表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来からの伝言  作者: 涼
PR
13/41

予知夢共有現象Part1

■ 2018年7月23日(月)


朝から晴天で暑い。うるさい蝉の鳴き声がする中、俺は駅へ歩いていった。背中は汗だくになって気持ち悪いが、電車に乗るとクーラーがきいていて涼しく汗がひいていく。会社の最寄り駅に着いて10:00前に出勤した。社内全体の朝礼がはじまる。また長い社長の話を上の空で聞いていた。俺の頭の中では西浦真美にどうやって特殊能力者であることを伝えればいいのか考えていた。しかも良きパートナーであることも伝えなければならない。しかし2033年からメールが送られてきているということは言えない。社長の話が終わり、西浦真美が「今週もみなさんがんばりましょう」と言って朝礼が終わった。


自分の席に座ってパソコンの電源を入れて黙々と業務をしていた。この日は特に何も起こらない平和な一日となった。しかし結局、特殊能力者ことについては西浦真美に伝えることはできなかった。20:00過ぎに帰宅して夕食を終えてシャワーを浴びて自分の部屋に入ると電話がかかってきた。電話の相手は珍しくいっしー(石岡秀之)からだった。


「もしもし、いっしーから電話なんて珍しいね」

「そうっすね。ところで水嶋さん、8月の4日と5日の土日空いてます?」

「まだ8月の予定は何も入れてないので空いてるけどどうしたの?」

「一昨年に行った鴨ヶ城海岸に行かないっすか?」

「鴨ヶ城海岸か・・・そういえば去年は行かなかったけど、いきなりどうしたの?」

「沢もいいんすが、久しぶりに海に行きたいなって思ったんすよ」

「そうだね。久しぶりに行ってもいいね」

「じゃあ8月4日と5日の一泊二日で行きません?」

「わかった。じゃあ予定を入れておくよ。村瀬君は海に入れないから誘わないから二人になるけどいい?」

「そのことなんすけど、莉奈ちゃんを誘ってみたらどうっすか?」

「莉奈ちゃんか。でも登山でもないし、それに一泊二日だから来ないんじゃないかな」

「誘ってみるだけ誘ってみたらどうっすか?」

「うーん一応誘ってみるけど・・・」

「それに、水嶋さんって莉奈ちゃんのこと好きっしょ?」

「ええーどうしてそう思うの?」

「水嶋さんを見てたらわかりますよ」

「見てたらわかるって、俺なんか変なことしてた?」

「水嶋さん、こないだの沢の時もチラチラ莉奈ちゃんのこと見てニヤついていましたよ。それに莉奈ちゃんのことになると必死になってる感じですし・・・」

「そっか・・・まあ、好きというかなんというか、気に入ってるって感じだけど・・・」

「とりあえず、一応誘ってみたらいいじゃないっすか」

「わかった。誘ってみるよ」

「じゃあよろしくっす」


いっしーとの電話を切った後、どうやって莉奈を誘おうか考えていた。それにしても莉奈に恋心を抱いていることをいっしーに気づかれていたとは思わなかった。もしかして村瀬真也にも気づかれているんだろうか。莉奈に対する気持ちを隠しておくのも限界がきているのかもしれない。ところで、鴨ヶ城海岸とは日本海にある海岸なのだが、ここから車で3時間半ほどで行けるのだが、海に潜ったりするので体力的に日帰りはしんどいのだ。それにそんな遠い場所まで行って日帰りだと勿体ないというのもある。とにかく莉奈を海に誘ってみるか。そう思った俺は莉奈に電話をした。


「もしもし水嶋ですけど、莉奈ちゃん今大丈夫?」

「水嶋さんこんばんわ。今大丈夫ですよ」

「えっとね、俺達、毎年のように海に泳ぎに行ってるんだけど、莉奈ちゃんは海に興味はないかな?」

「海ってビーチでサーフィンとかするんですか?」

「いや、人がほとんどいない穴場で綺麗なエメラルドグリーンの海で岩場が多い磯の海岸かな。岩の洞窟があったり、そこに潜って海の中を見ると別世界に来た感じで神秘的なんだよ。」

