未来から過去へ
■ 2033年4月5日(火)
俺は水嶋祐樹、システム開発部の部長となり今年で45歳になる。この会社で働いてもう何年になるのか。今でも現役のエンジニアだが、最近は部下にプログラミングをさせることが多くなった。俺が最も愛するべきは登山だが、たった一人だけ愛した女性がいた。それは15年前に知り合った笹原莉奈という保育士だった。俺はずっと笹原莉奈に未練が残っているようで未だに独身でいる。他の女性になんて興味を持たない。15年前の2018年2月23日の土曜日に何度もタイムリープをして笹原莉奈を助けようとした。しかし、何をしても笹原莉奈を助けることはできなかった。あれから15年も経つのかと思うと時が経つのは早い。
部長のデスクに座るようになってずいぶん経つが、俺は出世欲なんてないし、役員などにも興味はない。しかし、どういうわけか部長という肩書を与えられてしまった。
いろいろ考え込んでいると俺の目の前に児島信二がいて「水嶋部長」と呼ばれた。俺は「児島君、どうした?」と聞いた。
「水嶋部長、この大きな機器は何でしょうか?」
「それは電磁波発生装置だよ。この前、ネットで購入したんだよ」
「また胡散臭いものを購入したんですね。こんなもの何に使うつもりですか?」
「この電磁波発生の強さを改造してプラズマを発生させたいんだよね」
「そんなことをしたらこの機器が壊れないですか?」
「USB接続でパソコンに接続して電磁波の強さを変更できるから、そのプログラムを改修すれば電磁波の強さを変更できるはず」
「それで何を作るつもりですか?」
「おそらくだけどプラズマが発生すると同時に小さなブラックホールができると思うんだよ。それで遊んでみようかと思ってね」
「ブラックホールですか・・・よくわかりませんが、電磁波の強さを調整するプログラムは誰が改修するのでしょう?」
「それを児島君にお願いしたいんだよ。わかりやすいプログラムに変えてしまうのも手だよ」
「そんなことしてもいいのでしょうか?そもそも業務には何の関係もないのでは?」
「今のところ開発もないし、児島君、ちょっとこの電磁波発生装置をパソコンに接続して、プログラムを吸い出してみて」
「本当にいいのでしょうかねえ・・・僕には家族があるので解雇処分になったりするとまずいのですが・・・」
「これに関する責任は俺がとるよ。児島君の家族には迷惑かけることはないよ。だからやってみて」
「わかりました。嫁や子供に迷惑かかるようなことにならないように内密にします」
児島信二は電磁波発生装置をパソコンに繋いで電磁波の調整プログラムの解析をはじめた。
俺はいつものように休憩室に入って少しまったりすることにした。すると女性が休憩室に入ってきた。
「あら、水嶋部長じゃないの。昔はここでよく話し合ったわね」
「西浦さん、いや藤堂さんになったのか。懐かしいことを思い出したね。旦那さんは独立してからどんな感じ?」
「西浦さんでいいわよ。旦那は相変わらず、経営に必死になってるわね。でも自分の好きな仕事をしてるわけだから頑張ってもらうしかないわ」
「娘さんはもう小学生になってるんだよね?何年生になったの?」
「まだ小学2年生よ。最近は生意気になってきたの。まったく誰に似たのかしらねえ」
「それはもちろん西浦さんの血を引き継いでるんだよ」
「ところで水嶋君はこのままずっと独身でいるつもりなの?」
「そうなるね。もう他の女性には興味ないし、相変わらず俺は登山バカになってるんだけどね」
「莉奈ちゃんのことは残念だったけど、そろそろ未練を捨てて新しい人を見つけてみれば?」
「俺もそう思ってるんだけど、なかなかねえ。それにもうこの年齢になってしまったから」
「男性の40代なんてまだまだよ。まだ莉奈ちゃんを助ける方法を考えてたりするの?」
「それはもう考えてないけど、せめて過去の自分には同じ体験をしてほしくないと思っている」
「それって・・・まさかまた怪しいものを開発したりしてないでしょうね?」
「まあ、そこは西浦さん、開発してても内密にお願いしたいね」
「やっぱり何か開発してるのね。あまり変なものを開発してることがバレると役員や社長から怒られるわよ?」
