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20.

アンナを先頭に、三人は団長室へと向かう。


「アンナです。アランさんとイリーナさんをお連れしました」

「入っていいぞ」

 団長の重々しい声に続き、アランが一歩部屋へ踏み込んだ瞬間、彼の身体が一瞬ピクリと硬直した。

 イリーナは驚き、すぐにアランの視線を追って前を向く。

 そこに立っていたのは、まだ幼さの残る顔立ちの少年――だが、彼のただならぬ気配が、その印象を打ち消している。


「アラン、イリーナ。こちらは我が国の第二王子、グレッグ殿下だ」

 団長が静かに紹介する。名を聞いた瞬間、イリーナは息を飲んだ。

 もうすぐ十五歳の誕生日を迎えるというその若者は、信じられないほどの落ち着きと威厳を身にまとっていた。涼しげな瞳には、歳相応のあどけなさはなく、深く冷静な光が宿っている。

 その瞳が、まっすぐにイリーナたちを見つめている。


「はじめましてだね、アラン、イリーナ。二人の活躍は団長から聞いたよ。よくこの方法を思いついたね」

 その声音は穏やかだった。だが、そこに込められた意図を読み取れず、イリーナは一瞬、思考が止まる。褒められた、のだろうか。それとも、探られている――?

 言葉が出てこないまま、イリーナはとっさに頭を下げる。失礼があってはならない。ただそれだけを思いながら。アランもまた、無言のまま頭を下げた。

 心臓の音がいつも以上に早く、大きく聞こえる。

 

「それから、アンナは“影”の諜報部隊に所属している。これは機密情報だ」

 団長の言葉に、イリーナは思わずアンナを振り返る。

 だがアンナは、まるで秘密が暴かれたことを楽しむように、ひらりと軽やかに手を振った。その無邪気な仕草に、かえって底知れぬものを感じる。

 そんなイリーナの動揺を余所に、団長が続ける。

「あとは……グレッグ殿下の影の護衛として、特例で騎士団に所属している者がいる。名をクリス。今後のお守りの件については、彼に詳しく伝えておくように」

 言葉と同時に視線を送られたのは、部屋の隅に控える一人の騎士。

 若々しい顔立ちだが、立ち姿には隙がない。まるで空気のようにそこにいたはずなのに、いざ目を向けると圧がある。


 グレッグ王子が一歩、前へと歩を進める。

「イリーナとアランを理由もなく頻繁に呼び出すのは難しそうだから、新しくチームをつくることにしたよ。詳しいことは団長から説明があるから。今後もよろしくね」

 王子の発する声は柔らかく、顔も笑顔のはずなのに、何故か圧倒される。

 それだけを言い残し、グレッグは迷いのない足取りで団長室を後にした。


 まさか、こんなかたちで“王子”と対面することになるなんて、思ってもいなかった。

 イリーナは、無意識に拳を握りしめていた手を緩めた。手のひらには、じんわりと汗をかいていた。

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