表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来からの伝言  作者: 涼
23/41

光色感情受信現象Part1

■ 2018年9月29日(土)


朝4:00に目覚まし時計が鳴って目が覚めた。今日は笹原莉奈と村瀬真也の三人で鉄岳に行く予定だ。カーテンを開けて窓の外をみると雲が多いが星が見えているので天気は問題なさそうだ。自分の部屋を出て静かに階段を下りて洗面所で顔を洗った。そしてキッチンに行ってトーストを焼いて、インスタントコーヒーを用意した。テーブルに座ってトーストを食べながらコーヒーを飲んでまったりしていた。まだ待ち合わせ時間まで時間があるので、登山道具のチェックをしてパソコンの電源を入れた。鉄岳のコースタイムは登りが2時間ちょっとで山頂まで行けるが、今日はそのまま2時間半ほどかけて八剣岳まで登って最短ルートで八剣岳の登山口に出る。そこから自転車で車をとりにいって八剣岳の登山口まで迎えに行く。そのため、昨日の夜に折りたたみ自転車を車に積んでおいた。パソコンで道路の通行止め情報を確認しておく。八剣岳付近の道路はよく土砂崩れなどで通行止めになっていることがあるからだ。特に通行止めの情報はなかったので大丈夫そうだ。


パソコンでインターネットを見ているともう5:40になったので登山道具を車に積んでいつもの待ち合わせ場所である駅前ロータリーへ向かった。駅前ロータリーに着くとまだ5:50を過ぎた頃だった。まだ二人とも到着していないようだったので数分待っていると、最初に紫色のジャケットに濃い茶色のショートパンツに黒のタイツ、登山靴は茶色で小さな赤いザックを背負った莉奈が階段を下りてきた。莉奈はすぐに俺の車に気がついて車のほうへ歩いてきた。その後ろから青いジャケットに黒いトレッキングパンツをはいて緑色のザックを背負った村瀬真也が階段を下りてきた。三人が合流して「おはようございます」と言って莉奈と村瀬君は車の後ろに荷物を積んだ。莉奈は助手席に乗って村瀬君は後部座席に座って鉄岳の登山口に向かって車を走らせた。


車内で何気ない日常会話をしていたが、しばらくすると沈黙した。朝早く起きたため後部座席に座っている村瀬君は眠っていた。俺は莉奈に「ちょっと眠っておくといいよ」と言うと莉奈は「うん」といって目を閉じた。二時間ほど車を走らせると細い林道の道になった。ここは一応国道だが、ガタガタ道でさすがに眠っていた二人とも目を覚ました。林道でありながら国道でもある道を20分ほど走らせたところに広くなった路肩があり、ここが鉄岳の登山口付近だが、先にそこから車で10分ほど坂道を登ったところにある八剣岳の登山口まで行って折りたたみ自転車を置いた。そして車で坂道を下りていって、さっきの広くなった路肩に車を駐車した。そして、俺は登山靴を履いてザックを背負って登山の準備はできた。莉奈も村瀬君も準備ができたようなので登山開始となった。莉奈が「登山口はどこなの?」と質問してきたので、俺は「こっちだよ」と言って国道からそれた細い道を少し進んだところにある小さなハシゴがあるところへ歩いていった。俺は「ここから鉄岳の手前までひたすら急登だからスローペースで行こう!」と言って二人とも「うん」と言った。


鉄岳への登りは通常の登山ルートではなく完全バリエーションルートで岩場や斜面を無理矢理登っていく感じなのだ。ただ、尾根道なので迷うことはない。莉奈はスマホに入れていた地図を見てGPSで現在地を確認していた。少しは読図ができるようになった莉奈はGPSを見て「もしかしてこの尾根をずっと登っていくの?」と聞いてきたので、俺は莉奈のスマホを見て「そう、この尾根をずっと登っていくんだよ」と言った。すると莉奈は「ずっと急登が続くんだー」と少し暗い表情をしながら言った。倒木をまたいだり、岩場の登ったりしながらひたすら尾根道を登っていく。一時間ほど登ったところで少し平坦な場所があったので休憩することにした。莉奈はチョコレートを口にしながらGPSを見て「まだ半分くらいだね」と言った。俺は莉奈の顔を見ながら「まだ単なる樹林帯だけど、鉄岳の手前あたりで草原地帯に出て、そこから秘境感のある道になるからそこまで頑張ろう!」と言った。10分ほど休憩をして尾根を登りはじめた。急登なのでどんどんと高度があがってくるのがわかる。既に周りに見える山と同じくらいの高さになってきた。そして上のほうが明るくなってきた。俺は「ここを登りきったら草原地帯に出るよ」と言った。そして樹林帯を抜けたところで草原地帯に出た。その草原地帯では遮るものがなく、下界の景色が一望できる。莉奈は「こんな高いところまで登ってきたんだ」と呟いた。俺は「こんなところに草原地帯があるのも珍しいでしょ?」と言うと莉奈は「うんうん!」と言ってテンションが上がってきているようだった。草原地帯の目の前にピークが見えて莉奈が「あのピークが鉄岳なの?」と聞いてきたので俺は「いや、あのさらに奥だよ」と言った。そして草原地帯からさらに樹林帯の中に入ると木の根っこがあちこちにぐちゃぐちゃとある登りになった。そこも普段見ることのできない秘境といえるだろう。莉奈は「木の根っこだらけですごい!」と言いながら登ってきた。一つ目のピークを登って少し下ったところは細尾根になっていて、断崖絶壁の場所だ。滑落するような道ではないが足を踏み外せば確実に命はない。そういった場所も秘境感があるのだ。そして鉄岳のピークを登っていく。そこは岩場になっていて急斜面の長い鎖場となっている。一人ずつその鎖場を登っていく。先頭の俺が登ると続いて莉奈が登ってきた。最後に村瀬君が登ってきて、さらに登って鉄岳の山頂に到着した。鉄岳山頂は標高1560mで少しだけ景色が見えるが、それより秘境感溢れる山頂なのだ。村瀬君はさっきの草原地帯からずっと撮影している。鉄岳山頂で莉奈と俺は二人並んで村瀬君に記念撮影をしてもらった。荒知山で迷っていた莉奈と付き合うことになって、まさか鉄岳まで来ることになるとは数か月前まで思いもしなかった。こんな秘境の地に一緒に来ることができたのは嬉しい限りである。