「そこは西浦さんがなんとかしてくれると信じてるよ」
「前はうまく誤魔化したけど、今度はわからないわよ」
「まあ、バレないように開発するよ」
「ここは会社なんだから、くれぐれも変なことをしないように気をつけてよね」
「わかってるよ」
西浦真美は藤堂真美になったのだが、会社の中ではいつまでも西浦さんと呼ばれている。それにしてもあれから15年経ってもまだ社長秘書をしてるなんて、西浦真美もよほどこの会社に愛着があるんだろうか。
自分の席に戻るって3時間ほどすると児島信二がやってきた。そして児島信二は「プログラムの解析はできましたよ。簡単な仕組みでした。このプログラムを書き換えればいいのでしょうか?」と言った。俺は「うん。電磁波の強さを今の10倍くらいに増やしてみてほしい」と言った。児島信二は「やってみますよ」と言った。
■ 2033年4月7日(木)
この日は雨が降っていた。午後になって児島信二が俺の席にやってきた。
「水嶋部長、プログラムを書き換えました。これでおそらく電磁波の強さを10倍にできたと思います。それでこれから何をするつもりですか?」
「次はこの電磁波発生装置にこのカメラを接続できるようにしてしてほしい。USBポートが二つあるから、その一つをカメラの信号を送受信できるようにしてもらえるかな?」
「わかりました。しかし、水嶋部長は一体何をするつもりですか?」
「それは出来てからのお楽しみということで、カメラの信号を送受信できるようになったらわかるよ」
「では、すぐにUSB部分のプログラムを改修しますね」
それから2時間ほど経つと児島信二が「水嶋さんできましたよ」と言ってきた。俺は「じゃあ、一つのUSBポートにパソコンを接続して電磁波の強さを10倍にして」と言った。児島信二が電磁波発生装置にパソコンを接続して、電磁波の強さを10倍にした。電磁波発生装置からバチバチとした音が聞こえてきた。そして、もう一つのUSBポートにカメラを接続した。俺は「よし、じゃあこのカメラで撮影してみるよ」と言って社内のフロアを撮影した。するとカメラに写ったのは、今のシステム開発部のフロアではなく、全く違うシステム開発部のフロアだった。俺が以前に座っていた席に若く写っている。若い児島信二がその隣に座っている。
「水嶋部長、この写真ってずいぶん懐かしい風景ですね。こんな写真、いつ撮ってたんですか?」
「これは今撮影したんだよ。これがいつの写真かわからないけど、過去の写真を撮影することができた」
「ええー!?じゃあこのカメラは過去を写せるのですか?」
「おそらくこのカメラの信号が時空を越えたんだと思う。児島君、実験は成功だよ!あとはこれがいつの写真だったのかわかればいいんだけど」
「この写真に写ってるカレンダーを見てください。2022年になっていますよ」
「本当だ。ということは11年前ということか・・・児島君、電磁波の強さをさらに20倍に増やすようにして、この電磁波発生装置にLANポートをつけて、ネットの信号を送受信できるようにできない?」
「やってみますけど、こんなことしてもいいんでしょうか?」
「いいんだよ。とにかくやってみて」
「わかりました。ちょっとLANポートを基盤に取り付けないといけないので、この装置を家に持って帰りますね」
「よろしく頼むよ」
俺の推測が正しければ、この電磁波発生装置にLANケーブルを接続してネットの信号を送受信できるようになれば、過去のホームページが見れるようになるはずだ。
■ 2033年4月8日(金)
朝10:00前に会社に出勤した。児島信二が電磁波発生装置を持って出勤してきた。ちゃんとLANポートを取り付けてきたようだ。そして児島信二がやってきた。
「水嶋部長、LANポートを取り付けてちゃんとネット信号の送受信ができるようになりましたよ。あと電磁波の強さを20倍にしておきました」
「児島君、ありがとう。ずっと使われていない会社のIPアドレスを一つ用意しておいたから、このサーバーに接続してみよう」
「こんな古いサーバーに接続するのですか?それにこのサーバーって動くんでしょうか?」
