22.
「アランさん、イリーナ。先に――お守りのことについて、詳しく教えてもらえる?」
声は穏やかだが、ア先ほどとは打って変わってアンナの瞳には真剣さが宿っている。
「……そうだな。会議室に戻ろう」
アランは短く答え、三人は会議室を目指した。
会議室に入ると、アランは手慣れた様子で防音の魔道具を起動させた。かすかに空気が震える。これで外には一切声が漏れない。
「さっそくだけど……」
アンナが切り出す。
「私たちが把握しているのは、紙に魔法陣を書いて魔力を込めれば、その紙を持っている人が、たとえ魔力を持っていなくても魔法陣の効果を得られる、ってこと。これで合ってる?」
問いかけに、アランとイリーナは静かにうなずいた。
「なるほど……このお守り、シンプルだけどとてもよくできてる。でも――」
アンナはわずかに眉を寄せた。
「使い方を間違えたら、怖いわね。たとえば、攻撃性の高い魔法陣を使用できるとしたら……。最悪の場合、魔力適性のない平民が、何も知らずに巻き込まれる可能性だってあるわ」
その言葉に、イリーナは小さく身を震わせる。自分の手が作り出したものが、想像もつかないかたちで悪用されるかもしれない――その恐怖が、彼女の心に影を落とす。
「アンナの言っていることは、間違いないよ」
アランが静かに、口を開いた。
「でもこのお守りは、あくまで『護り』のためのものだ。これで誰かを攻撃するつもりなんて、ない。仮にそんなふうに使うと提案があっても――俺は、絶対に協力しない」
その言葉には、信念があった。イリーナの顔に、ほんのわずかに安堵の色が浮かぶ。
「だからこそ、俺は上に報告したんだ。……そのくらいは、わかってて言ってるんだろ?」
アランがアンナを見る。彼女は軽く肩をすくめた。
「ええ、もちろん。プレッシャーをかけるつもりはなかったんですけどね。さすが先輩! 」
彼女の口元には、どこか安心したような笑みが浮かんでいる。
「“影”にとってイリーナは、未知数の存在だからね。私個人も、これを攻撃に使用するのは反対。それが誰の命であったとしても」
アンナの言葉にほっとしたのと同時に、イリーナは胸の奥でモヤッとした何かがを感じた。
先ほどのアンナとアランの会話から、お互いを信頼し、理解しているのが伝わってくる。その様子を見ていると――どうしてだろう、心の中に小さな棘が刺さるような、そんな違和感。
(……これは、どっちにモヤッとしてるんだろう、私)