「へえー綺麗なエメラルドグリーンの海って見たことないので興味があります!それに水嶋さんが知ってる穴場ってことはきっとすごく神秘的な場所なんでしょうね」

「ただね、日帰りは無理なんだよ。いっしーと3人で8月の4日と5日の土日で一泊二日になるんだけど大丈夫かな?」

「一泊二日ってことはどこかに宿泊するんですか?」

「近くにキャンプ場があって、テント泊になるんだよ」

「あーわたし、テント持ってないんですよ。でも行ってみたいなあ」

「テントなら俺が持ってるから貸すよ。シュラフ(寝袋)は暑いからいらないと思う」

「テント貸してもらってもいいんですか?それなら行ってみたいです!」

「8月の4日と5日の土日の予定は大丈夫?」

「土日の予定は特にありませんので大丈夫ですよ」

「じゃあ8月4日の土曜日、いつもの駅前のロータリーに朝6:00待ち合わせということでよろしく」

「はい、わかりました。よろしくお願いします」


莉奈との電話を切って、誘ってみるもんだなっと思った。まさか鴨ヶ城海岸に莉奈を連れていくなんて思いもよらなかった。それに莉奈にとってはじめてのテント泊だろう。オートキャンプだが今後、アルプスに連れていく可能性もあるのでテント泊を体験しておくのもいいだろう。まだもう少し先の話だが、莉奈と一緒に海にいけると思うとワクワクしてきた。


■ 2018年7月24日(火)


俺は夢をみていた。電車の中でセミロングで白のシャツにブラウンのチェック柄のスカートをはいた高校生らしき女の子が涙目になっている。40代半ばくらいで紺色のスーツをきた身長170センチくらいの男性がその女の子のお尻を触っている。その女の子はとても怯えているようだ。そこで目覚まし時計が鳴って目が覚めた。俺は起き上がって変な夢を見たと思っていたのだが、妙にリアルな夢でそのシーンが鮮明に頭に残っている。まあ夢なので気にしないでおこうと思って洗面所で顔を洗ってキッチンへ向かった。今日の朝食は玉子焼きに塩サバ、ご飯と味噌汁だった。朝食を食べていると母親から「祐樹、最近はぜんぜん婚活してないみたいだけど、誰かいい人でもいるの?」と聞かれた。またその話かと思った俺は「婚活なんて面倒だからしてないだけだよ」と言っておいた。すると母親が「あんたもいい加減将来のことについて考えなさいよ」とブツブツ言ってきた。面倒に思った俺は「わかったわかった」と適当に答えておいた。