鉄岳山頂で30分ほど休憩をして今度は八剣岳の山頂を目指すことにした。俺は莉奈に「ここからさらに秘境感があるから楽しみにしといてね!」と言うと莉奈は「うん楽しみ!」とテンションがあがっているようだ。鉄岳のピークを下ると再び高原地帯に出る。そこで少しガスってきて莉奈は「ええーガスってきた」と残念そうに言ったので俺は「ガスってくれたほうがいいんだよ」と言った。ここからガスってくれれば秘境感が増すのだ。草原地帯を登っていくと樹林帯の中に入った。するとガスっている中で辺り一面に広がる苔地帯があった。ガスっている苔地帯の風景はまさに自然の神秘といえる。莉奈は「うわーなにこれ!すごい苔地帯!」と声をあげた。俺は「ねっ!ガスってるほうが神秘的でしょ?」と言うと莉奈は「うんうん!」と言った。そこからさらに登っていくと苔むした倒木があったり、自然林の中に巨木があったりして、普通の登山道で見ることのできない風景が次々と見ることができた。すっかり莉奈はテンションがあがっていて何度も「すごい景色」と言っていた。鉄岳から一時間半ほど登ったところで八剣岳の尾根と合流した。そしてさらに八剣岳のほうへ登っていくと今度は大倒木地帯と呼ばれる倒木だらけの地帯まで登ってきた。こんな倒木地帯も秘境といえるだろう。もうすっかりガスははけて大倒木地帯がハッキリ見えると莉奈が「すごい!倒木だらけ!でもどうやって先に進むの?」と言ったので俺は「無理矢理進んでいくんだよ」と言った。倒木をまたいでどんどん先へ進んでいく。ほとんど無理矢理進んでいる感じだが、バリエーションルートとはそういうものなのだ。莉奈もそろそろバリエーションルートというものを理解できてくるだろうと思う。そして、八剣岳の裏側までたどり着くと、獣除けの網で通れなくされている。そこを南側に行くと一か所だけ網の中に入っていけるところがある。一旦少し南へ下って網の中へ入っていける場所へ行き、そこから八剣岳の山頂へ登っていった。そして俺達の住むエリア周辺の最高峰になっている八剣岳山頂に到着した。俺は莉奈に「ここがこのエリア最高峰の八剣岳だよ」というと「八剣岳の名前は知ってたけど、ついに登頂できたんだね!」と言った。深い谷と連なる山々が永遠に続くような素晴らしい景色でアルプスとはまた違った魅力がある。ここでも俺と莉奈は二人ならんで村瀬君にお願いして記念撮影をしてもらった。そして八剣岳の山頂からすぐのところにある八剣岳山荘で昼食をとることにした。この時点ですでに13:30になっていた。


俺はザックからバーナーを出してうどんすき鍋の準備をした。今日は三人でうどん鍋を食べるのだ。大き目のチタン鍋にうどんの出汁を入れて、豚肉や鶏肉、豆腐、白菜などの具材を投入して、最後にうどんを入れて温めた。うどん鍋はカツオと醤油、鶏肉の油分が混ざり合った出汁がとても美味しくうどんによく合っている。三人でうどん鍋をつついているとあっという間に鍋の中は空になった。空腹が満たされたところでさっさと八剣岳登山口まで下っていく。ここからは整備された登山道で登山者も多い。つづら折れの登山道を40分ほどひたすら下っていき平坦な道になる。そこからさらに30分ほどアップダウンの続く尾根を歩いていくと分岐になってそこを東に下っていく。さらに40分ほど尾根を下っていって橋を渡ると道路にでた。ここが八剣岳登山口になる。ここで莉奈と村瀬君に待っていてもらって、俺は置いていた折りたたみ自転車で坂道をおりていって車を取りに行った。10分ほど自転車を走らせると車を駐車した場所に着いた。折りたたみ自転車を車の後ろへ積んで、八剣岳登山口まで車を走らせた。八剣岳登山口の前に車を停車させると、莉奈と村瀬君が「お疲れ様でした」と言って荷物を車の後ろに積んだ。助手席に莉奈が乗り、後部座席に村瀬君が乗って、俺達は帰って行った。帰りの車内ではさすがに疲れたのか莉奈も村瀬君も眠っていた。俺は一人暇だったので好きな音楽を車の中で流しながら運転していた。いつもの駅ロータリーに着いたのは19:40頃で莉奈も村瀬君も目を覚ました。そして「今日はありがとうございました」と三人で挨拶をして、莉奈と村瀬君は帰っていった。俺も自宅に帰って自分の部屋に入った。さすがに今日は疲れていたが、一度だけトランセンドレッド状態になって理性を戻す訓練をしておいた。そしてパソコンの電源を入れてメールを確認したが、DMやニュースメールしか届いてなかった。


