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北九州福音伝  作者: 魔帯
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第一章

北九州暴走族の伝説のヘッド。その伝説が今、始まる。

 荒武羅破無(アブラハム)の末裔であり、北九州を統べる大総長堕毘手(ダビデ)の血を引く、伝説の総長吉原町(ナザレ)異英統切全頭(イエスキリスト)

 その誇り高き(チーム)の系譜は次の通りである。

 堕毘手(ダビデ)は初代総長として君臨し、その跡を単悶(ソロモン)が継いだ。代々の(ヘッド)たちは北九州の荒波を生き抜き、やがて罵毘乱(バビロン)捕囚※を迎える。

 ※筑豊・筑後連合との大抗争による一時的な壊滅期

 その苦難の時代を経て、系統は戸畑、若松、八幡へと受け継がれ、ついに予世伏(ヨセフ)という一人の男に至った。

 無荒武羅破から堕毘手まで十四代、堕毘手から罵毘乱捕囚まで十四代、捕囚から切全頭誕生まで十四代。これぞ、北九州の裏街道を揺るがした不滅の血統(ライン)である。

 異英統切全頭の誕生の次第はこうであった。母魔裏亜マリアは、小倉を拠点にする硬派な単車乗り、予世伏と婚約していた。ところが、二人が正式に契りを交わす前、魔裏亜が聖霊によって身ごもっていることが発覚する。

 夫予世伏は筋の通った男であった。

 「ケジメをつけにゃならんが、魔裏亜を世間(チーム)晒し者(おとしまえの対象)にしたくはない」

 そう考え、彼は裏で密かに縁を切ろう(あしぬけさせよう)と心に決めていた。

 予世伏が思い悩んで、皿倉山の展望で一人煙草に火をつけた時のことである。

 天の最高顧問(くみちょう)使い(ヤクザ)が現れて言った。

 「堕毘手の血を引く若頭、予世伏よ。芋る(びびる)必要はいっちょん(まったく)なか。魔裏亜を妻として迎え入れろ。彼女の腹におるのは聖霊によるものやけ。彼女は男の子を生む。その名を義也(よしや)とつけろ。その男こそ、自分の(チーム)を、すべての(やさぐれた過去)から救い出す、不滅の総長となる男や」

 これらはすべて、かつて預言者(伝説のOB)たちが残した格言が成就するためであった。

 「見よ、乙女(しょじょ)が身ごもって男の子を生むであろう。その名は叡魔贄琉エマニエルと呼ばれるであろう」。これは、(ほんしょく)が俺たちのバック(ケツもち)におられる、という意味である。

 予世伏が目を覚ますと、すぐさま愛車のキックペダルを踏みこんだ。天の使い(ヤクザ)の命令通り、魔裏亜を自分の特攻服の後ろ(ケツ)に乗せて家に迎え入れた。

 そして、男の子が生まれるまで、彼は決して魔裏亜に触れなかった。

 男の子が生まれた時、予世伏はその子に、約束された魂の名前を付けた。

 その名は義也。

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