今朝も晴天でうるさいセミの鳴き声がする中、駅へ歩いていった。電車に乗ってスマホで山記事をみていると、斜め右のほうにセミロングで白のシャツにブラウンのチェック柄のスカートをはいた女子高生が涙目になっている姿が見えた。それはまさに俺が今日みた夢に出てきた女子高生なのだ。そして40代半ばくらいで紺色のスーツをきた男性がその女子高生のお尻を触っているのだ。女子高生はかなり怯えている様子だった。これはまずいと思った俺は女子高生のお尻をさわっているその男の手首を掴んで「おっさん、痴漢はよくないよ」と少し大きな声で言った。電車内にいる人々がこっちのほうを向いた。俺は「この人が痴漢行為をしていました」と言った。その男は「な、なんのことだ。私は痴漢なんてしてないぞ」と否定した。俺はお尻を触れていた女子高生に優しく「怖かったよね。もう大丈夫だから」と言った。すると女子高生は小さく「はい」と呟いた。次の駅に着くとその痴漢行為をした男の手とその女子高生を手を引っ張って駅に下りた。痴漢行為をした男は「何なんだね君は!私は痴漢なんてしていないだぞ」と言った。俺は女子高生に「この男にお尻触られていたよね?」と聞いた。するとその女子高生は「は、はい」と小さな声で答えた。その男は女子高生に「私が痴漢をしたという証拠でもあるのかね?」と強気に言った。女子高生は困った顔をしていたので「俺はあんたがこの子のお尻を触ってるところを目撃したんだ」と言った。そして俺は近くにいた駅員さんを呼んで事情を説明した。駅員さんはその女子高生に「この男の人にお尻を触られたの?」と聞いた。女子高生は困った表情をしながら「はい」と答えた。しかし、痴漢行為をした男は「私がお尻を触ったというなら証拠をみせてみろ」と言う。それを聞いた俺は「あんたがお尻を触ってるところを俺は目撃したんだ。この子(女子高生)がこんなに怯えているのが何よりの証拠だ」と言った。しかし断固として痴漢行為をした男は否定し続けている。駅員さんが「とにかくこちらへ来てください」と駅員室に連れていかれた。痴漢をされた女子高生は困った表情をして沈黙していたが、この男にお尻を触れたかと聞かれると「はい」としか言わない。痴漢行為をした男はとにかく否定し続けている。そんなやりとりをしていると二人の警察官がやってきた。一人の警察官が女子高生に「この男の人にお尻を触られたのは間違いない?」と聞くと小さな声で「はい」とその女子高生は呟いた。そして痴漢行為をした男に「この子(女子高生)はこう言ってるけど、間違いありませんか?」と聞くと「私は何もやっていませんよ」とその男は否定した。その話に割って入った俺が「あんた嘘つくなよ。俺はあんたがこの子のお尻を触ってるところを目撃したんだ」と言った。警察官が俺に「この子のお尻を触ったのはこの男の人だったのは間違いない?」と聞かれたので「俺はお尻を触ってる手首を掴んだから間違いないです」と答えた。痴漢をやった、やってないの押し問答が続いたが、その女子高生は怯えながら「わ、わたしはこの男の人にお尻を触られました。間違いありません」と二人の警察官に向かって言った。一人の警察官が痴漢行為をした男に対して「この子もこう言ってますし、この人はあなたが痴漢行為しているところを目撃者したと言ってます。とりあえず署までご同行願いませんか?」と言った。あくまで痴漢行為をした男は「私は何もやってない」と言い続けながらも一人の警察官に連れていかれた。もう一人の警察官が女子高生の名前や住所、学校名など聞いていた。俺はどうしたらいいのかわからず、女子高生にいろいろ聞いている警察官に「あの、俺はどうすればいいですか?出勤途中だったんですが・・・」と聞いてみた。すると警察官から名前や住所、連絡先と会社名を聞かれて答えた。そして警察官に「もう会社に行ってもらってもいいですよ。裁判ということになったら目撃者としてご連絡させていただくかもしれませんので、その時はご協力願います」と言われた。最後に女子高生が俺のほうを見て「ありがとうございました」と礼をしてきた。俺は「いえいえ」と言って駅員室を出た。


それにしても面倒なことに巻き込まれたが、まさか今日の夢が正夢になるとはびっくりした。もう11:00を過ぎていたので会社に電話して日根野部長に軽く事情を説明して遅刻すると言った。それから出勤したのは11:40過ぎだった。すぐに昼休みになったが、俺はコンビニで弁当を買って会社に戻り業務をしていた。15:00頃にちょっと疲れたので休憩室へ行くと、西浦真美が座っていた。「お疲れ様です」と挨拶すると西浦真美が話しかけてきた。


「水嶋君、今日は珍しくお昼前に出勤してきたけど、痴漢でも捕まえたの?」

「そうだけど日根野部長に何か聞いたの?」

「別に何も聞いてないわ。そんな気がしたのよ」

「そんな気がしたってどういうこと?なんで西浦さんが知ってるの?」

「あのね、今日、電車の中で女子高生が40代くらいの男性に痴漢されてる夢をみたの。変な夢だなって思ったら、水嶋君が珍しく遅刻してきたから、もしかと思ったのよ」

「ええー!俺も同じ夢を見たかもしれない。その女子高生と男性の特徴を覚えてる?」

「たしか、白いシャツにブラウンのチェック柄のスカートを履いた女子高生と紺色のスーツを着た男性だった」

「まさに俺も同じ夢を見たんだよ!それで今日、電車の中で実際に同じシーンを見て、痴漢を捕まえたんだよ」

「そうなんだ。水嶋君とわたしが同じ夢を見て、それが正夢になったというわけね?」

「うん。それにしても西浦さんも同じ夢を見てたとはこれって偶然なのかな?」

「わかんない。もしかしてまた何かの現象が起こってるのかも」

「どちらにしても、ただの偶然だったらいいんだけど、様子をみるしかないね」

「わかったわ。また変な現象に巻き込まれてなかったらいいんだけど・・・」


心配そうな表情をしながら西浦真美が休憩室から出ていった。単なる偶然とは思えない夢だが、何が起こっているのか今の段階ではわからない。それに今回の正夢に西浦真美は何の影響もなかったので、そこまで気にすることでもないだろうと思っていた。


