第3章 人生の問題
それは、ある日の昼休みのことだった。
早く食べ終えた男の子たちが、ボールを持ちながらナツキのもとへとやってきた。
「おい、ナツキ。ドッジボールしようぜ」
「え、まだ食べてるよ」
「早く食べろよ。じゃないと、これもらうぞ」
男の子のひとりがからあげに手を伸ばしたので、それを全力で阻止する。
「ちょっと、これとったら許さないよ」
「なんだよ、食い意地はってるなあ」
「どっちがだよ。もう、先行ってて。すぐ追いかけるからさ」
男の子たちを見送ると、ナツキは急いで箸を進めた。
「ナツキちゃん、そんなに急いで大丈夫?」
机を繋げて一緒に食べていたレナは、心配そうにこちらを見ている。
「ねえ、ドッジボールやるの?」
もうひとり、一緒に昼食を摂っていたアケミが聞いてきた。
「え、うん。そのつもりだけど?」
「なんで? 今、私たちと食べてるのに」
アケミが言う。
「だから、食べ終えたら行くんだよ?」
「一緒にお昼食べるってことは、おしゃべりして盛り上がろうってことじゃないの?」
どういうわけか、アケミは少し怒っているようだ。しばらくの間、重い沈黙が流れた。
「もういい。男子たちに混ざってくればいいよ」
食事の途中ではあったがアケミは机を定位置に戻すと、ひとりで続きを食べ始めた。レナもナツキを離れ、アケミの方へと向かう。ひとり取り残されたナツキは、茫然と女の子たちを見ていたが、
「ナツキ、まだかあ?」
と、校庭から自分を呼ぶ声に、なんとか箸を動かすとご飯を胃の中へと押し込んだ。味などわかったものではない。大好きなからあげすら、美味しいとは思えなかった。
「みんな、明日は前から予告していた通りテストをするからね」
授業が終わり、ホームルームの時間に先生が言う。みなが渋い顔をする中、
「テストは学年ごとに出すから、自分の範囲をしっかり勉強しておくように」
と言って、その時間を締めくくった。
放課後となり帰り支度をしていると、いつものように男の子たちがナツキを誘いにくる。
「ナツキ、昼休みの続きをやろう」
見ると、ドッジボールで使用していたボールを脇に挟んでいる。
「え、でも、明日テストだよ?」
「どうせ勉強なんてやらないんだろ?」
男の子たちは顔を見合わせて笑った。ナツキは苦笑する。
「私は、さすがに前日くらいはやるよ。それに、校庭でドッジボールしてたら怒られるんじゃないかな? 今日くらい勉強しなさいって」
「えー、先生怒るかなあ?」
「怒られなくても注意はされると思うな」
「そっか。じゃあ、今日は帰るか」
そうして、みんなで仲良く下校することになったのである。ナツキもまた、この日は湖に寄ることなく、まっすぐに家路についた。
自宅に着くと、ナツキは自室にこもった。夕飯の時間まで、明日のテスト範囲を見直しておこうと思ったのだ。
「明日は理科のテストか」
つぶやきながら、理科の教科書とノートをランドセルから取り出す。
「えっと、流れる水の働きについてだったね」
教科書をぱらぱらとめくる。テストは明日なので、初めから巻末に載っている問題集を解いてみることにした。
「えっと、流れる水が地面などを削ることを何というか…」
ふと、昼休みのできごとが脳裏をよぎる。
—あの時、なんで怒っちゃったんだろう?
