく考えたわね」

「俺は結婚式をするなら山の上って決めてたんだよ。それより西浦さんももう覚悟を決めて結婚すればいいと思う」

「うーん・・・そうね。結婚するには覚悟が必要なのね」

「まあ結婚は思いきりが必要だし、この世界線の未来は俺達が作っていくものだからね。西浦さんにも幸せになってほしいんだよ」

「そう言ってくれてありがとう。もう前向きに考えてみるわ」


未来は自分達が作っていくもの。そして俺達は幸せになっていこうと思う。未来や過去を改変させていくということは、もしかすると不幸になる可能性がある。だからこそタイムリープなんて能力は簡単に使うべきではないのだ。過去を改変させるということは未来を改変させてしまうこと。あらゆる困難に直面した時、それを乗り越えていくようにしなければならない。簡単に運命というものは変えてはいけないのだろう。2033年から送られてきたメールであらゆることを体験した。俺が未来や過去を改変させていったことによって、この世界線は誕生した。それは俺自身が選んだ世界なのだ。だからこそ俺はこの世界を大切にして人生を歩いていきたい。それこそが未来からの伝言の意味であったのだろう。


さて、週末に行く山を決めるか・・・新しい未来へ

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