■ 2018年7月25日(水)


今日も夢をみていた。社員達が何やら騒いでいてカスタマーサポートの従業員達がクレーム電話の対応をしている。「現在、調査中です」、「申し訳ありません。現在は不明です」と電話でやりとりをしている。何か大障害が起こっているようだ。会社のエンジニア数人が必死に調査をして頭を悩ましながら「こっちは問題ありません」、「原因不明です」などと言っている。そこで突然真っ白な画面になり「Out Of Memory」という文字が表示されていた。そこで目覚まし時計が鳴って目が覚めた。昨日に引き続いて今日も妙にリアルな夢を見た。夢でのシーンが鮮明に頭に残っている。もし、また正夢になるなら、会社に行くと騒いでいることになる。


今朝もかなりの晴天で暑い中、駅まで歩いていった。電車に乗って今日見た夢について心配になってきた。もし正夢になったらと思うと出勤するのが怖くなってきた。電車に揺られながら夢のことについて考えていると会社の最寄り駅に到着した。俺は恐る恐る10:00前に出勤した。社内は静かで騒ぎになっている様子はない。俺はホッとして自分の席に座ってパソコンの電源を入れた。黙々と作業をし続けていたが、ちょっと喉が渇いたので休憩室の自動販売機でお茶を買うことにした。休憩室に入るとまた西浦真美が座っていた。「お疲れ様です」と挨拶すると西浦真美が話しかけてきた。


「ねえ、水嶋君。アウトオブメモリーってどういう意味?」

「ええー!?まさかとは思うけど、今日、夢を見たの?」

「どうしてわたしが夢を見たってわかったの?」

「だって、俺も白い画面にアウトオブメモリーって文字が表示された夢を見たんだよ」

「うそ!わたしも同じ夢をみたのよ!社内で騒ぎになってる夢だったのよ」

「俺も同じ夢だった。クレーム電話が殺到していて、エンジニアが頭を悩ましてるんだよ」

「まさか正夢ってことはないわよね?今は何も騒ぎになってないようだけど・・・」

「それはわからないんだけど、昨日に続いて今日もまた俺と西浦さんが全く同じ夢を見たってことだよね?」

「水嶋君、気味が悪いわ。やっぱり何か変な現象が起こってると思うの」

「そうかもしれないけど、それが正夢になるかどうかわからない。ただ、俺と西浦さんが同じ夢を見ているってのは間違いなさそうだね」

「もうーどうしてわたしと水嶋君って変な現象に巻き込まれるの?わけわかんない」

「それなんだけどね、今度説明するよ」

「水嶋君、何か知ってるの?」

「今ここで説明すると長くなってしまうから、また今度一緒に昼食に行った時でも話すよ」

「わかったわ。それより、今日、社内で騒ぎになったりしないといいんだけど」

「今のところ何も起こってないから、様子をみるしかないね」


そう言って俺は自動販売機でお茶を買って休憩室を出た。午前中は特に騒ぎになるようなことはなかった。昼休みになり、今日はチーズチキンランチだと思って、会社近くの定食屋に行った。蒸したチキンにとろけたチーズがたっぷりのっていて、これがまた美味しいのだ。しかもワンコインと安い。定食屋を出てあまりにも暑いので、近くの本屋に入ってコミックスを立ち読みしていた。


昼休みの終了の時間になり会社に戻ると、なにやらカスタマーサポートで電話が殺到しているようだった。「大変申し訳ありません」や「ただいま原因の調査中でして・・・」などの声が聞こえてきた。俺は自分の席に座って児島信二に何が起こってるの聞いてみると、どうやらホームページが表示されなくなったという。会社のホームページを開いてみると、ブラウザーがアクセスしようとしているようだが全く表示されない。社内のサーバーエンジニア達が「ウェブサーバーはちゃんと稼働しています」、「こっちのサーバーも問題ありません」、「原因不明です」などと言っている。これはまさに俺が今日見た夢のシーンなのだ。カスタマーサポートではクレームの電話対応、サーバーエンジニア達の必死の調査で慌ただしくなっている。そこに西浦真美が俺の席まで走ってきた。そして「ちょっと水嶋君、これって・・・」と西浦真美が驚きの表情をしている。俺は「西浦さん、とりあえず落ち着こう」と言った。そこで俺は真っ白の画面に表示された『Out Of Memory』という文字のことを思い出した。サーバーなら黒の画面なのでわかるのだが、白の画面ということはサーバーではないのだ。白の画面だということはネットワーク機器だ。俺は「西浦さん、アウトオブメモリーだ!」と思わず声に出してしまった。意味が全くわかってない西浦真美は「どういうこと?」と聞いてきたが、俺はサーバー管理者である水谷主任のところへ走っていった。