アケミとレナのことが思い出された。一緒に昼食を摂ろうと誘われて、ナツキは彼女たちといたのだ。その後、昼食を終えたらドッジボールをしようと男の子たちからの誘いがあり、昼食後は特に予定もなかったので了承したのである。そのことが、どうやらアケミとレナの気に障ったらしい。
—やっぱり、いろいろとおしゃべりするまでが「一緒にご飯食べよう」って意味だったのかなあ…。
そこまで考えて、はっとする。今は理科の問題を解いている最中だった。
「あー、えっと…流れる水が地面などを削ることを何というか」
先ほどよりも幾分か大きな声で問題を読む。
「これ、なんだっけかな…」
考えながら、ミクの顔が浮かんできた。
—今日もミクちゃんと話せなかったな…。
なぜ、関わらないでくれなどと言うのだろう。ミクからそう言われて以来、ナツキはずっと考えていた。
—ミクちゃん、本当は私のこと嫌いだったのかなあ。
だが、ミクは最後に、ナツキのことを好きだと言った。その言葉がナツキをさらに悩ませていた。
—どうせなら、嫌いって言われた方がすっきりするんだけどなあ。
好きなのに関わらないでなんて、ナツキの中ではどうしたって納得がいかなかったのだ。
「ああっ…」
叫ぶと、ナツキは頭を抱えて机に突っ伏した。
「もう、全然進まない…」
問題の内容がまるで頭に入ってこなかった。ひとつ盛大にため息をついた時、
「ナツキ、ご飯よ」
と、母の呼ぶ声が聞こえた。
「今行くよ」
そう答えると、ナツキは2度目のため息を吐き出す。そして、教科書とノートを閉じた。
夕食のあとも、ナツキは机に向かって問題とにらめっこするのだが、次から次へと別な問題が頭に浮上し、何も解決できないままに教科書を閉じてランドセルに入れた。
「もう…なるようになれ、だ」
理科のテストのことか、はたまた友人たちのことか…。そうつぶやくと、ナツキはベッドにもぐり込んだのだった。
翌日は結局、何も勉強できないまま理科のテストに臨むこととなった。
そして放課後、ナツキはランドセルをつかむと席を立った。
「ナツキ、今日も帰るのか?」
男の子たちが尋ねる。
「うん。今日は寄るところがあるんだ」
「ナツキ、最近つまんないよ」
ひとりの男の子から不満の声が上がる。それを皮切りに、他の男の子たちも口々に言った。
「そんなに俺たちと遊ぶのが嫌なのかよ」
「毎日毎日、なんの予定があるんだよ?」
「やっぱり、ナツキもつまんない女子なんだな」
最後の言葉を聞くと、ナツキは逃げ出すように教室をあとにした。
「おい、ナツキ」
男の子の呼ぶ声が聞こえたが、ナツキは振り向くことはなかった。
「あ、ナツキ」
林を抜けると、湖から声が上がった。
「ナツキでしょ?」
ナツキは、近づいて湖をのぞき込む。
「足音でわかるの?」
「わかるよ。それに、ここに来るのはナツキくらいだもの」
「そっか」
「何かあったのかい?」
表情の硬いナツキに、アキは心配そうに尋ねる。
「うん、まあ、いろいろとね」
「ふうん」
しばらくの間、沈黙が流れた。
「あのさ」
ナツキが話し出す。
「女子が男子といるのって、変かな?」
「僕はそうは思わないけど?」
「そっか」
「誰かに何か言われたのかい?」
「そうじゃないんだけどさ。女子の感覚と男子の感覚って、違うんだなあって思うんだ」
「どんなふうに?」
「いつもね、昼ご飯を一緒に食べる女子がいるんだ。昼休み中に、早く食べ終わった男子がさ、ボール遊びによく私を誘いにくるんだよ。だから、いつもその誘いに乗って男子とボール遊びをやるんだけど、今日ね、一緒にご飯食べてた子に怒られちゃってさ。もうひとり、一緒にいた子は怒りはしなかったけど、怒って席を離れた子の所に行っちゃったんだ」
「それから?」
「放課後も男子たちは遊びに誘ってくるんだ。でも、私は放課後は早く帰りたいって思うんだよ」