■ 2018年10月1日(月)


朝8:00に目覚まし時計が鳴ったが今日は寝起きが悪かった。寝ぼけながらもカーテンをあけるとかなりの快晴だった。今日から10月に入ったが、日常生活は変わらない。いつものように部屋を出て洗面所で顔を洗った後、キッチンへ行って朝食をとる。そういえば俺が母親に莉奈を紹介して以来、もう結婚や婚活の話を両親はしなくなった。ただ、正式に婚約しているわけでもないのでいつかその話をされるんではないかと思うが、そもそも俺は莉奈の両親に挨拶していないのでまだまだ先は長いだろう。そんなことを考えながら部屋に戻って着替えをして家を出た。


すっかり秋らしい空気になっていて歩いていてちょうどいい気温だった。そして駅についていつもの時間の電車に乗った。電車の中で20代半ばくらいの黒いスーツを着た女性をみると黄色く光って見える。その女性からなにやらやる気があるような感情が伝わってきた。俺はまだ寝ぼけているのかと思って電車の中を見渡すと、40代くらいの紺色のスーツを着た男性が紫色に光って見えた。その男性からは勝ち誇った感情が伝わってきた。電車の中にいる人全員が光って見えるわけではないのだが、俺の近くにいる数人が光って見えて感情が伝わってきた。今朝は寝起きが悪かったので、まだ寝ぼけているのかもしれないと思ってとりあえず気にしないでおこうと思った。


会社の最寄り駅に到着して、10:00前に出勤した。今日は社内全体の朝礼があるので自分の席から少し前に出て、立ちながら社長が出てくるのを待っていた。社長が出てきて全員が挨拶をすると社長の長い話がはじまった。俺は上の空で聞いていたが、社長を見ると黄色に光って見えた。そして社長からは活力あってやる気満々の感情が伝わってきた。俺は自分の近くにいる人を見てみるとカスタマーサポートの主任を務めている栗原加奈子がオレンジ色に光って見えた。栗原加奈子からは陽気な気分が伝わってきた。長い社長の話が終わると社長からは黄色の光が消えていた。そして西浦真美が「では今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。


俺は自分の席に座ってパソコンの電源を入れてサーバー構築自動化のインストーラーのプログラミングをしていた。サーバー構築自動化のインストーラーのデザインは先週に全て完了しているので、あとはデザインとの繋ぎこみを児島信二が担当して、俺は最後にデータベースサーバーのインストーラーをプログラミングしていた。今日中にデザインとの繋ぎこみが終わって俺のプログラミングが終われば、明日から動作確認テストがはじまる。今回の開発は結構簡単だったように思う。俺は少し顔をあげると向かいの席に座っている小松結衣が緑色に光って見えた。小松結衣からは安らいでいる感情が伝わってきた。やっぱりおかしい。今日は数人がいろんな色に光ってみえて感情や気分が伝わってくる。これは何かの現象が起こっているのかもしれない。俺はさっさとデータベースサーバーのインストーラーのプログラミングを終わらせるようにした。そして11:30過ぎにプログラミングを終えるとソースチェックを児島信二にお願いして、西浦真美に”すぐに休憩室に来て!”とメッセージを送った。するとすぐに西浦真美から”すぐに行くわ!”とメッセージが返ってきた。


休憩室に入って椅子に座って待っていると西浦真美が入ってきた。俺は今朝から特定の人物が光って見えて感情や気分が伝わってくると説明した。すると西浦真美も周囲にいる特定の人物が光って見えて感情や気分が伝わってくるらしい。


「西浦さんもやっぱり同じ現象が起こっていたんだね。これは何かしらの現象が起こっているみたいだね」

「そうね。わたしも朝礼の時、社長が黄色に光って見えたわ。社長はやる気満々の気分だったことが伝わってきた。総務部の多田さんは青色に光って見えて、なんだか冷めた気分が伝わってきたわ」

「俺はカスタマーサポートの栗原さんがオレンジ色に光って見えて、陽気な気分が伝わってきた。それでさっきは小松さんが緑色に光って見えて、なんだか平和で安らいだ気分が伝わってきたよ」