「昨日、俺がこのサーバーにIPアドレスを割り当ててメールサーバーを構築しておいたから動くよ」
「では、USBポートにパソコンを接続してLANポートにサーバーを接続しよう」
「水嶋部長、ここでそれをするのはまずいんじゃないですか?他の社員に見られますよ」
「じゃあサーバールームの中でやろうか」
「わかりました。サーバールームの入室許可をとってきます」
俺と児島信二は古いサーバーとノートパソコン、そして電磁波発生装置をサーバールームの中に運んだ。
「じゃあノートパソコンをUSBポートに接続して、サーバーを電磁波発生装置にLANケーブルで繋いで電磁波の強さを1倍にして実験しようか」
「何を実験するのですか?」
「児島君のメールアドレスにメールを送ってみる。サーバーのLANポートにもう一台のノートパソコンを接続して実験開始だよ」
電磁波発生装置のLANポートにサーバーとLANケーブルを接続して、サーバー側のもう一つLANポートにはノートパソコンを接続した。そして電磁波発生装置のUSBポートに電磁波を調整するためのもう一台のノートパソコンを接続した。
「では電磁波の強さを1倍にします」
「よし、じゃあ児島君にメールを送信してみるね。件名は2033年から児島君へという件名でメッセージはは奥さんとお幸せにというものね」
「わかりました。送ってみてください」
「送ったよ。児島君、メールを確認して。どこかに送ったメールが届いてるはずだよ」
「至急、確認してみます」
児島信二はサーバールームを出てメールを確認してみた。すると児島信二が戻ってきた。
「水嶋部長!2032年の2月8日にさっき送ったメールが届いていました」
「ちょっとそのメールを見に行くよ」
俺は児島信二に届いたメールを確認した。たしかに2032年の2月8日にさっき送ったメールが届いていた。メールの詳細をみると文字化けしているようだが、確実に過去にメールを送ることができたのだ。俺と児島信二はサーバールームに戻った。
「児島君、電磁波の強さ1倍で約1年2ヶ月前にメールが送信できたということは、2倍で2年4ヶ月前にメールが送信できるということだよね?電磁波の強さが0.5倍だと7ヶ月前という計算になるから割り切って日時を算出してみて、電磁波の強さ調整を年月日にわかりやすいように変更してほしい」
「わかりましたけど、本当にこんなことしていいのでしょうか?」
「いいんだよ。この実験は成功したし、誰にも迷惑かけてないでしょ?」
「じゃあ、算出してみますね」
その後、児島信二は電磁波の強さと日付の計算を算出して、電磁波の強さ調整を年月日に変更した。
「水嶋部長、これでいいでしょうか?」
「じゃあ、これで過去にメールを送ることができたんだけど、ためしに電磁波の強さ調整を2018年の5月にしてみてくれないかな?」
「わかりました。では2018年の5月10日頃にしてみますね」
「よし、ブラウザーを開いて、このアドレスを打つと・・・出た!俺が昔書いてたブログが見れた」
「これはつまり、2018年の5月10日のネットワークに接続できたということでしょうか?」
「そういうことになるね。しかし、このブログは懐かしいなあ。今となっては古臭いブログだけどね」
「そもそも水嶋部長はこれで何をするつもりなんですか?」
「過去にメールを送る。そして今度こそ婚約者だった人を助けてもらう」
「あの笹原莉奈さんのことでしょうか?でもそんなことをしたら、未来が変わってしまわないですか?」
「児島君、世界線というものがあるから、この未来は変わらないと思うよ。次は世界線の調整をしてほしいんだけど、ネット信号の粒子の状態を拾ってみてほしい。できるかな?」
「ネット信号の粒子ですか?僕はネットワーク関係に詳しくないのですが、たしかネットワーク信号の流れを見れる機器がありましたね。それで確認してみます」
児島信二はネットワーク信号の流れを見れる機器を会社から無断で持ち出して、土日に家で研究すると言った。来週が楽しみだ。
■ 2033年4月11日(月)