「それで、男子と女子で感じ方が違うんじゃないかってことかい?」
ナツキはこくりとうなずいた。
「ナツキはどっちなの?」
「え?」
「女子の気持ちに近いの? それとも男子?」
「どっちも、わかるしわからない」
「複雑だね」
「うん」
「だけどさ、それでいいんじゃないかな?」
「…なんで?」
「だって、それがナツキなんだもの」
「……」
「女子だから女子に合わせなきゃいけないってことはないでしょ? 僕はね、女の子の友達が多かったよ。いつも女の子と一緒に遊んでいたんだ。男子と遊ぶことが楽しいとナツキが思うなら、楽しく遊んだらいいんだよ」
アキは続ける。
「たぶんだけどね、女の子たちは、昼休みには友達と楽しくおしゃべりしたかったんじゃないのかな? ナツキが、食べ終えたらすぐに他の遊びに行っちゃうから、自分の思っていたこととの違いに感情がついていけなかったんだと思うよ」
一緒にお昼を食べるってことは、おしゃべりして盛り上がろうってことじゃないの? …そう言った女の子の顔が脳裏に浮かんだ。
「それから、これもたぶんなんだけどね。男の子たちの方は、ナツキがそういう悩みを抱えながら遊んでいたから、自分たちと遊ぶのがつまらないのかなって勘違いしたんじゃないかな?」
そんなに俺たちと遊ぶのが嫌なのかよ…先ほどの男の子の言葉が、耳元で聞こえるようだった。
「昼休みにね、みんなと一緒に楽しそうに遊んでいたら、放課後は早く帰ったとしてもたいして問題にはならなかったんじゃないのかなって思うけどなあ」
「すごいね、アキは…」
ナツキは、大きな目をさらに見開いて言った。
「きっと、アキの言う通りなんだと思う」
「そう? まあ、僕は状況を見てないから違うこと言ってるかもしれないけど」
ナツキはふるふると首を振る。
「アキの話を聞いてたら、パズルのピースがはまったって感じがしたよ。私と同じくらいの年なのに、すごいよ。なんか納得しちゃったもの」
湖の中で、くすくすとアキが笑った。
「こう見えて、僕はナツキのお父さんと同じ年頃なんだよ? まあ、ナツキのお父さんの中身は、おじいさんと同じくらいなんだろうけどね」
「そっか。アキは、おじさんなんだね」
「え、ひどいなあ」
アキが心外そうな表情をするので、ナツキもくすりと笑った。
「アキ、ありがとう。明日は、アキに言われたことを考えながら、やってみるよ」
「うん。頑張ってね、ナツキ」
そうして、2人は笑い合ったのだった。
翌日、ナツキは緊張を抱きながら登校する。
教室に着くと必ず挨拶をくれる友人たちが、その日は誰も声をかけてはくれなかった。自分から声をかけようとも思ったが、思うだけで終わった。もしも拒絶されたら…そう思うと、なかなか言い出せなかったのである。
1時間目は、昨日行った理科のテストを返却された。86点だった。そして、2時間目、3時間目と進み、憂鬱な昼休みの時間がやってきた。
朝から予想していた通り、アケミとレナは、この日誘いに来ることはなかった。ナツキがひとりで食べようとしているところを見かねたのか、中学生のお姉さんが声をかけてくれた。そして、2人のお姉さんと一緒に昼食の時間を過ごしたのだった。
もうじき食べ終わろうかという頃、がらりと教室の戸が引かれた。先生である。
「ナツキさん、食べ終わったら校舎裏に来てね」
そう言うと、先生はすぐに教室を出て行った。
「なんだろうね?」
中学生のお姉さんが言う。
「ナツキちゃん、テストの点数でも悪かったの?」
もうひとりのお姉さんが尋ねる。
「いえ…」
ナツキは答えた。良いか悪いかで言うならば、良い方だとは思う。考えられるとするならば、前回行った理科のテストの点数よりも、今回の点数が下がったということくらいだろうか。あれやこれやと考えてみたが、それくらいしか思い浮かばない。だが、あまり考えていても箸が進まないので、数分で考えるのをやめて食事に集中する。そして、食べ終えると、先生に指定された校舎裏へと向かったのだった。