「光っている色によってそれぞれの気分や感情が違うみたいね。光る色に共通点があるかもしれないわね。それにしてもまだ情報量が少なすぎるわ」

「もう少し様子を見ないとわからないね。今の段階ではこの現象の意味もよくわからないしね」

「そうね。もう少し様子をみてからまた話しましょうか」

「うん。じゃあ昼休み前だし、俺はそろそろ戻るね」

「わたしも戻るわね。またね」


西浦真美と話が終わって自分の席に戻った。すると児島信二がピンク色に光って見える。すごく恋する感情が伝わってきた。俺は確かめてみようと思って児島信二に”今、山内さんのこと考えてたでしょ?”とメッセージを送ってみた。すると児島信二から”どうしてわかったんですか?”とメッセージが返ってきた。俺は”ちょっと恋する表情してたからだよ”と根拠のない内容のメッセージを送った。すると児島信二から”水嶋さん、鋭いですね”とメッセージが返ってきた。俺はこれである程度は確信できた。何かしらの強い感情や気分を持った人が光って見えるのだ。ただし、光っている色が何を意味してるのかがわからない。もう少しいろんな人を観察して、色の共通点を見つけるしかないと思った。


昼休みになり、今日は定食屋でビーフステーキランチを食べることにした。定食屋の中にいる人を観察してみたが光って見える人はいなかった。昼食を終えて外にでてブラブラ歩いていると電話が鳴った。平日の昼間に誰かと思ったら莉奈からだった。


「もしもし、莉奈、どうしたの?こんな時間に珍しいね」

「祐樹君、あのね、なんだか人が光って見えるの。それでその人から気分とか感情とか伝わってくるの」

「莉奈は今保育園から電話してるの?」

「うん。ちょっと変な感じがしたから、すぐに祐樹君に電話しようと思ったの」

「保育園児達は光って見える?」

「園児は光って見えないんだけど、同僚の保育士が赤色に光って見えたんだけど、なんだかイライラしている気分が伝わってきて怖くなっちゃった」

「そっか・・・他には光って見えた人いる?」

「今日、電車の中でオレンジ色に光っている女の人が見えた。その人からは適当な感じというか陽気な気分が伝わってきた」

「俺もね、今朝から特定の人が光ってみえて、その人の気分や感情が伝わってきたんだよ」

「祐樹君もなの?これってどういうこと?もしかして、前に言ってた不思議な現象なの?」

「うん。その可能性は高いというか、不思議な現象だよ」

「ついに、わたしも不思議な現象を体験しちゃったんだね」

「とにかく危険なことはないから、また光った人をみてどんな気分や感情が伝わってきたか教えて!」

「わかった。祐樹君、わたし、本当に大丈夫かな?」

「大丈夫だよ。ただ特定の人が光って見えて、気分や感情が伝わってくるだけだから。何かおかしなことが起こったらすぐ俺に電話して!」

「うん。じゃあ、わたし仕事に戻るね。またね」

「うん、またね!」


莉奈と電話を切ったあと、俺はついに莉奈も特殊能力者になったと確信した。2033年からのメールには「莉奈に起こる現象はそこまで厄介ではないので心配する必要なし」と書いてあったが、今のところただ人物があらゆる色に光って見えて気分や感情が伝わってくるだけなので、そこまで変なことが起こるようなことはないだろう。ただ、あのメールにはこの先のことは書いてなかったので今後、莉奈に何か大変な現象が起こってしまう可能性もある。そう考えると心配になってきた。とにかく今夜から莉奈に電話をするようにしようと思った。


昼休みが終わって会社に戻って自分の席に座ると左斜め前に座っている池上有希が茶色に光って見える。池上有希からは穏やかな気分が伝わってきた。その後、業務を続けていると児島信二がまたピンク色に光って見える。児島信二からは恋する感情が伝わってきた。また児島信二は山内美沙のことを考えているのかと思った。俺は午前中にさっさと最後のプログラムを終わらせたので、いろんな人を見に行こうとしてフロアをブラブラすることにした。まずはカスタマーサポートのデスクエリアに行ってみると山内美沙が緑色に光って見える。山内美沙からは安らかな気分が伝わってきた。そして山内美沙の隣の席の女性も青色に光って見える。名前はわからないがその女性からはなにやらクールで冷めた感情が伝わってきた。続いてネットワーク事業部のデスクフロアの人達を見てみると一番手前に座っている男性が黄色く光って見える。その男性からは元気で活き活きとした気分が伝わってきた。そしてサーバー管理者の水谷主任をみてみると紫色に光って見える。水谷主任からは責任感があるという感情が伝わってきた。総務部は西浦真美がおそらく見ているので、アプリケーション事業部のフロアを見に行ってみることにした。アプリケーション事業部のフロア内を見てみると右斜め前あたりにいる男性が赤く光って見える。その男性からは怒りの感情が伝わってきた。他に見渡してみるとピンク色に光っている男女二人が見える。あの二人は両想いで付き合っている大里哲也と向井理恵だ。二人からは恋する感情が伝わってきた。続いて営業部のフロアに行ってみることにした。営業部のフロアを見渡すと真ん中あたりにいる男性が青色に光って見える。その男性からは冷静だけどどこか冷めた感情が伝わってきた。もう一人一番奥にいる女性が茶色に光って見える。その女性からは何やらルールを厳守している感情が伝わってきた。