「水谷さん!ウェブサーバーに障害が起こっているようですが、至急確認してほしいことがあります」

「水嶋さん、どうかした?ウェブサーバーは問題なく稼働しているんだけどね」

「バランサーにアクセスしてメモリー不足になってないか確認してみてください!」

「バランサーか、わかった。ちょっと見てみるよ」


水谷主任がバランサーにアクセスして中身を確認すると「あっ!」と声を発した。


「水嶋さん、バランサーがメモリー不足になっていたよ」

「それって『Out Of Memory』ですよね?」

「うん。それにしても水嶋さん、よくバランサーのメモリー不足だとわかったね?」

「いえいえ、ウェブサーバーに問題がないとすれば原因はバランサーかなって思ったんです」


俺は嘘をついた。本当は夢を見て白い画面だったのでわかったのだ。


「おそらく外部からアタックされて、バランサーに負荷がかかったんだと思う。とりあえずバランサーを再起動させるよ」

「原因がわかってよかったです!それでは失礼します」

「水嶋君、ありがとう!」


どうにか障害は最小限にとどめることができたようだ。先ほど話の途中になってしまったので、俺はそのまま西浦真美の席へ行った。そして事情を説明した。西浦真美は「ちょっと休憩室に来て」と言って席を立った。一緒に休憩室に入ると西浦真美が話してきた。


「わたしと水嶋君が同じ夢を見ると、どうやらそれは正夢になるようね」

「そうみたいだね。今回はおそらく予知夢共有現象といったほうがいいのかも」

「水嶋君、今回のこの現象は何が原因で起こっているのだと思う?」

「それはまだわからないよ。でも昨日の痴漢の件といい、今日の騒ぎといい、夢をみたおかげでなんとか解決できてるのは間違いなさそうだけどね」

「それはそうよね。今回はわたしに何か影響があるわけでもないし、別にいいんだけど・・・」

「とにかく、明日も何か夢を見たら、朝11:00に休憩室に集まって話をするようにしない?」

「そうね。とんでもない夢をみたりしちゃったら大変だもんね」

「とりあえず、今回も障害を最小限に抑えることができたので、そこまで困るような現象でもなさそうだから」

「そうね。わかったわ」


そういって二人それぞれ休憩室を出て自分の席へ戻っていった。それにしても未来が見えるというのは複雑な心境だが、どうして西浦真美と俺の二人が同じ夢を見てしまうのかが大きな謎である。しかし、この先、二人が同じ夢を見る意味を知ることになるのだ。


■ 2018年7月26日(木)


今日も夢をみていた。茶髪のマッシュヘアー、ブルーの半袖アロハシャツに白のパンツをはいた30代前後くらいの遊び人風の男がパチンコをしている。パチンコ玉がなくなりパチンコ屋を出て薄暗くなった道路をブラブラ歩きながら会社のビルの裏手にある公園に行って誰かを待っているようだ。その公園に一人の薄いピンク色のワンピースを着た女性が歩いてきた。どこかで見たことあるような女性だ。その女性はその遊び人風の男の前へ行き何やら話しているようだ。そしてその女性は鞄の中から白くて緑色のロゴが入った現金封筒を取り出して男に渡した。男は現金封筒を受け取ると「ありがとう」と言って手を振りながら公園を出ていった。その女性が振り向いた瞬間、すこし垂れ気味の目にしょうゆ顔である。この女性は同じシステム開発部の池上有希だった。続いて男は路地裏に行き、辺りを見回して受け取った現金封筒の中から札束を出した。男はニヤついてそのまま現金封筒を投げ捨てた。その後、その男は繁華街のキャバレーに入っていった。そこで目覚まし時計が鳴って目が覚めた。今日の夢もかなりリアルで妙に感じた。もし、これが正夢になるのであれば俺はどうするべきなのか考えた。