校舎裏に着くと、先生は校舎に背を預けて座り、目の前の花壇を見つめていた。真っ赤なサルビアの花が、もうじき咲こうとしていたのだ。
「先生」
声をかけると、先生は笑顔でナツキを手招きした。
「ナツキさん、ここに座って」
言われるがままに先生の隣に座る。
「見て。みんなで植えたサルビア、もうじき花が咲くわ。楽しみね」
「そうですね」
「あら、ナツキさんは楽しみじゃないの?」
浮かない表情をしてしまっていたのだろうか。先生は少しばかり不服そうに言う。
「いえ…私も、楽しみです」
そう言うと、先生は笑った。
「ねえ、先生」
ナツキは堪らずに口を開く。
「私を呼んだのはなんで? …ですか?」
そこで、先生はサルビアから目を離し、ナツキに向き直った。
「ナツキさん、理科のテストのことだけれど、点数が下がったわね?」
やっぱり、とナツキは思った。
「前回は、92点だったわ」
「でも、平均点よりは上でしょ?」
「ナツキさんは他の子たちよりも理解力があるのよね。だから、授業さえ聞いていれば、勉強しなくてもある程度できてしまう」
「……」
「前にも言ったと思うけど、結果が良ければいいという考えはいけないわ。特に学生のうちはね。ナツキさんなら、しっかり勉強すれば100点だって採れるはずよ」
「ごめん、なさい…」
「ナツキさん」
先生は、うつむいてしまったナツキに優しく声をかける。
「何か、悩みごとでもあるの?」
悩みごとと言われ、クラスメイトたちのことが脳裏をよぎった。さらにうつむくナツキを前に、先生が言う。
「ナツキさんは、男の子と遊ぶ方が楽しいのかしら?」
「え…」
「ちなみにね、先生は子供の頃は男の子とばかり遊んでいたわ。ナツキさんに負けないくらいお転婆だったのよ」
「え…先生が?」
「ええ」
先生が笑った。
「私は、なんで女なんだろう。男の子に生まれれば良かったのに、なんて本気で考えたりもしたわね。だって、不公平じゃない? 同じことをやっても、女ならお転婆って言われて注意されるのに、男の子なら腕白ねで済むのよ」
確かに…と、ナツキも心当たりがあったのでうなずいた。
「でも、先生のお母さんは、それに対してはあまりとやかく言う人じゃなかったわね。お転婆が過ぎて、怪我して帰った時にはちょっとは注意されたけど。近所の人が陰口を叩いても、それも個性だって言うような教育方針だったのね」
先生の話を聞きながら、ナツキは母の顔を思い浮かべた。
—うちとは全然違うなあ…。
「あ、先生のお母さんはね」
先生が続ける。
「先生の前に、この学校で教師をやっていたのよ」
「え、そうなんですか?」
「そうなの。だから、ナツキさんのお父さんやおじいさんまでは、先生のお母さんに教わってたんじゃないかな?」
「へえ。結構長く先生してたんですね」
「ええ。定年まで先生してたわね。先生もね、そこを目指しているの」
「…楽しいですか?」
「楽しいわよ」
先生は躊躇いなく、はっきりと答えた。
「この学校の子たちはみんないい子だもの。たまには悪ガキもいるけどね。でも、どんな子だって、みんな根っこは一緒。いい子たちだわ。そんないい子たちが、いい子のまま成長して、いい子として社会に出て行く手助けができたらなあって、いつも思ってるの」
「いい子なら、いい子のまま成長するのは当たり前じゃないですか?」
「それは違うわよ。いい子がいい子として大人になるには、ご両親や先生、周りの大人たちの力も大きいのよ。みんな、それぞれにいい素質を持ってるの。それをどうやって生かしていけばいいのか、それを考えるのはとても難しい。けどね、とても楽しくって、とても意味のあることだと思うのよ」