俺はいろんな人を見て自分の席に戻った。ここでわかったことはピンク色に光っている人は恋心や愛情といった感情を持っているということ。青色に光っている人は冷静かつ冷めたい感情を持っている。黄色く光っている人は活き活きと元気でやる気のある気分であるんだろう。その他はまだ情報が少なくてわからない。もっと光って見える人を見て感情や気分が伝わってこないと色分けの意味がわからない。ただ、気になるのは昼間に莉奈から電話がかかってきて、赤色に光っている人はイライラしている気分といっていたが、さっきアプリケーション事業部にいた男性も赤色に光っていて怒りの感情が伝わってきたということだ。問題があるとすれば赤色に光っている人でイライラや怒りの感情があるということなのかもしれない。今の段階でまだ西浦真美と休憩室で話し合ってもわからないことだらけだろう。とにかくこの現象は人の気分や感情があらゆる色に光って見えるだけで厄介な問題に巻き込まれることはないだろう。


あまり起こっている現象について気にしないで黙々と業務を続けていると勤務時間終了の19:00になった。俺はさっさと退社した。帰りの電車の中でも斜め前のスーツを着た男性が茶色に光って見えて真面目に何かを守っているという感情が伝わってきた。少し向こう側にいる女子大生らしき人からもオレンジ色に光って見えて明るい気分が伝わってきた。


家に戻って夕食をさっさとすましてシャワーを浴びた後、俺は自分の部屋に入った。まずはトランセンドレッド状態になって訓練をした。やはりなかなか理性を戻すのは難しかった。落ち着いたところで莉奈に電話をかけた。今日の様子を聞いてみるとやはり赤色に光って見える人は怒りやイライラの感情が伝わってきて怖いとのことだった。俺は、赤色に光っている人にはあまり関わらないほうがよいとアドバイスしておいた。不安がっている莉奈に何度も「大丈夫だから!」と言っておいた。今日は何かと疲れたのですぐに眠ることにした。


■ 2018年10月2日(火)


目が覚めると真っ白な広い空間にいた。この空間はまた前の夢中会議室だ。空間の真ん中にテーブルがあり、青い椅子が四つあり、向かい側に水色のパジャマを着た西浦真美が座りながら眠っていた。そして左隣にはピンク色のパジャマを着た莉奈が座りながら眠っていた。俺は二人に声をかけると最初に莉奈が目を覚まして「え?ここはどこ?」と驚いていた。続いて西浦真美が目を覚まして「あら、またこの空間?」と言った。莉奈は「わたし、部屋で眠っていたはずなんだけど、ここはどこなの?どうして祐樹君がいるの?」と動揺している。俺は莉奈に説明するため話はじめた。


「莉奈、まず落ち着いてね。ここは俺達も二回目なんだけど、おそらく特殊能力者の会議室だと思う。向かい側に座っている女の人が、この前言ってた特殊能力者の良きパートナーの西浦真美さん。西浦さん、こっちは俺の彼女の笹原莉奈だよ」


莉奈は西浦真美のほうを見て「あっ笹原莉奈です。よろしくです」と言った。そして西浦真美は「水嶋君の彼女さんね。ずいぶん可愛らしい子ね。わたしは西浦真美よ。莉奈さん、よろしくね」と言った。莉奈は西浦真美を見て「うわー美人!」と言った。西浦真美は「ありがとう」と言った。そして莉奈は「これは夢の中なの?」と聞いてきたので俺は「夢の中なんだけど、リアルな夢で、おそらくここで話したことや見たことは明日、目が覚めても記憶を三人とも記憶を持ってるよ」と言った。莉奈は不思議そうに辺りを見回して「本当に不思議なことが起こってるんだ」と驚いているようだ。俺は「とにかくこの三人がこの夢中会議室に集まったということは、昨日の現象についてここで話し合うべきなんだと思う。全ての不思議な現象は何かしらの意味があるからね」と言った。ここから三人の会話がはじまった。


西浦真美「そうよね。まず光っている人の色と伝わってくる感情についてまとめましょうか」

水嶋祐樹「そうだね、まずはそれをまとめて、問題がありそうな色と感情を見つけよう」

笹原莉奈「わたし、赤色に光って見える人が怖い。昨日、二人みたけどすごくイライラしてたり怒ってる感情が伝わってきたから」

水嶋祐樹「赤色に光ってる人はたしかに穏やかな感情ではないね」

西浦真美「あら、でも水嶋君も赤く輝くことあるじゃない?」

笹原莉奈「え?祐樹君も赤く光っちゃうの?」

水嶋祐樹「あれはまた別でしょ。トランセンドレッドのことについては今度莉奈に説明するよ」

西浦真美「わたしも、昨日、赤色に光っている人みたけど、たしかに穏やかな感じではなかったわ」

水嶋祐樹「この現象で気をつけないといけないのは赤色に光っている人に関わらないほうがいいってことだね」

西浦真美「そうね。赤色に光っている人は要注意人物ね」

笹原莉奈「でも、同僚の保育士さんは昨日ずっと赤色に光ってたよ。何かイライラしてるのならなんとかしてあげたいかも」

水嶋祐樹「莉奈、その気持ちはわかるけど、下手に話しかけると逆効果になるかもしれないから、とりあえず様子を見ていたほうがいいよ」

笹原莉奈「そうだね。でも何をイライラしてるのかなあ」

西浦真美「赤色に光る人のことはわかったわ。他の色はどうかしら?」

水嶋祐樹「俺が分析したのはピンク色に光っている人は恋心や愛情といった感情を持っているということ。青色に光っている人は冷静かつ冷めたい感情を持っている。黄色く光っている人はやる気のある気分であることかな」