今朝は久しぶりの曇り空で日差しはないものの、気温はかなり暑かった。いつものように10:00前に出勤してパソコンの電源を入れた。すると「おはようございます」と言って池上有希が出勤してきた。薄いピンクのワンピースを着ている。今日の夢に出てきた池上有希そのものだ。夢に出てきた遊び人風の男と池上有希の関係がわからないが、夢の中で男が現金封筒から取り出した札束は結構な金額だっと思う。その後、その札束を持ってキャバレーに入っていったことからしても悪い予感がするのだ。俺は業務をしながら左斜め向かいの池上有希の姿をチラチラみていたが、何か思い詰めていたり悩んでいる感じもしない。11:00になったので昨日約束した通り休憩室に向かった。休憩室に入ると西浦真美が座っていて俺の顔を見るなり話しかけてきた。


「水嶋君、今日、池上さんの様子はどんな感じ?」


池上有希の話をいきなりしたということは、西浦真美は俺と同じ夢を見たのだろう。


「それがね、俺もチラチラ池上さんの様子を見てたんだけど別に普通なんだよ」

「池上さん、あの男にかなりの現金を渡してたわよね?」

「そうなんだけど、あの男と池上さんの関係がわからないからどうしたもんかと思ってるんだよ」

「でもあの男は池上さんの現金を持ってキャバレーに入っていったわよね?池上さん、どうも騙されてるような気がするのよ」

「たしかに俺もそう思ったんだけど、俺達が割って入っていい問題なのかわからないんだよ」

「それとなく池上さんに聞いてみたりできないかしら?」


それとなく池上有希に聞くといっても「夢でみたんだけど」なんて言うわけにもいかない。


「池上さんに聞くといっても何をどう聞いていいのかわからないよ」

「わたしは、どうにもあの男のこと信用できないのよ。きっと池上さんは騙されてるんだと思う」

「俺もあの男は信用できないんだけどね。うーん・・・どうすればいいんだろうね」

「そうよね。何か事情があるかもしれないし難しい問題よね」

「でも、一つだけ確実なのは池上さんが渡した現金はまともな使われ方はしないってことかも」

「たしかにそうね。事情はどうであれ、まともな理由ではないのは確かよね」

「外の薄暗さからして、おそらく勤務終了時間後だと思うから、今日勤務終了後に池上さんの後をつけてみる?」

「それがいいわね。夢の中では何の話をしてたのかよく聞こえなかったから、後をつけてあの男とどんな話をしているのかこっそり聞いてみたほうがいいわね」

「じゃあ、勤務時間終了後にこっそり池上さんの後をつけよう」

「わかったわ。じゃあまたその時間にね!」


今日の勤務終了時間後、俺と西浦真美で池上有希の後をつけることにした。こういう日は時間が経つのが遅い感じがする。午後になっても俺は池上有希のほうをチラチラと見ていたが、やはりいつも通りである。


19:00になって勤務終了時間となった。池上有希が「お先に失礼します。お疲れ様でした」と言って席を立った。俺も「お疲れ様でした」と言って、池上有希の後を追った。エレベーターの前で西浦真美と合流して池上有希と同じエレベーターに乗った。そして会社のビルの外に出ると池上有希は駅とは反対側のほうへ歩いていった。そこから少し後ろから俺と西浦真美は池上有希について行った。ビルの角を左に曲がって道路を真っすぐ歩いていき、さらに左に曲がって会社のビルの裏通りを歩いていった。そして池上有希は会社のビルの裏側にある小さな公園に入っていった。俺と西浦真美はその公園の横側にあるブロック塀にしゃがみこんで話を聞くことにした。