ナツキには、先生の言葉は少し難しかった。けれども、不思議と胸に響いてくる言葉だった。先生が、生徒にしっかりと向き合おうとしてくれていることが伝わってきたのだろう。だからこそ、ナツキは素直に言うのだった。
「先生、次のテストは100点を目指します」
その言葉を聞くと、先生はにっこりと微笑んだ。
教室に戻ったナツキは、意を決した。昼食後のおしゃべりに夢中になっているアケミとレナの席まで歩み寄る。2人がこちらを見た。
「ごめん」
ナツキのはっきりとした声に、教室にいたクラスメイトたちの視線が集まる。ナツキは気にせずに続けた。
「私、アケミちゃんとレナちゃんの気持ち、考えてなかった。ごめんね」
と、頬を赤く染めながら、今持てる限りの精一杯の気持ちを伝えた。そして、どきどきしながら2人の言葉を待つ。
「…アケミちゃん」
レナがアケミの袖を引く。それを受けて、アケミも口を開いた。
「私の方こそ、ごめん…」
すると、レナも恥ずかしそうに言う。
「私も、ごめんね。私たちも、早く仲直りしたかったのよね」
同意を求めると、アケミもうなずいた。
「やっぱり、ナツキちゃんがいないとつまらないんだもの」
「アケミちゃん、レナちゃん…ありがとう」
ようやく悩みがひとつ消えたことにほっとしながら、何気なく教室を見渡す。その場にいたみんながこちらを見ていたが、ナツキは2人のお姉さんに目がいった。お姉さんたちは、両手を上げて頭の上で大きな丸を作っている。ナツキはそれを見て、感謝の気持ちを満面の笑顔に込めたのだった。
放課後となり、ナツキが帰り支度をしている時のことだ。
「ナツキ」
呼ばれて振り向く。そこには、いつも一緒に遊ぶ男の子たちが勢ぞろいしていた。
「…なに?」
緊張しながら尋ねる。
「あのさ」
ナツキに声をかけてきた、リーダー格の男の子が口を開いた。
「…ごめんな」
予想していなかった言葉だけに、ナツキは目を大きく見開いて男の子たちを見る。
「昨日さ、なんかナツキが悲しそうな顔してたから…」
「うん。俺らも言い過ぎたかなって」
「そりゃあ、用事ある日が続く時だってあるよなって思ったんだ」
「うん。テストもあったし」
「勉強しなきゃいけないもんな、普通は」
彼らは口々に言い合った。そして、
「ごめん」
「ごめんな」
「ナツキ、ごめんな」
みんなに謝られ、ナツキは驚きと恥かしさとでうつむいた。それから、ひと呼吸置いて顔を上げる。
「ううん。私の方こそ、ごめん。私、みんなと遊ぶの大好きだよ。楽しいもん。でも、最近は本当に用事があったんだ。…ねえ、良かったらさ、また誘ってよ」
照れながらそう言うと、男の子たちも照れたようにそわそわとして笑った。
「じゃあ、今からは?」
ひとりの男の子が勇気を出して言う。
「あ、今日は…」
ナツキが申し訳なさそうに言い淀むと、意図を汲んだ別の男の子が言った。
「じゃあ、明日は?」
そこで、ナツキは元気いっぱいにうなずいた。
「うん。明日ならいいよ」
「よし、じゃあ明日な」
そう言うと、ナツキも男の子たちも、どこかすっきりとした表情で教室をあとにする。
こうして、またひとつの悩みが解決したのだった。
そして、ナツキは湖畔を訪れた。この日あったことをアキに報告しなければならないと思ったのだ。なぜなら、この2つの悩みが解決できたのは、アキの助言によるところも少なからずあるだろうと思えたからだ。
学校での出来事を話すと、アキは思いのほか喜んでくれた。まるで、自分のことのように…。そんなアキを見ていると、アキと同じ空間で同じ時を過ごすことができたらどんなにいいだろうと、そう考えている自分がいることに気づく。だが、それは叶うはずがない。
—こんなこと、考えちゃ駄目だ…。
俄かに湧き出した思いをどこかに飛ばしてやろうと、ナツキはぶんぶんと大げさなまでに頭を振るのだった。