西浦真美「オレンジ色に光っている人なんだけど、なんだか適当というか陽気で明るい気分の人じゃない?」

水嶋祐樹「たしかに!オレンジ色に光ってる人は楽天的な感じがするね」

西浦真美「社長や役員は紫色に光って見えることがあるのよ。なんだか優越感と責任感があるような感じがしたわ」

水嶋祐樹「たしか水谷主任も紫色に光って見えたけど、責任感があるという感情が伝わってきた」

笹原莉奈「わたし、緑色に光っている人を何人かみたんだけど、みんな安らいだ気分で平和な感じがした」

水嶋祐樹「緑色に光ってる人はおだやかで平和な感じがしたかも」

西浦真美「わからないのは茶色に光っている人かしらね。昨日、茶色に光っている人を数人みたんだけど、伝わってくる感情がそれぞれ違うのよ」

水嶋祐樹「茶色に光ってる人は俺も何人か見たけど、感情や気分はみんなバラバラだね」

笹原莉奈「うちの保育園の園長が茶色く光って見えたけど、すごく頭が固くて真面目な人だよ。そういう人なんじゃない?」

西浦真美「茶色く光っている人はわたしも見たけど、規則をきっちり守っているような人だったわ。真面目な人に多いってことなんじゃないかしら?」

水嶋祐樹「おそらく茶色に光っている人は保守的なのかもね」

西浦真美「じゃあ、ホワイトボードにそれぞれの色と感情についてまとめるわね」


西浦真美は立ってマジックを持ってホワイトボードにそれぞれの色とその感情について次のように書いてまとめた。


赤色・・・怒り、イライラの感情

青色・・・冷静、冷めた感情

緑色・・・穏やか、安らいだ気分

黄色・・・活力、やる気のある気分

紫色・・・優越感、責任感

茶色・・・真面目、保守的、規則厳守

ピンク色・・・恋心、愛情

オレンジ色・・・陽気、明るい、楽天的


西浦真美「まとめてみるとこんな感じじゃないかしら?」

水嶋祐樹「うん、そんな感じだね。今回は光色感情受信現象といった感じだと思う。ここで問題になるのは赤色に光る人だね」

笹原莉奈「でも、赤色に光ってる人のことは気になるなあ」

西浦真美「莉奈ちゃんって呼んでいいのかしら?赤色に光ってる人を気にかけるなんて優しいのね!」

笹原莉奈「はい、そう呼んでください。わたし、優しいのかな?でも赤く光ってる人ってイライラしたり怒って理由が気になっちゃうんです」

水嶋祐樹「それもそうだね。ずっと赤く光ってる人は気になるね。何をそんなにイライラしてるのか・・・」

笹原莉奈「そうでしょ?わたし、そういうの気になっちゃうんだよ」

西浦真美「今回のこの現象のポイントは、おそらくずっと赤く光っている人じゃないかしら?今日も赤く光ってた人を確認する必要がありそうね」

水嶋祐樹「そうかもしれないね。じゃあ今日からはずっと赤く光っている人に焦点をあてて、その対策を考えようか」

西浦真美「そうね。それが今回の現象を終わらせるポイントになってる気がするわ」

水嶋祐樹「ただ、早まって行動を起こすのだけは避けるようにしよう。下手に行動をするとかえって逆効果になる可能性があるから」

笹原莉奈「わたしは、同僚の保育士が昨日ずっと赤色に光ってたから、今日もその人を観察してみるね」

水嶋祐樹「うん。ただ、莉奈、絶対に早まって行動を起こさないようにしてね」

笹原莉奈「わかった。それは気をつけるようにするね」

西浦真美「じゃあ、その方向でいきましょう。今日からずっと赤く光っている人を観察して、あまりにも続くようだったら対策を考えましょう」

水嶋祐樹「これで決まったね。莉奈、何かあったらすぐに連絡してね」

笹原莉奈「うん。何かあったらすぐ祐樹君に連絡するね」

西浦真美「莉奈ちゃん、こんな夢の中の会議室ではじめて会うことになったけど、これからもよろしくね」

笹原莉奈「こちらこそよろしくお願いします」

水嶋祐樹「じゃあ、そろそろ戻ろうか」

笹原莉奈「どうやって戻るの?」

水嶋祐樹「ここで眠れば、明日の朝は自分の部屋で目が覚めるよ。これは夢の中だから」

笹原莉奈「そうなんだ。そういえば眠くなってきた」

西浦真美「じゃあ、また明日ね。おやすみなさい」

笹原莉奈「おやすみなさい」

水嶋祐樹「おやすみ」


これで夢中会議が終了した。しばらくして三人とも眠った。


朝8:00に目覚まし時計が鳴って目が覚めた。夢中会議室で決まったようにずっと赤く光っている人を焦点にしてこれから観察していくことにする。カーテンを開けると今日も晴れていて天気がいい。