この日は晴れていた。もう10年以上も続いているが月曜日は社内全体朝礼があった。もともと社長だったのが今では会長になってフロアの前に立って長い話をする。会長も年を取ったのか、昔のような活き活きとした感じはなかった。会長の話が終わると西浦真美が「では今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。
俺と児島信二はサーバールームの入室許可のとって、サーバールームに入った。
「児島君、ネットワーク信号の粒子は見つけることはできた?」
「この土日で本当に苦労しましたが、見つけることができましたよ」
「おそらく世界線ごとにその粒子だけは違うはずなんだよ。その粒子を数値化してほしいんだけどできる?」
「もうそれもしましたよ。粒子の数値は5.12になっています」
「じゃあ、ネット信号の粒子を変更できるようにもしてほしい。できるかな?」
「そう言ってくると思って、すでにできるようにしましたよ。この電磁波の強さを示す年月日の横を見てください。世界線ですか?数値を変更できるようにしています」
「じゃあ、世界線数値を8あたりにして俺自身にメールを送ってみるよ。電磁波の強さは0.01倍でいい。この内容でいいかな。じゃあ送信するよ」
「別の世界線の自分と話をするつもりですか?」
「そういうことだね。あと児島君にお願いがあるんだけど、この粒子の数値を示すのは別にスマホでもできるよね?スマホ用のアプリを作ってほしい」
「スマホ用のアプリですか?それはすぐに作れると思いますよ」
「じゃあお願いするね。俺は8の世界線の自分とメールのやりとりをしてみる」
俺がメールを送ると8の世界線の俺からメールが届いた。そのメールの件名は”5の世界線の水嶋祐樹へ”だった。そして中身を確認してみた。
”
世界線ナンバー8の水嶋祐樹だ。
あなたはナンバー5の世界線の水嶋祐樹なのか。
こちらの世界線では片桐杏奈と幸せに暮らしている。
ナンバー5の世界線ではどういう生活をしている?
”
世界線ナンバー8では俺は片桐杏奈と結婚しているのか。俺は独身であるということをナンバー8の世界線にいる俺にメールを送った。それにしてもナンバー8の世界線でも同じように別の世界線や過去にメールを送ることができる装置を開発したということになる。その後、世界線は16あることがわかった。それぞれの世界線での生活は違うようだ。俺が存在しない世界線もあるようだ。これで実験と調査は終わった。明日から15年前に死んでしまった笹原莉奈を助ける作戦を実行するのだ。
■ 2033年4月12日(火)
朝10:00前に会社に出勤した。そしてサーバールームの入室許可申請をして、俺と児島信二はサーバールームへ入った。俺は2018年のことをいろいろ思い出していた。過去のブログ記事を見たりしながら何が起こったのか思い出して、全てをまとめていた。
「児島君、いよいよ本当の目的である笹原莉奈救出作戦を実行したいんだけど協力してくれるかな?」
「本当にそんなことして大丈夫ですか?未来が変わることはないですよね?」
「世界線を分岐させるから、この世界線に影響はないはずだよ」
「それならいいのですが、深刻なタイムパラドックスなど起こるとまずいですから気をつけてくださいね」
俺は何度も何度も笹原莉奈を助けようとしてタイムリープをした。しかし、何をしても助けることはできなかった。それをするには世界線を分岐させる必要がある。俺と笹原莉奈の未来がある世界線を誕生させるのだ。そのためには2018年の俺には頑張ってもらう必要がある。
「よし、児島君。まずは電磁波の強さを2018年5月7日にセットしてほしい。世界線の数値はナンバー5にしてほしい。そこを間違えると大変なことになるからね」
「わかりました。2018年5月7日、世界線ナンバー5にセットしました」
「あの時の俺のメールアドレスはこれで間違いないだろう。よし、送信するね!」
「はい」
俺は最初のメールを2018年5月7日の俺に送った。このメールのことを信じてもらうために、2018年の5月に起こることを書いておいた。2018年の5月の俺が信じてくれればいいのだが、おそらく最初はイタズラメールだと思うだろう。しかし、メールに書いてあることが起こってしまうので、信じるようになるはずだ。続いて2018年6月3日にメールを送った。