「優斗君、お母さんの体調は大丈夫なの?」

「今はあまりよくないんだよな。入院している医者からは手術さえすれば助かるって言われてるんだけどな」


まさに夢に出てきた男で間違いない。優斗という名前らしい。


「手術費用ってどのくらいかかるの?」

「30万円くらいかかるらしいんだよ。でも俺には入院費用を支払うだけでも大変なんだよな」

「30万円か・・・わたし、優斗君に何もしてあげられないけど、30万円くらいのお金だったら貯金があるから使ってくれてもいいよ」

「有希、マジでいいのか?」

「うん。わたしに出来ることってそのくらいしかないから」


池上有希はそういって鞄の中から現金封筒を取り出した。その瞬間、西浦真美が「池上さん、それ渡しちゃダメ!」と大きな声で叫び、公園の中に入っていった。俺も後に続いて公園内に入っていって、池上有希と優斗という男の間に立った。池上有希が「西浦さんに水嶋さん!」と言ってとても驚いた表情をした。西浦真美が「池上さん、この男の言ってることは全部嘘よ。絶対にそのお金は渡しちゃダメよ」と言った。それを聞いた優斗という男が「あんたら何だよ!これは俺と有希の問題なんだから無関係な奴は入ってくんなよ」と言った。俺は優斗という男を睨みつけながら「あんたの母親が入院してるっていうのは嘘だろ?入院費用を支払うだけで大変な奴がパチンコ屋なんかいくわけがない。それにあんた、池上さんから現金を受け取ったらそのままキャバレーに行くつもりだろ?」と言った。優斗という男は「嘘なんていってねえーよ!マジでおふくろは入院してんだよ。パチンコ屋?何の話だよ。適当なこと言ってんじゃねえよ」と俺を睨みつけながら言った。俺は「あんたが、さっきパチンコ屋から出てくるのを見たんだよ!本当に母親が入院してるっていうんだったらどこの病院か言ってみろよ!」と攻撃的に言った。優斗という男は「そ、そこの市民病院だよ」と少し動揺している。さらに俺は「どこの市民病院?ハッキリ病院名を言ってみろよ!」とつっこんで言った。その言葉を聞いて優斗という男が黙り込んだ。すると池上有希が「優斗君、まさかわたしに言ってたこと、嘘じゃないよね?」と悲しげに聞いた。優斗という男は「嘘じゃない」と小さく呟いた。俺はさらに「嘘じゃないなら病院名言ってみろ。その病院に電話して聞いてやるから!」と攻撃的に言った。すると開き直ったかのように「あーあー、バレたらしゃーねーな」と優斗という男が言った。池上有希が「優斗君、全部嘘だったの?」と少し涙目で聞いた。西浦真美が慰めるかのように池上有希の肩に手をおいた。優斗という男は「あー全部嘘だよ!ったくーもうちょっとだったのによー」と言った。池上有希は涙を流しながら「今までのこと全部嘘だなんて酷い」と小さな声で呟いた。俺は優斗という男を睨みつけながら「あんた最低な奴だな。二度と池上さんに近づくな!」と言った。すると優斗という男は「あーわかったよ。有希なんて最初から興味ねえーっつうの」といって公園から去っていった。


しばらく池上有希が泣いていたので西浦真美が慰めていた。そして公園のベンチに座って落ち着いたところで池上有希から事情を聞いた。7月の上旬頃、池上有希は友達から合コンに誘われて行った。その時に出会ったのがさっきの優斗という男だったらしい。最初は優しくしてくれていたらしく、淋しがり屋であった池上有希にとっていい出会いだと思ったようだ。何度か二人で電話で話しているうちに、池上有希は優斗という男のことをかなり気に入ったらしい。ところが7月の中旬頃に優斗という男から相談があると言われた。それが今回の母親の入院話だった。手術をしないと母親が死んでしまうと聞かされたという。そこで悩みに悩んだ池上有希は自分に出来ることはないかと考えて貯金を渡そうと考えた。そして今日に出来事に至ったということだ。


「池上さん、辛かったね!大変だったね!でもよくがんばったよ」


西浦真美そう言って池上有希を慰めた。


「西浦さん、水嶋さん、ありがとう。でもどうして優斗君の嘘に気づいたの?」


池上有希のこの質問に俺と西浦真美は困惑してしまった。まさか夢で見たとは言えない。少し沈黙して俺は話した。


「どうも池上さんの様子がおかしいと思ったから、西浦さんと相談して後をつけたんだよ。そしたら公園でこんな話をしてたから変だと思ったんだよ」


これを聞いた西浦真美は目で「ナイス」という合図をした。すると池上有希は「本当にありがとう、ありがとう」と何度も呟いた。これで今回のことについては解決できたのだ。池上有希はかなり落ち込んでいたので西浦真美が「池上さん、一人で帰れる?」と聞いてみると「はい。大丈夫です。一人で帰れます」と言った。そして一応、俺と西浦真美は駅まで池上有希を送っていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