家をでて駅へ向かって歩いていく。駅に着いていつもの時間の電車に乗った。夢中会議室での出来事を莉奈が覚えているか心配だったので、スマホで莉奈に”今日の夢中会議のことを覚えてる?”とメッセージを送っておいた。莉奈は同僚の保育士がずっと赤色に光っていたというが、今日はどうなっているのかが心配だ。俺のほうは昨日、赤色に光っていたのはアプリケーション事業部の右斜め前あたりにいる男性だった。今日も確認して赤色に光っていたら観察していって何か対策を考えないといけない。それに今日も電車の中の人であらゆる色に光っていて、感情や気分が伝わってくる。気にするレベルのものではなかったが、赤色に光っている人はいないようだ。そして会社の最寄り駅に着いた。


10:00前に出勤してパソコンの電源を入れた。今日から動作確認テストがはじまるが、これは児島信二と小松結衣に依頼することにするのだが、その前にテスト項目書を俺が作成しないといけない。今回の動作確認テストはほとんど同じなのでテスト項目書は基本さえ作ってしまえば、あとは各サーバーごとに環境が違うだけなのですぐ出来るだろう。黙々とテスト項目書を作成していて11:30過ぎに完成させた。俺は「児島君と小松さん、テスト項目書を共有フォルダに入れておいたので、午後から各自で動作確認テストをよろしく」と言っておいた。俺はその後、席を立ってアプリケーション事業部のフロアを見に行った。ピンク色に光って見える二人が見えたが、これは大里哲也と向井理恵だ。相変わらずこの二人は恋の感情を抱き続けているんだろう。問題は赤色に光って見えた男性だ。俺はアプリケーション事業部の右斜め前あたりにいる男性を見てみた。すると今日も赤色に光っていて怒りの感情が伝わってきた。やはりこの男性を観察していくしかないのだが、そもそも名前がわからないし話したこともないのだ。


俺は自分の席に戻って西浦真美に”アプリケーション事業部のフロアに行って確認してほしい。昨日から赤色に光って見える男性がいるから、その人のことを調べてほしい”とメッセージを送った。すると西浦真美から”わかったわ!”とメッセージが返ってきた。それからすぐに昼休みになった。


今日の昼食はお気に入りのカレー屋に行くことにした。この店のピリ辛のチキンカレーはいつ食べても美味しい。毎回思うのはどうしてこの店には客が少ないのかということだ。カレーを食べていると少し汗がでてきたが、食べ終えて外に出ると汗はひいた。外をブラブラしていると莉奈からメッセージが届いた。そのメッセージには”覚えてるよ!赤色に光っていた同僚の保育士さん、今日も赤色に光ってるから観察してみようって思ってる”という内容だった。やはり莉奈も今日の夢中会議のことを覚えていたのかと思った。この光色感情受信現象を終わらせるポイントはアプリケーション事業部の男性と莉奈の同僚の保育士の問題を解決させることのように思える。俺には近くにパートナーの西浦真美がいるが、莉奈の周りには誰もいないので一人で解決させる必要があるのだろうか。それとも俺が莉奈のほうの問題にも介入するべきなんだろうか。とにかく今は莉奈にその同僚の保育士を観察してもらうしかない。そんなことを考えながら外をブラブラしていると昼休みが終わったので会社に戻った。


会社に戻ってスリープ状態にしていたパソコンを稼働させると西浦真美からメッセージが届いていた。開いてみると”あの赤色に光っているアプリケーション事業部の男性は宮ノ下和宏という名前よ。14:00になったら休憩室に来てほしい”という内容のメッセージだった。俺はすぐに西浦真美にメッセージを返しておいた。


14:00になったので休憩室へ行ってドアを開くと既に西浦真美が椅子に座って待っていた。俺は「おまたせ」といって休憩室へ入った。そして西浦真美が話はじめた。


「赤色に光って見えたのはアプリケーション事業部の宮ノ下和宏という名前だとわかったけど、それ以上の情報は何もわからないのよ。ただ、ずいぶん前に社員アンケートを集めたの覚えてる?」

「社員アンケートって願望感情受信現象の時に社内に対する不満を記入してもらったあのアンケート?」

「そう。気になってアプリケーション事業部のアンケートを見てみると、一枚だけ気になるものがあったの。アプリ事業部の社員の技術が低すぎるって記入されていたわ」

「それを書いたのが宮ノ下和宏かもしれないってこと?」

「そうなのよ。アプリケーション事業部のアンケートを見ていると社内に対する不満はあまり記入されてなかったのよ。記入されていても大した不満ではなかった。その一枚だけが何か意味深な不満だから気になったの」