■ 2033年4月13日(水)
この日におかしなことになった。どういうわけか、俺は片桐杏奈と暮らしているのだ。過去に何が起こったのだ。そういえば、昨日も4月13日だったはず。俺はすぐに会社に出勤して児島信二とサーバールームへ入った。
「児島君、おかしいんだよ。俺がどういうわけか昔、好きだった女性と結婚して一緒に暮らしている」
「水嶋部長、何を言ってるのでしょうか?杏奈さんでしたか?15年前に結婚したじゃないですか?」
「いや、おかしいんだよ。俺は独身だったはず。児島君、すぐに送ったメールを調べてほしい」
「おかしいって・・・わかりました、ちょっと調べてみます」
児島信二はいろいろ調べていて「水嶋部長!おかしなことになっています」と言った。
「児島君、何が起こっている?」
「水嶋部長が送った2018年6月3日のメールですが、リターンメールとして戻ってきています。どうやら混線したようですね」
「そうか・・・片桐杏奈と結婚してるのは世界線ナンバー8だから、おそらくその俺がナンバー5の世界線の俺にメールを送ってしまったのかもしれない。とにかく調べてみるよ」
「わかりました」
俺は世界線ナンバー8の俺とメールのやりとりをした。すると世界線ナンバー8の俺は2018年6月3日の世界線ナンバー5へ誤送信したらしい。未来が変化した計算をしてみるとおそらく未来が変化したのは2018年9月3日ということになる。俺と同じ記憶を持った2018年の俺を探し出さないといけない。久しぶりに特殊能力を使ってみるか。しかしタイムリープは12年くらいが限界だ。この変わった未来を変えることはできないのか。そう思っていたが、2018年から強い感情が届いた。これは2018年9月4日の俺だ。早速、メールを送って何が起こっているのか伝えよう。もともと俺が2018年6月3日に送ったメールを復旧させるプログラムを添付して2018年9月4日に送った。
■ 2033年4月14日(木)
朝目覚めると世界は元に戻っていた。どうやら2018年9月の俺が未来を元に戻したようだ。
会社に出勤して、俺と児島信二はまたサーバールームへ入った。そろそろ重要任務となる笹原莉奈救出作戦を実行してもらうしかない。世界線を分岐させるには3ヶ月ほどの期間が必要になるだろう。どんな過去を改変すれば世界線が分岐するのか俺にもわからないが、それは2018年の俺に任せるしかない。きっと笹原莉奈との未来がある世界線に分岐してくれるだろう。
「児島君、2018年11月24日に電磁波を合わせて。いよいよ本格的に救出作成を実行したい」
「本当に世界線なんて分岐するのでしょうか?それにしても水嶋部長がよほど笹原莉奈さんのことが好きだったのかわかる気がします」
「まあね。じゃあメールを送るよ。児島君が作ってくれた世界線の数値が表示するスマホのアプリだけど2018年でも使えるよね?」
「あれはネット信号の粒子を観測してるものなのでネットがある時代であれば可能だと思います」
「そのスマホのアプリも添付して送るね」
「わかりました。では送信してください」
そして俺は2018年11月24日の俺にメールを送った。おそらく笹原莉奈が死ぬ運命にあると伝えれば辛い思いをするかもしれない。しかし、2018年の俺には頑張ってもらうしかない。その後、2019年にもメールを送ってみた。
それから数時間後、児島信二が「水嶋部長!新しい世界線が観測できました」と言ってきた。確認してみると16しかなかった世界線が17になっている。これはおそらく2018年の俺が世界線を分岐させてナンバー17という新しい世界線を誕生させたんだろう。ナンバー17の世界線には未来がない。未来は2018年の俺達がこれから作っていくのだろう。そしてその未来には笹原莉奈がいるんだろう。そう考えると少し羨ましい気持ちになるが、この世界線はもう過去を改変することはできない。とにかくナンバー17の世界線の俺達には新しい未来を構築していってほしい。