「うーん。その情報だけではまだ何もわからないね。宮ノ下和宏とはどういう社員なのか調べる必要があるんじゃないかな。アプリケーション事業部の誰かに聞けないかな?」

「アプリケーション事業部で話せるのは大里君だけなのよね。一応、わたしから大里君に聞いてみましょうか?」

「俺も大里さんの話を聞いてみたいから、休憩室に来てもらうのはどうかな?」

「そうね、じゃあ今すぐ呼んでみるわね。すぐ大里君にメッセージ送るからちょっと待ってて」


西浦真美はそういって急いで休憩室を出ていった。そしてしばらくすると西浦真美が休憩室に戻ってきた。そして西浦真美は「大里君、もうすぐ休憩室に来るわ」と言った。そして少し待っていると休憩室のドアが開いて大里哲也が入ってきた。ここは西浦真美に聞いてもらうことにした。


「大里君、いきなり呼び出してごめんなさいね」

「あの、僕に何かご用でしょうか?」

「アプリケーション事業部に宮ノ下和宏という社員がいるでしょ?大里君はその宮ノ下さんのことは知ってる?」

「ああ、宮ノ下さんですね。何度か一緒に開発したことがありますから知っていますよ」

「その宮ノ下さんってどんな人なの?」

「宮ノ下さんはおそらくうちの部で一番の技術者ですね。かなり詳しいプログラマーです。それにサーバーの知識もかなり豊富です」

「アプリケーション事業部の中で一番の技術者ということなのね?」

「はい。宮ノ下さんの組んだプログラムはすごいですよ。でも宮ノ下さんはうちの部にいることに満足していないようです」

「満足していないってどういうことなの?」

「ときどき『アプリ部なんかにいても技術力はあがらない』って不満を言っています。それよりどうして宮ノ下さんのことを僕に聞くのですか?」

「アプリケーション事業部に行った時、いつも宮ノ下さんが不機嫌な顔をしてたから気になったの。だから大里君に聞いてみようって思ったのよ」

「そうなんですね。宮ノ下さん、そんな不機嫌な顔してるんですか。やっぱりうちの部の技術レベルが低いからだと思います」


そこで俺は大里哲也に話かけた。


「大里さん、システム開発部の水嶋です。その宮ノ下さんが作成した設計図とプログラムを見せてもらうことはできますか?」

「先日開発したものであれば、僕のパソコンに入ってますからお見せすることはできると思います」

「そんなレベルの高い技術者が作成した設計書とプログラムを一度見てみたいのでよろしくお願いします」

「わかりました。でもメッセンジャーに添付したりできませんのでUSBメモリーに入れて水嶋さんの席へ持っていけばいいですか?」

「西浦さん、明日の午前一番に会社のホームページ更新の打ち合わせとかの理由で会議室を予約できないかな?」


俺がそういうと西浦真美は「わかったわ。ちょうど会社のホームぺージの更新時期だから会議室を予約しておくわ」と言った。


「じゃあ大里さん、明日の午前10:00にUSBメモリーに入れて会議室に持ってきてください。会社のホームページ更新の打ち合わせということで会議室に集合しましょう」

「わかりました。でも僕が宮ノ下さんの設計書やプログラムを見せたことは誰にも言わないでくださいね」

「うん。それは約束します。じゃあそういうことで明日の朝、よろしくお願いします」


話が終わるとそれぞれ自分の席へ戻っていった。それにしてもアプリケーション事業部で一番レベルの高い技術者の設計書とプログラムとはどんなものなんだろう。それほどの技術があるのであれば宮ノ下和宏をシステム開発部に異動して欲しいところだ。


この日も児島信二がピンク色に光って見えたり、池上有希や小松結衣が黄色や緑色に光ってみえたが、伝わってくる感情は大したものではなかった。勤務時間終了の19:00になって俺はさっさと退社した。帰りの電車の中でも数人がいろんな色に光って見えるが、伝わってくる感情は気になるものでもなかった。やはり問題は赤色に光って見える人なのだ。


自宅に戻って夕食を終え、シャワーを浴びたら自分の部屋に入った。今夜もまずトランセンドレッド状態になって訓練をした。この状態になって一番厄介なのは興奮状態になっていることであるとわかってきた。理性を取り戻す前に興奮状態を落ち着かせないといけない。それから理性を取り戻すのだが、興奮状態を落ち着かせるのがかなり難しいのだ。理性を取り戻して元の状態に戻って少し休憩していた。そして莉奈に電話をかけて今日の状況を聞いてみた。どうやら赤色に光って見える同僚の保育士は、園児達へ言い方がキツイらしい。どうにも莉奈が観察していると、言う事を聞かない園児達にイライラしているように見えるとのことだった。俺は「もう少しその保育士を観察して、話しかけれるチャンスがあれば話を聞いてみるのがいいかもしれない」と莉奈にアドバイスした。莉奈は「ちょっと怖いけど、タイミングがあれば話を聞いてみるね」と言った。その後、俺の会社での話をして電話を切った。今回の現象を終わらせるには、宮ノ下和宏と莉奈の同僚の保育士の感情を何かしら解決させる必要がありそうだ。ベッドで横たわりならそんなことを考えていると知らない間に眠っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